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Sep 15, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(13)

「戸田氏教殿、それがしは大目付の嘉納主水にこの事件の解決を

頼むつもりにござる。方々のご意見はいかがにござる」

 柔和な定信の眼光が炯々と輝いている。

「首座殿と嘉納主水は格別の間柄、我等は賛成にござる」

 戸田氏教の言葉に一同が賛意を示したが、松平信明のみが不満顔

をしている。

「信明殿は不満にござるか?」

「もともと拙者から起こった事件にございます。嘉納主水の件は賛同

いたしますが、拙者の意地もございます。独自の捜査をお許し願います」

「信明殿の言も良し、ご貴殿は独自に探索なされ。だが嘉納主水には動

いてもらいますぞ、ご異存はござらぬな」

「異存はございませぬ」

「ならば近々、嘉納主水にはそれがしから話をいたす」

 こうした経緯で事件の解明は嘉納主水に一任された。

「さらば本日の評定はこれにて終わりにいたす」

 松平信明以外の老中は御用部屋から辞していった。

「信明殿、ご貴殿は何かまだ合点の参らぬことがござるか?」

「屋敷に戻り家老と相談のうえ、探索方を任命する所存にございます」

「ご貴殿も承知の筈、曲者は凄腕と聴いております。その探索方の安全

を一番に考えて下されよ」

「首座のご心中、この信明、無にはいたしませぬ」

 こうして松平信明は下城し、家老の望月隼人を呼び出し幕閣の方針を

告げた。家老の望月は主人の話で事態の深刻さを悟った。

「大目付の嘉納さまが事件解決に乗りだしますか」

「首座の決定じゃ、屋敷の警護を盤石にいたせ。そのうえに至急国許に

使者を遣わし、探索方を江戸に呼び寄せるのじゃ」

「既に国許に腕のたつ藩士を、呼び寄せるべく手配は終わっております」

 望月隼人の言葉に信明が満足の笑みをみせた。

「探索に適した藩士は居るか?」

「天道流の遣い手、目付の檜垣大善が適任かと思います」

「江戸の地理に明るい男か?」

「はい、かっては江戸中屋敷に勤めておりました」

「首座が申しておられた、伊庭求馬なる浪人の消息を探りだせ」

 主人の命令に望月隼人が不審そうな顔をした。

「その者は首座の密偵と思われる、男の動きを探れば曲者に近づけよう」

「承知にございます。曲者の正体を探るには手っ取り早い方法ですな」

「そうじゃ、何としても首座の鼻をあかさねばの」


「猪口(ちよこ)、猪口と逢う夜をひとつにまとめ、徳利話がしてみてえ」

 粋な文句を口走り神田明神下の棟割長屋から、いなせな恰好の町人が

姿を現した。

「猪のさん、相変わらずご機嫌だね」

 長屋の隠居が声をかけた。

「あたぼうよ、一日中、この臭い小便長屋にくすぶっちゃあ息がつまらあ。

景気付に一杯やってくるぜ」

「昼酒とは贅沢だね」

「馬鹿を言うなって、憂さ晴らしだよ」

 三尺ほどの路地の真ん中に腐ったドブ板が敷かれている。

 そこを器用に避けながら神田の裏町へとむかった。

「逢うたその日の心になって、逢わぬその日も暮らしてえ。てな女はいねえ

もんかえ」

 紺絣に白い股引姿で軽快に歩んでいる。

「小腹が減ったな」

 独り言をつぶやき常連の長月屋の暖簾を掻き分けた。

「いらっしゃい」

 景気の良い懸け声に迎えられ店の片隅に腰をおろした。ここは飯屋で

あるが、酒などもだす気軽な店であった。亭主と女房のちえと娘のおまつの

三人で慎ましく商いをしていた。

「猪のさん、なんになさいます」

「おまつちゃん、暫く見ねえうちに娘らしくなったね」

 軽口をたたき酒を注文した。

「親父、鰯の煮付けはあるかえ」

「流石は猪のさんだ、今朝あがった活きのいい鰯があるよ」

「そうかえ、それにねぎま鍋を頼まあ」

「猪のさん、なんやら物騒な世の中になったね」

「老中屋敷が襲われたり、書院番が殺されたり世も末だぜ」

 猪の吉は亭主の会話に応じながら独酌している。

「たまにはお酌でもしないとね」

 女房のちえが傍らに腰をおろし酒を注いでくれた。

「女将さん、おめえさんも女盛りだね。顔の色艶がいいや」

「猪のさんだけだよ、誉めてくれるのは」

 照れ笑いを浮かべ、満更でもない素振りをしている。

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Last updated  Sep 15, 2011 11:31:53 AM
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