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Sep 26, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(22)

「とうとう初音の鐘が終わりましたね」

「そうじゃな、旗本屋敷の門限は終わったな」

 夜の五つ(午後八時)には、初音の鐘の合図で旗本屋敷の大扉が

閉じられるのだ。

「豊後、町木戸が閉められる四つ(十時)が勝負じゃ。見張りを厳重

にさせて、皆に一休みさせなよ」

 天野監物の命で豊後が各所に駈けつけ休息を命じた。

 既に闇がどっぷりと周囲を覆っている。

「船には注意を怠るな」

 天野監物が念をいれ注意を与えた。

 若山豊後が戻り、傍らでごそごそと懐中から何かを出している。

「豊後、静かにしねえか」

「干し芋です、食べませんか」

「おめえ、そんな物まで持ってきたのかえ」

 天野監物が呆れ顔で芋に手を伸ばした。

 二人は干した薩摩芋を口にし、闇夜に目配をりしている。

「まだ有るかえ」

「ありますよ」

 豊後が紙包みを手渡した。この頃は蒸した薩摩芋を乾燥させた干し芋が、

茶菓子がわりに重宝されていた。

「現れませんね」

「豊後、ひとっ走りしてはくれめえか」

「何処に行きます」

「筋違橋門じゃ。あそこは応援の徒組の連中が守っておる」

「そうですね、初めてのお勤めで心細い思いをしていましようね」

 若山豊後が肯き、敏捷に足音を忍ばせ闇に溶け込んでいった。


 その頃、千代田のお城の南にあたる永田町の一角で、三人の男が

静かな闘いをはじめようとしていた。

「矢張り思ったとおりに現れよったか」

 乾いた声は伊庭求馬の声であった。暗闇に黒羽二重の着流し姿が闇に

溶け込んでいる。

「貴様は何者じゃ」

 闇の翳に隠れた二人が抜刀し、忍び声で糺した。いずれも黒覆面に

黒装束の忍び姿をしている。

「過日、小川町広小路で貴様等の仲間を斬り捨てた者じゃ」

「貴様が、その時の男か?」

しんし、気をつけよ、奇妙な剣を遣うと小頭が申されていた」

 土塀に囲まれた三間ほどの小道で求馬は二人の曲者と対峙している。

 未だに抜き合わせてはいない。

「あの時、逃れた男は貴様等の小頭であったか?」

 そう言葉をかけると同時に求馬が一歩、前進した。

 音もなく二人の曲者も見事に距離を測って後退した。

「しんしと申したな、辛巳(かのとみ)とも言うの」

 求馬が挑発した。

「貴様は公儀の狗か?」

「馬鹿め、幕府に隠密なんぞは居らぬ。しいて申せば貴様等を斬り捨て

る刺客とで申しておこう」

 路上に殺気が盛り上がってきた。

 辛巳と名乗る曲者が大刀を右上段に構えた、俗にいう拝み打ちと言われ

る構えである。よぼど腕に自信がないとできない構えである。

 求馬が静かに村正を抜き放ち左下段に構えた。得意の逆飛燕流の秘剣

の構えに入ったのだ。

 既に己の左肩を襲う相手の攻撃を見抜いていた、襲いくれば左下段から

摺りあげ、返す刀で相手の右首を薙ぎ斬るつもりであった。

 残りの一人が身軽く右手の土塀に飛び乗った。求馬の攻撃を牽制する

ためである。じりっと相対する二人が間合いをつめだした。

 黒覆面から覗く眼が不気味な光を宿している。

 求馬の村正二尺四寸(七十三センチ)が緩やかに弧をえがきだし、青白い

地金が闇に輝いた。

 勝負の潮時が訪れ、無言の懸け声とともに猛烈な一颯が求馬の左肩に

襲いかかった。それは躰ごとの踏み込みをともなっていた。

 同時に土塀の男も跳躍し、上段から必殺の拝み打ちをみまってきた。

 求馬の痩身が二本の刃をすれすれに躱し土塀に張り付いた。

 唸りをあげて襲いくる敵の刃が求馬の躰を掠めた。それは神業にちかい

捨て身の防御であった。

 その為に辛巳が勢いあまり態勢を崩した。そこに土塀から攻撃を仕掛け

た曲者の大刀が辛巳を袈裟斬りとしたのだ。まさに同士討ちであった。

 不気味な骨肉を絶つ音とともに血潮が噴きあがった。

「しまった」

 動揺をみせず残りの曲者が態勢を整え、振り向いた瞬間に村正が闇夜を

裂いて奔りぬけ、相手の胸元に峰を返した刃が凄まじい打撃を与えた。

 肋骨の折れる音とともに曲者が悶絶し路上に転がった。

 求馬が倒れた曲者に近づき黒覆面をはぎ取った。

 荒んだ髭面の顔が朧に浮かんだ。求馬ははぎ取った覆面を口に押し込

み、袖を引き裂き猿ぐつわをかませた、自害をさせぬ配慮である。

 そうしておいて男の二の腕をまくり上げた。筋骨隆々とした腕には辛丑

(かのとうし)の刺青が彫られていた。

しんちゅうか、甲、己、辛(かのと)が新手に加わったか」

 不敵な白面の相貌に笑みが浮かんだ。求馬は男の刀の下緒を解き、

手足を厳重に縛りあげ求馬が周囲を見廻した。

視線の先に今にも崩れそうな祠が見え、彼は辛丑の躰を担ぎそこに転が

した。

「ここなら見つかるまい」

 独語し腰の村正が空気を裂いた、転がった辛丑から苦痛の声が洩れた。

 彼の両脛を村正の峰が砕いたのだ。

 非情な振る舞いであるが、求馬は顔色も変えずにいる。

 そうしておいて痩身を西に向けた、行き先は半蔵門である。



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Last updated  Sep 26, 2011 11:53:11 AM
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