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Sep 24, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(21)

「うるせえ、落とし前をつけてもらおうじゃねえか」

 名前のとおり、長い馬面をした梅吉が脅した。

「道を開けてもらおうか」

 武士の渋い声が猪の吉のもとまで聞こえてきた。

「こん畜生め、舐めんじゃねえよ」

 怒り声とともに懐中にのんでいた匕首を抜き放ち、梅吉が突きかかった。

 見物の町人が顔色を変え、猪の吉が思わず眼を剥いた。

 躱しもせず武士の腰から大刀が鞘奔り、切っ先が天をむいた。

「わっ-」

 馬面の梅吉が路上に転がり苦悶の声をあげている、肩口から両断され

た右腕が、匕首を握って転がっている。

「拙者は機嫌が悪い、文句のある者はおるか?」

 大刀を素振り血糊を払った武士が、吉蔵一家の面々を睨みすえている。

 一家の悪が顔色をなくしている中から、代貸しの稲荷の久六が、

「若い者が粗相いたしやした、今日のところはこれで許しておくんなせえ」

と、恐る恐る紙包みを差し出した。

「馬鹿者っ」

 凄まじい一喝が町並みを震わせ大刀が、陽光を跳ね返し煌めいた。

「チャリン」

 紙包みの中の一両小判が、見事に半分に斬られ地面に落ちた。

「退かぬか」

 武士は大刀を素早く納め、人ごみに紛れ姿を消し去った。

 流石の猪の吉も呆然となった、凄まじい腕前の武士である。

「いけねえ」

 猪の吉が跡を追おうと振り向いたが、武士の姿は消えていた。

 おいらの追跡を知っていたな、そう思ったが後の祭りであった。

 猪の吉ともあろう男が簡単にまかれてしまったのだ。

「何事か」

 町角から半羽織で着流しの町奉行同心が、十手を手に駈けつけてきた。

 南町奉行所で辣腕として知られた、駒井十兵衛である。

「勤番侍に遣られ、この有様でございやす」

「吉蔵、おめえら調子にのるんでねえぞ」

「済んません」

 代貸しの久六が半分に両断された小判を、袖口に素早く滑りこませた。

 それを見逃さず猪の吉が苦笑いを浮かべた。

「世の中、銭次第とはいうものの、町奉行所の同心までが賄賂かね」

 独り言を呟き、猪の吉は小便長屋に戻ろうと思った。

 それにしても大層な腕前の武士である。大抵は抜刀し威嚇するものだが、

なんの躊躇いもみせず斬り捨てるとは驚きであった。

 勤番侍と侮った自分の愚かさを悔いていた。

     (四章)

 老中首座の松平定信は嘉納主水の報告を受け、若年寄の堀田正敦に

命じ、徒組(かちぐみ)を応援として派遣することにした。

 彼等は歩行組とも走り衆とも言われ、御目見を許されない御家人で、

一代抱えの下級武士であった。萩生徂徠(おぎゅうそらい)の政談によれば、

徒組の株が町人や豪農等に高額に売買される実態を嘆く一文があった。

 これは金さえあれば一代抱えの御家人株を買って、簡単に町人が幕臣に

成れることを物語る一事であった。

 火付盗賊改方に徒組頭一名と徒十四名が、増員のために配属されてき

た。一方、町奉行所にも通達がもたらされ、銭湯で干支の刺青を彫った者

を見つけ、届け出た者に賞金が与えられるというものであった。

 こうした施策は曲者が見つからない場合は、誰かが意図的に匿っている

と判断する。これが目的であった。

 江戸はある面で銭湯文化とも言われるほど、江戸っ子は朝な夕な銭湯を

好んだ。ここで商いの情報を交換し、巷の出来事を喋りあっていた。

 いわば憩いの場所であり社交場でもあった。

 ここに眼をつけた奉行所は与力、同心は女風呂で朝一番風呂に浸かり

ながら、男風呂の会話に聞き耳を立てていたのだ。

「女風呂の刀掛」は、これから出た言葉であった。

 火付盗賊改方は両国橋から、外濠の市ケ谷御門まで警備を強化した。

 天野監物と若山豊後は両国橋近辺に隠れ忍んでいた。

「天野さん、今晩が勝負ですね」

「豊後、ここに奴等が現れたら益々、事件は面倒になるぜ」

 一同は鎖帷子に鉢巻きを締め、籠手、脛当の完全防備の身形をしてい

た。捕吏は袖搦、突棒、指股を手に橋の闇に身を潜めていた。

「冷えますね」

 季節は十一月を迎え、筑波おろしが容赦なく襲ってくる。

「畜生め、見て下さいよ。あの町人はこれから吉原に繰り出すつもりです」

 若山豊後が前方の闇に包まれた船宿を指さした。

 猪牙船に客と覚しき町人が乗り込み、舳先の灯りが大川に向かった。

「豊後、よそ見をするな、我等の部署が今夜の要(かなめ)じゃ」

 監物の言う通り、両国橋から浅草橋門は大川の出入り口にあたるのだ。

 もし、ここに曲者が現れたら万事窮する。曲者は大川を利用し犯行を重ね

ていることになる。

 そうなれば探索範囲が広がり、火付盗賊改方では手におえなくなる。


影の刺客(1)へ明日はお休みします。





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Last updated  Sep 24, 2011 11:38:00 AM
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