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龍5777

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Sep 7, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(7)

「いや、百姓仕事は嫌になります。あの大根の葉は陰干しで一冬の

味噌汁の具ですよ」

 若山豊後が顔をしかめ愚痴った。

「こぼすな、どこの家も同じじゃ」

「そうですよ。本所、深川では大風で水没とか、幸いこの辺りは風の

被害ですみました。白湯にございます」

 老母のおいねが白湯を置いて大釜のもとに戻っていった。

「豊後、おいらは嘉納主水さまにお会いしてきた」

「大風の晩の事件ですね」

 流石に察しがいい。

「そうじゃ、面倒な事件になりそうじゃ」

 天野が白湯を啜ってことのあらましを語った。

「十干、十二支の干支の組み合わせの刺客が、嘉納さまの命を狙っており

ますのか?」

 若山豊後が思案顔で腕を組んだ。

「今のところはその線が濃い、しかし、おいらには納得がいかねえ。もっと

奥深い事件に思える」

「腕に刺青ですか、まともなら風呂にも行けませんね」

「そうじゃ、奴等には隠れ家がある。六十名もの得体の知れねえ男を

匿っておる者が居るとすれば、並みの者ではねえ」

「厄介な山に手を染められましたね」

「乗りかかった船じゃ、それに嘉納さまなら命をかけても悔いはねえ。

豊後、この話はこれまでだ、誰にもお喋りはなしたぜ」

「分かっておりますよ」

 天野監物は四半刻(三十分)ほど豊後と語らって戻った。

    (二章)

 黒羽二重を着流した浪人が日本橋から、下谷広小路にむかってゆったり

とした歩調で歩んでいる。夜の五つ(午後八時)頃である。

 江戸で聞こえた繁華街の大店までが、灯りを消し店じまいを急いでいる。

 時折、町奉行所の同心が捕吏を率い、巡回する姿が見える。

 この辺りの裏手には高級料亭が軒を並べ、活況を呈している刻限である

が、火の消えたように静かである。

 視線の先に居酒屋の提灯が見えた。柳の枝が風に揺れる風情が侘しく眼

に映る。浪人は店先に佇み周囲を見廻した、店内は静かなようだ。

 暖簾を掻き分け障子戸を開けた。

「いらっしやいまし」

 奥から亭主の声がし、店内の客が怯えたように口を閉ざした。

 浪人は奥の醤油樽に腰を据え、大刀を壁にかけ、おもむろに熱燗を頼ん

だ。その浪人は伊庭求馬であった。

「へい、肴はなんにいたしやす」

「秋刀魚はあるか、あったら焼いてくれ。それに烏賊の塩辛じゃ」

「へい、承知いたしやした」

 求馬は熱燗を二杯ほど飲み干し、店内を見廻した。

 うっそりと片隅で飲む求馬を見つめ、客が眼を伏せ飲んでいる。

 その場の雰囲気を察し、

「それがしのことは気にするな、遠慮のうやるがよい」

 乾いた声で告げ手酌で飲み続けている。

「ご浪人さん、粋だねえ。あたい気にいりましたよ」

 若い女の声がして仇っぽい女が求馬の傍らに寄ってきた。二十五、

六の色っぽい美形で小奇麗な身形をしている。

「あたいのお酌を受けてくださいな、あたいはおけいと言いますのさ」

 むっとする化粧の匂いにつつまれ酌をされた。

「おけいとやら、それがしに構うな」

「ご浪人も男でしょ、女に恥をかかせるなんて最低ですよ」

「酒癖が良くないんで堪忍してやっておくなさい」

 亭主が謝りつつ熱燗を運んできた。

「やい親父、あたいは客だよ。おあしは持っているよ」

「ご浪人が迷惑なさっておられる」

 突然、暖簾の音がし二人の人相の悪い男が姿を現した。

 どう見てもまともな堅気者には見えない。

「大層な啖呵が聴こえたが、この姐さんかえ」

 六尺ちかく大男と敏捷そうな男が、ニヤケた顔で空いた場所に腰を

おろした。

「熱燗をどんどん持ってきてくんな」

 胴間声が店内に響いた。

「やい唐変木、ここはあんたらの来る店ではないよ」

 おけいが恐れ気もなく喰ってかかった。

「何だと、もう一度言ってみな、裸に剥いて酌をさせてやるぜ」

「てやんでえ-、そんな文句が怖くて江戸の町を歩けるかってんだ。

顔を洗って出直しておいでな」

 小気味のいい啖呵である。

「このアマ、許さねえぞ」

 二人の形相が変わり素早く立ち上がった。

「止めぬか馬鹿者」

 求馬の叱責がとんだ。 

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Last updated  Sep 7, 2011 11:44:31 AM
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