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Sep 3, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(4)

町奉行所の権限は御府内にかぎっており、治安活動の範囲以外の追跡

逮捕は禁じられ、証拠による司法業務の行使が主な任務であった。

 一方、火付盗賊改方は町奉行所の支配範囲以外でも追跡逮捕が許され、

誤認逮捕でも咎められない特権をもっていた。更に武士の逮捕も認められ

ていた。

 組頭の山部美濃守は若年寄の、堀田政敦(まさあつ)の要請をうけ出動

を命じた。

「よいか、手向かう者は斬って捨てよ、これは若年寄さまの厳命じゃ。

町奉行所では出来ぬことも我等には可能じゃ」

 頭を天野監物とし配下三十数名を率い、坂下御門にある番所から出動

した。天野監物は道々、大風の夜に交わした主水との一件が心を騒がせ

ている。今日のお勤めが終わったら嘉納屋敷を訪れようと思った。

 一行は猪牙船に分乗し、大川を横切り小名木川を東にむかった。

 深川十万坪にむかい新田開発地が目標地点である。この辺りに来ると

板葺き屋根や萱葺き屋根の粗末な家が目立ってきた。

 幕府は御府内は瓦葺き屋根を奨励していたが、この辺りは未開発地で

眼を瞑っていたのだ。これは大風による火災を警戒しての施策であった。

「居りますよ」

 朋輩の若山豊後が相貌を引き締めている。

 粗末な掘立小屋が建ち並び、路上博打が公然と開かれている。

 泣き叫ぶ女を無理やり引きづって行く、無宿人風の男たちの姿もみえる。

「豊後、ここは御府内の外じゃ。今日は荒っぽくやる」

「天野さん、いやに逸っておりますね」

 若山豊後が揶揄ったが、天野監物は鋭い眼で無宿人を睨み据えている。

「豊後、おいらは弱い者を食物とする奴等がでえ嫌いだ。幸い風は西風だ、

掘立小屋に火を放っ」

「そいつは無茶ですよ」

「豊後、ここより東は埋立地と江戸湾のみじゃ。火災の心配はねえ、火付け

と手向かう者の始末はおいらがやる。おめえは東側に十名を率い、火の粉

が飛ばねえか監視してくれろ」

「分かりました」

 一斉に猪牙船が接岸し、どっと火付盗賊改方の猛者が岸辺に躍りあがっ

た。天野監物を先頭とした二十名が、掘立小屋にむかって駈けた。

「いいか片っ端から火をつけな。手向かう者は遠慮はいらねえ、斬りすてな」

 芒の穂を掻き分けながら天野監物が檄を飛ばした。

「百姓はどうします?」

「里に戻るように説得しな。逆らう者は牢獄送りと脅しなよ」

「分かりました」

「火盗改方じゃ、温和しく縛につけ。逆らう者は斬り捨てる」

 天野監物の大声が響き、それを合図に火盗改方が猛然と殺到した。

 ぱっと一棟の小屋から火の手があがった。

「野郎、何をしゃがる」

 一癖も二癖もある顔つきの男等が、匕首や長脇差を手に集まってきた。

「おめえたちは無宿人じゃな、ここで引導を渡してやるぜ」

 天野監物の大刀が無宿人の一人を斬り捨て血煙が噴きあがった。

「火盗改方かなんだか知らねえが、やっちまえな」

 獰猛な面構えの男たちが群がり、百姓等が一目散に逃げ散ってゆく。

「ここは貴様等のようなウジ虫の集まる場所ではねえ」

 血刀を下げた天野監物が啖呵をきった。

 潮時を見計らっていた若山豊後の一団も、喚声をあげて駈けつけてきた。

「いけねえ、新手だぜ」

 無頼の無宿人が浮き足たった。

「逃すな。一人も残さず小伝馬町の牢屋敷に送り込むのじゃ」

 半刻ほどで騒ぎは治まった。

 捕えた無宿人二十三名、斬り捨てた者十一名の戦果をあげ、逃げ遅れた

百姓は一か所に集められた。

「おめえたちに言い渡す、この江戸では職はねえ。この場から里にもどり

な、逆らう者は牢送りにする」

「お役人さま、里にもどっても暮らしが成り立ちませんだ」

 数名の百姓が嘆願した。

「馬鹿者っ、貴様等は昼から博打をうち女房、娘を岡場所に売りとばした

人非人じゃ。戻らぬと申すなら、この場で斬り捨てる」

 天野監物が声を荒げ鋭い眼差しで一座をねめまわしている。


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Last updated  Sep 3, 2011 12:17:28 PM
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