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Sep 6, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(6)

「なんじゃ、申せ」

 主水が身を乗り出した。

「五名の死骸の二の腕に刺青(いれずみ)が彫ってございました。その文字

は干支の組み合わせかと存じます」

「なにっ、干支の組み合わせとな。十干(じっかん)、十二支を使っておるか」

「御意に」

 この時代は月の満ち欠けに合わせ月を決め、閏月で太陽との動きのずれ

を調整する太陰太陽暦が使われ、暦年や日にちを数えるのに、十干、十二

支を使っていたのだ。

「どうゆうことじゃ」

 主水が腕組みをした。

「五名の死骸には甲午(きのえうま)、甲子(きのえね)、庚申(かのえさる)、

癸末(みずのひつじ)、癸酉(みずのとり)の文字が彫られておりました」

「根岸、干支の組み合わせは六十じゃな」

「左様、十干と十二支の組み合わせにございます」

「わしを襲った曲者は十五名ほどとみた。他にも四十五名もおるというか」

 主水が憮然とした顔で呟いた。

「御前が五名を倒しましたので残る刺客は、五十五名かと」

 天野監物の言葉に主水が再び考え込んだ。自分を襲う曲者の正体が

分からないでいる。それも五十名をこえる人数とは考えられないのだ。

「十二支とは、子(ね)、丑(うし)などの十二文字にございます」

 根岸一馬が指を折って答えた。

「十干とは甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)などの十文字にございます」

 すかさず天野監物が返した。

「分からぬ。甲でも甲子(きのえね)、甲戌(きのいぬ)、甲申(きのえさる)、

甲午(きのえうま)、甲辰(きのえたつ)、甲寅(きのえとら)の六文字がある。

これらが曲者の名としたら。甲午、甲子はわしが退治したが、まだ四名残っ

ておる訳じゃな」

「いかがいたしましょうや」

「天野、まるで判じ物じゃな。この件は他言無用じゃ」

「心得てございます。この事件には何者かの意図が感じられます。再び

襲ってくる気配がいたします」

「暫く様子をみよう、襲いくれば斃すまでじゃ」

 主水の体躯から気迫が湧きだした。

「御前、拙者はこれにてご無礼いたします。なにかございましたら、何時で

も駈けつけます」

「うむ、・・何かと面倒をかけるが頼むぞ」

 天野監物は根岸一馬に見送られ屋敷を辞した。日中にもかかわらず、

得体の知れない者に見張られているような感じをうけ、背筋に悪寒に似た

感覚を覚え帰路についた。

 彼は千代田のお城の外濠の四谷御門渡った。右手に尾張藩上屋敷を

臨み、先手組組屋敷のある四谷左門町へとむかった。

 火付盗賊改方は先手組に属し、屋敷は四谷左門町にあった。

 この四谷には大木戸があり、それを抜けるとそこからは甲州道中となり、

四宿で知られた内藤新宿へと至る。


 天野家の敷地は百五十坪、屋敷は三十坪で空き地には自家用の

季節の野菜を栽培していた。それでも生活は苦しく妻は内職の傘張り

に精をだしていた。彼は自宅の前を通り過ぎた。

 この当時の門構えは武家の象徴であったが、天野家は二本の丸木を

建て門構えとしていた。

 この一事から判断しても御家人の窮乏が知れることであった。

 天野監物は我が家から二丁(二百二十メ-トル)ほど離れた若山豊後の

屋敷を訪れた。ここも天野家と似たりよったりである。

「御免」

 表から声を懸け裏庭に廻った。豊後が畑で大根を抜いていた。これも

内職のひとつである、十月というに額に汗を浮かべている。

「あら、天野さま。いかが成されました?」

 豊後の老母のおいねが大根の葉を大釜で湯がきながら訊ねた。

「少し、豊後に用がありましてな」

「豊後、天野さまですよ」

 おいねが息子に声をかけ奥の勝手口に消えた。

「あがらせてもらうぜ」

 天野監物が縁側に腰をおろした、稽古着姿の豊後が首に手拭を巻いた

姿で傍らに座った。

「どうかなさいましたか?」

「忙しいところを済まぬな」


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Last updated  Sep 6, 2011 11:40:38 AM
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