1178445 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

^-^◆ 心の散歩路……… New! 和活喜さん

勿忘草が咲く丘で 9 New! 千菊丸2151さん

ソフトバンク・阪神… New! クラッチハニーさん

睡眠と健康! New! 韓国の達人!さん

こぼれ種から発芽し… New! Pearunさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Sep 14, 2011
XML
カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 

     「影の刺客」(12)

「承知いたしました。この件は大目付さまにもお知らせします」

「拙者の一存で許す。また伊庭殿への相談もお主に任せるぜ」

「畏まりました」

     (二章)

 この事件は瞬く間に江戸の町に広がった。一番に読売が事件を報じた。

読売とは世間の出来事を面白おかしく紹介した読み物で、売り子はその

内容を興味をあおるよう、辻々で読み上げながら記事を売り歩いていた。

 そうした意味で読売は当時の情報源であり、町人たちの娯楽のひとつで

あった。

 江戸っ子は事件に興味を示したが、秋の深まりを迎え行楽の話で

もちきりとなっていた。この時代は紅葉見物が町人等の一番の興味のもと

で、大半が九尺二間の狭い長屋に住む江戸っ子にとり、そうした盛場見物

は一種の憂さ晴らしの場所でもあった。

 飛鳥山から板橋宿の途中にある、無量寺への六阿弥陀参り、真性寺へ

の地蔵参り、さらに西にのぼり滝野川の王子稲荷の紅葉見物。東海道、

品川宿の近くの海晏寺の紅葉も有名であった。

 その見物帰りに女郎を買おうとする、不届き者も多かった。なんせ板橋宿

は中山道への入り口の宿場町、品川宿は東海道の最初の宿場宿で江戸の

四宿として女遊びの名所でもあった。

 人々は九月の大風の被害を忘れ、最後の行楽を楽しんでいたのだ。


 千代田のお城の老中御用部屋である。上座に首座の松平定信が着座し、

松平信明、松平乗完(のりまさ)、戸田氏教(うじのり)、本多忠壽(ただとし)等

四名の老中が松平定信を見つめている。

 これら四人は松平定信によって老中に推挙された面々である。

 松平定信は第八代将軍吉宗の曾孫にあたり、御三卿の田安家の出身で

奥州白河藩十一万石の当主である。十一代将軍の家斉(いえなり)に推挙

され、それまで辣腕をふるっていた老中田沼意次を廃し、幕閣から田沼系

の閣僚、大奥からも田沼系の奥女中を排除し今日の地位を築いたのだ。

「信明殿、先般の襲撃者の探索は進んでおりますかな」

「火付盗賊改方が捜査しておりますが、はかばかしい進展はございませぬ」

「あの晩には書院番組頭の内藤右京が暗殺されましたな、それも風聞では

ご貴殿を狙った曲者の仕業と取沙汰されております」

 定信の言葉に松平信明が顔を曇らせた。

「何者ですかな、同時にご貴殿と内藤右京を襲う曲者は」

 戸田氏教が苛立ちのこもった声をあげ信明を見つめた。

 定信が氏教を制するように新たな事実を述べた。

「事件の起こった晩に小川町広小路で、曲者と思われる不審な三人と闘っ

た男が居りましてな」

「なんと、そのような事件が起っておりましたか?」

「左様、その男は二人を倒し、頭領と思われる曲者を逃した由にござる」

 老中首座の松平定信が驚くべきことを平然と口にした。

「して曲者と闘った男とは何者にございます?」

「戸田殿、それがしの見知りおきの者、元公儀隠密の伊庭求馬と申す」

「首座殿は、その伊庭とやらを養いおりますのか?」

「いや、伊庭は今は一介の浪人として気ままに暮らしております」

「何故に首座殿がそれを知っておられます?」

「戸田殿、風聞とだけ申しておきましょう」

 定信が柔和に答え、御用部屋に冷たい空気が漂い五名が火鉢に手を

かざした。

「この泰平の世に、老中を襲うとはもっての沙汰、何としても真実を探ら

ねばなりません。方々の意見をお聞かせ願いたい」

「田沼系の残党の謀とは考えられませぬか」

「それもひとつ、早急にかたをつけませんと面倒になります」

「火付盗賊改長官の山部美濃守はなんと申しておりました」

 松平乗完が膝を乗りだしている。

「彼は若年寄支配にござる。故に口出しは禁じてござる」

 松平定信が毅然とした口調で言い切った。

 彼は幕府の組織と職務分担を明確にしておきたかった。悪戯に口を

挟むと組織の機能が麻痺し硬直が起こる、それを恐れていたのだ。

 根底には田沼政治からの脱却、そうした意味が含まれていたのだ。

「そうは申しても捨て置きがたい事件にござる。堀田正敦殿は首座の

信頼の厚い人物、堀田殿を通じて火付盗賊改方に喝を入れてはいかが

にございます」

 戸田氏教が声を荒げている。

「喝で全てが治まるならば事は簡単、だが曲者の魂胆も正体も分かりまぬ。

方々には身辺のご用心をお願い申す」

「それでは評定になりませぬ」

 戸田氏教がまたもや噛みついた。


影の刺客(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Sep 14, 2011 12:07:28 PM
コメント(38) | コメントを書く
[伊庭求馬活殺剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.