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Sep 21, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(18)

「御免下されませ」

 腰元が現れ二人の前に膳部を置いて下がっていった。

「本日は我が領地の河蟹が手に入りましてな」

 主水が嬉しそうに破顔している。二人の膳部には蟹とメジの刺身に

小鉢物が彩りよく盛られている。

「手酌にてまいろう」

 二人は常に手酌であった、主水が蟹の甲羅をはがし顔を崩した。

「味噌がたっぷりとありますな」

「頂戴いたす」

 求馬が熱燗に手を伸ばし話をつづけた。

「最初は嘉納殿が襲われ、それがしが手にかけた晩には老中松平信明

さまと書院番組頭の内藤右京殿が襲われましたな」

「左様、昨夜は大番頭の岡部大学守殿が、曲者の手で暗殺されました」

 嘉納主水は肉太い顔に怒りを浮かべている。

「ご貴殿を含め幕府の重鎮四人が襲われた事実をどうみられます」

 求馬が酒を飲み下し主水の考えを糺した。

「正直、何も分かってはおりません。ただ面白いことが判明いたした」

 その言葉に求馬が杯を置いて主水をみつめた。

「拙者と貴殿が斃した曲者には共通の刺青がござった」

「刺青?」

 求馬が不審そうに呟いた。

「いずれの男の二の腕にも、干支の刺青が彫られておりました」

「干支の刺青とは?」

「十干、十二支の組み合わせにござる」

「ほう、その二つを組み合わせると六十の数になりますな」

 すかさず求馬が応じた。

「伊庭殿が斃された曲者には己卯、己亥の刺青でござった。拙者の方は

甲牛、甲子、庚申、癸末、癸酉の刺青をしておりました」

「それは六十名の曲者の集団という意味ですかな、まだ五十三名がどこぞ

に潜み、次なる獲物を狙っておることになりますな」

 求馬が乾いた相貌をみせ思案している。

「幕閣も拙者もこの度の事件が、何を狙ったものか計りかねております」

「江戸の町を混乱させる目的か、それとも深い仔細があるのか、不可思議

な事件にござるな」

 求馬がぐびっと杯を干した。

「伊庭殿、拙者はこの事件の解決を一任され申した」

「松平定信さまのご命令ですな」

「左様、ご貴殿には今まで数々の尽力をお願いして参りましたが、こたびの

事件にもお力添えをお願いしたいものです」

 大目付の嘉納主水が深々と頭を下げた。その態度で幕閣が容易ならざる

事件と注目していることが推測できた。

「嘉納殿、お顔をあげて下され。それがしがお屋敷を訪れたのはその件に

ござる。微力ながらもお手伝いつかまつる所存にござる」

「嬉しきお言葉かな、拙者にとっては千人力に思われますぞ」

 主水の厳つい顔がくしゃくしゃに崩れている。

 今の求馬の一言で緊迫した部屋の空気が一変した。

 求馬が甲羅酒をはじめ、主水も真似て咽喉を鳴らしている。

「これが一番じゃ、して伊庭殿どこから手を付けられる?」

「まるで雲を掴むような事件です。今のところ策はありませんな」

「伊庭殿のことじゃ。また夜の屋敷町を徘徊なされるか?」

「この度の事件は西の丸を中心とした屋敷町に限っております。

そこらが事件の鍵かと思っております」

「成程、拙者が襲われのも西の丸からの下城途中でござった」

 主水が当時を思い浮かべ、突然に巨眼を輝かせた。

「どうか成されたか?」

 見逃さず求馬が訊ねた。

「曲者の狙いは拙者と老中殿ではないかと思ったまでにござる」

 その言葉に求馬が反応した。

「大番頭の岡部殿と書院番組頭の内藤殿は囮(おとり)と言われますか」

 一瞬、求馬の双眸が強まった。曲者の攪乱戦術ならば捜査を変えねば

ならない。

「伊庭殿、今の言葉は拙者の推量にござる」

「嘉納殿、これは探るだけの価値がござる。さて、そろそろ退散いたすが、

今のお言葉をそれがしも考えてみましょう」

「まだ早い、もう少し飲みませんか」

 主水が未練をみせ止めた。

「嘉納殿、ご貴殿の配下は何名にござる」

「まだ決まってはおりません」

「火付盗賊改方はどうなります?」

「首座のお考えは、そのまま若年寄支配といたすお考えじゃ」

「それは勿体ない、町奉行所は管轄外です」

 廊下より足音が響き、根岸一馬が姿を現した。


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Last updated  Sep 21, 2011 11:44:19 AM
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