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Sep 17, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(15)

「しかし、なんで武家屋敷なんぞ行かれましたんで」

「上野広小路で一杯やっての、足のむくままに出向いたのじゃ。

曲者は三人、頭分と覚しき男は取り逃がした」

「旦那が逃すとは、余程の遣い手ですな」

 猪の吉の顔が険しくなったが、求馬は平然と煙管を銜えている。

「わしは明朝、嘉納殿を訪れる積りじゃ。あとは頼む」

 求馬の鋭い視線をうけ、猪の吉が不敵な顔で答えた。

「任せておくんなせえ、勤番侍の正体はあっしが突き止めやす」

「そうと決まれば飲もう」

「もう、充分に頂きやした、そろそろご無礼をいたしやす」

 猪の吉は表に出て辺りに眼を光らせた、大泥棒の頭であった彼は

暗闇でも眼が利く。刻限は五つ半(午後九時)をとうにまわっている。

 お蘭師匠の家を見張る者が居ないかと確かめ、猪の吉は裾をからげて

神田明神下に向かってゆったりと歩みだした。 

「木々の梢に、未練の色を、思いのこして秋はゆく」

 自慢の咽喉で都都逸をうなり、上野広小路をぬけ神田方面に姿を

消した。

 その夜の深更につぎなる事件が発生した。大番頭の岡部大学守が

得体の知れない一団に襲われ暗殺されたのだ。

 役高五千石、菊の間詰で従五位諸大夫。旗本では留守居役につぐ要職

である。かっては将軍直轄軍の構成員で、大番頭は大番組頭四名、大番士

五十名、与力十騎、同心二十名を率いる大身の旗本である。

 その岡部大学守が暗殺され、あげくに首級が浅草御門に晒されるという、

前代未聞の大事件であった。

 巡視中の火付盗賊改方が、晒された血塗れの首を発見したのだ。

 刻限は丑の刻であった。

 暗殺の報せが坂下御門の番屋に届いたのが、深夜の九つ半(午前一時)

であった。岡部家の家来谷垣平六郎と名乗る男からの知らせててあった。

 岡部家は牛込御門に近い土手四番町にあった。

 襲った曲者はいずれも黒覆面、黒装束姿で十名くらいとのことである。

「岡部大学さまの首級(みしるし)が奪われたと申されるか?」

 泊まり番の天野監物が驚いて糺した。

「叫び声で我等が駈けつけた時には、既に首級は持ち去られておりました」 

「して曲者はいかが成されました?」

「全てが手練者、御前と三名が命を失い曲者は逃してしまいました」

 谷垣平六郎が悲痛な声で訴えた。

「曲者は十名くらいと申されたが真にござるか?」

「用人殿のお言葉にござる」

「ご貴殿は曲者の全てを見てはおられぬのか?」

 天野監物が気の毒そうに、血まみれの谷垣平六郎に訊ねた。

「防ぐに手一杯のありさまにござった」

「既に我等の一隊がお屋敷に着いて探索を始めておりましょう。谷垣殿、

我等も押し出します、ご案内を願います」

 天野監物は一隊を率い、谷垣の案内で土手四番町の岡部家に駈けつ

けた。門前には火付盗賊改方の御用提灯が吊るされ、玄関から若山豊後

が姿を現した。

「豊後、探索で何かでたか?」

「屋敷内を捜しましたが、岡部大学守さまの首が見当たりません」

「新手の火盗改方か?」

 声とともに四十年配の肥えた男が現れた、どことなく落ち着きのない

態度をしている。

「ご用人にございますか?・・・拙者は火付盗賊改方の天野監物と申す」

「用人の岡部三右衛門じゃ。主人の首が見当たらぬのじゃ」

「我等の手勢も合流し、屋敷内を捜しております」

 松明の明かりと提灯が屋敷の各所にみえる。

「岡部大学守さまとは縁戚にございますな」

「そうじゃ」

「被害に遭われた死体を改めたいと存じます」

「屋敷の一室に四名の遺体を安置いたしておる」

「なんと四名ですか、我等への報告では三名と聴いております」

「まずは見られよ」

 岡部三右衛門が一室の襖を開けた。部屋には血潮にまみれた遺体が

横たわり、枕元に線香が焚かれていた。

「女人がおられますな」

 遺体のなかに裾を乱し、白い太腿を顕にした女の姿があった。

「側女の菖蒲じゃ、同衾中に襲われたと思われる。このことは内密にお

願いいたしたい」

 用人の卑屈な態度に吐き気がしたのか、若山豊後がぷいと横をむいた。

「いろいろござろうが、我等は死体を改めるだけにござる」

 天野監物が死体に歩み寄り、斬り口を改めている。

「豊後、やはり奴らに違いねえ」

 若山豊後も提灯を近づけ傷痕を改めた。

「間違いありませんね」

 若山豊後が納得顔で屋敷の外に出て、ぶるっと身震いした。この刻限の

冷気が身に染みたのだ。


影の刺客(1)へ明日はお休みします。





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Last updated  Sep 17, 2011 12:01:25 PM
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