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長編時代小説コーナ

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Sep 8, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(8)

「なんだと、痩せ浪人のくせに舐めた口をききやがって」

 大男が懐中から匕首を引き抜き、いきなり突きかかってきた。

 修羅場を潜り抜けた身ごなしである。求馬が壁の大刀を手にし柄頭で

大男の鳩尾(みぞおち)を突きあげた。

「げっ」  異様な声を洩らし大男が土間に転がった。

「やりやがったな」

 残りの男も匕首を腰だめとして瞬発もいれずに躰ごと突きかかってきた。

 躱しもせず求馬の愛用の村正が鞘から奔った

「痛えっ」

 悲鳴があがり右手首を両断された男がうずくまった。

「両人とも店から去れ、文句があれば今度は首を刎ねる」

 求馬の声に二人が蒼白となって店内から転がり出ていった。

「強いのね、ご浪人は」

「おけいとやら、静かにせぬか」

 醒めた双眸に睨まれ、おけいが顔色を変えた。

 求馬は直に徳利から一本飲み干した。

「亭主、代金はここに置く、それがしは伊庭求馬と言う。不審な点があった

ら、火付盗賊改方の天野監物殿に申しでよ」

 そう一言のこし暖簾をくぐり抜け店内から立ち去った。

「強いご浪人だぜ」

「親父、気色が悪いよ。早く手首を始末しておくれな」

 おけいが顔色をなくしている。


 求馬は孤影を地面におとし、小伝馬町から馬喰町へと歩を進めている。

別に用もなかったが、お蘭が小唄の会合で家を留守にしており、暇を持て

余しての行動であった。

 旅籠町で知られたこの町も人影が少ない、旅籠の窓から行灯の灯りが洩

れ、仄かな明かりを道端に落としている。

 足が自然と求馬の意志を無視し浅草橋御門から、神田川の南岸へとむか

い、筋違橋門から武家屋敷へと進んでいた。

 松平伊賀守の屋敷を横に見て駿河台への道を進んでいた。

 隠密として鍛えた求馬の視線に、三名の武士の姿が見えた。既に、

大名屋敷も旗本屋敷も門限をとうに過ぎている。

 この刻限に胡乱(うろん)な武士だ。そうした思いがよぎっている。

 足音を忍ばせ追跡をはじめた、彼の長年の隠密としての勘がそう仕向け

たのかもしれない。男達の風体には異常は見られないが、なにかが引っか

かっている。

 一つ橋小川町の四つ角を抜け裏神保小路を西に向かっている。

 辺りは武家屋敷で物音ひとつせずに、闇が重く覆っている。

 三人が小川町広小路を右折した。求馬が素早く跡を追い、角に止まり

気配を断って様子を窺った。

 殺気に似た気配がかすかに感じられる。

 求馬は懐手でゆっくりと辻を曲がった。

「我等にご用かな」

 三名の武士が佇み、中央の武士が質問を発した。

「それがしの前を、お手前がたが歩かれるまでのこと」

 乾いた声で求馬が答えた瞬間、左右の男が見事な跳躍をみせ、両側の

土塀に身を移した。それと同時に中央の武士が素晴らしい足さばきをみせ、

求馬の痩身に肉薄してきた。既に抜刀を終えている。

 一閃、二閃と左右から唸りをあげた大刀が、求馬を両断せんと襲ってき

た。その腕前は人並みを外れた見事な太刀さばきであった。

 求馬は相手の躰に躰を密着させ、腕を払いのけ刃圏の外に逃れでた。

「お主、出来るのう」

 位置が変わり、相手が大刀を水平に移し低く感嘆の声を洩らした。

 土塀上の男が求馬の退路を断つべく跳躍し後方に着地した。

 気配で抜刀を感じとり、村正の柄に手を添えた。

「この刻限に無礼を働くその方等は何者か?」

 声をかけると同時に、すらりと村正を抜き放ち正眼に構えた。刃渡り

二尺四寸(七十三センチ)が、鈍い光沢を放ち、徐々に左下段の構えに移行

している。ひたっと村正が動きを止めた、求馬自慢の逆飛燕流の構えに

入ったのだ。前面の相手がすり足で接近をはじめた。

 身のすくむような殺気が炎となって求馬の痩身を包み込んだ。

 無言の気合を発し、水平の大刀が宙で弧を描き求馬の右肩を袈裟に

襲ってきた。村正が下段から跳ねあがり、相手の大刀をすりあげ、切っ先

が相手の咽喉もとに襲いかかった。

 相手は防ぎながら二。三歩後退した。求馬の頭上からの攻撃を予知した

変化であった。

 求馬は身を翻し攻撃を背後の敵に変化させた。村正が左手の曲者の胴を

薙ぎ、返す刀で肩を袈裟に斬り裂いた。

 肉を絶つ手応えを感じ、右手の獲物に向かって求馬の痩身が踊りあがっ

た。相手は予期し大刀を頭上に水平とし、両手で峰を支えたが求馬は全身

の体重をかけ稀代の名刀、村正を振り下ろした。


影の刺客(1)へ





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Last updated  Sep 8, 2011 12:16:47 PM
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