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Oct 1, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(27)

 一方、山部美濃守の組屋敷では、火付盗賊方の猛者が厳重に身形を

整え、茂助等の帰りを待ちながら闘志を燃やしていた。

 ようやく曲者の隠れ家を発見したのだ。

 茂助等が戻り、間違いなく曲者が隠れ潜んでいると報告してきた。

 一行は用意した猪牙船に分乗し、坂下門から繰り出した。

 九十九間の長さを誇る両国橋を潜り竪川に乗り入れた。

 先頭の猪牙船には天野監物と茂助が乗り込み、本所相生町の北詰から、

六間堀へと船を乗り入れた。一方、お頭の河野権一郎は迂回して弥勒寺

近辺に接岸し、両側から包囲する態勢で古寺を囲んだ。

「茂助、間違いはなかろうな」

「先刻、調べたばかりてぜすぜ、寺には女をいれ十名ほど隠れ潜んでおる

はずにございやす」

 茂助が自信たっぷりに答え、天野監物が采配を振った。

 それを合図に火付盗賊改方が忍び足で古寺に踏み込み、一行は唖然と

して寺内を見渡した。寺は誰一人居ない無人となっていたのだ。

「茂助、本当に奴等はここに隠れていたんだな」

「見て下さいよ、この庫裏の痕を」

 茂助の言う通り庫裏には大徳利が散乱し、人の居た気配が残っている。

「旦那、隣の部屋では女を抱いていた男が居た筈です」

 それを耳にした若山豊後が襖を蹴破り部屋に飛び込んだ。

 そこには布団が一流れ敷かれ、敷き布団が皺(しわ)を見せている。

 豊後が布団に手を当てた、

「まだ暖かい、畜生め見て下さいよ」

 豊後が布団の一か所を指差した、そこには男女の情事の証の男が放った

液体の痕が濡れて見えた。

確かに茂助の言う通り、ここで女を抱いていた証拠である。

 組頭の山部美濃守が顔面を朱に染め、怒りを抑えている。

「この真昼間じゃ、そう遠くには逃れられめえ。竪川周辺と六間堀に

小名木川周囲をあたってくんな」

 天野監物の命令で茂助と弥七が配下を連れて散っていった。

「矢張り、ただの鼠ではねえな」

 天野監物と若山豊後が寺を一周し呟いた。数名の男が潜んでいた痕が

残されていた。

「組頭、茂助等がここに忍んできたことを感ず付かれたのです」

「伊庭殿の好意を無にしたの」

 山部美濃守と河野権一郎が、憤りを抑え無念の思いを語りあっている。

「面目ありません、これからは松平定信さまの警護を万全にいたします」

「河野、そちらは任せるぞ。わしは若年寄さまにお会いしてくる」

「分かりました」

 山部美濃守の視線が天野監物と若山豊後にそそがれた。

「天野は大目付の嘉納主水殿に、この一件をお知らせしてくれ」

「畏まりました」

「豊後は伊庭殿に報告じゃ」

 山部美濃守がてきぱきと指図を終え、猪牙船で戻っていった。

「豊後、このような曲者は初めてじゃ。常に裏をかかれる」

「わたしも同感です。こんなにも早く動く奴等は初の経験ですよ」

「おいらはこの足で嘉納さまを訪れる。おめえは伊庭さまに今回の

詳細をお知らせしてくんな」

「分かりましたが、猪のさんに合わせる顔がありませんよ」

 若山豊後が悄然としている。

「めそめそするんじゃねえよ、こうなったらお知恵を拝借するしかあるめえ」

 天野監物が怒りを鎮めて古寺から去った。

 豊後は引き上げを命じ、猪牙船で大川にむかった。今日も空は秋空で

澄み渡っている。一つ目の橋を潜ると回向院の周囲は人ごみで沸き立って

いる。今年最後の身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)の出開帳で秘仏を

拝もうと集まった人々である。

 昼間は見世物が並び、茶店が賑わうほど人々でごったがえしていた。

 若山豊後は猪牙船を器用に操り大川に漕ぎだした。澄んだ川面に小波

のような縮緬じわが浮き出ている、風が出てきた証拠である。

 今も高瀬舟や荷船が師走をひかえ忙しく上下している。

 豊後は船を新大橋の西に向け、永久橋、箱崎橋へと漕ぎ進み、日本橋

へ向かうために右折した。ここから日本橋になる。

 目指す船着場に猪牙船を舫い、敏捷に土手に駈けあがった。

 季節がら日本橋は旅人が群れをなしていた。

 豊後の目の前を天秤棒を担いだ振売りが駈け去ってゆく。朝、一稼ぎ

した振売りが再び日本橋の魚河岸から、新鮮な鰯や蛸や蛤を仕入れて

棟割長屋に商いに行く姿であった。

 桶には豆腐、蒟蒻が一杯に盛られ、ご丁寧に白菜、椎茸、葱までもが

入っていた。さしずめ寄せ鍋の材料を売り歩くようだ。

 豊後がいつもの角を曲がり眼を細めた。


影の刺客(1)へ明日はお休みします。







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Last updated  Oct 1, 2011 11:37:46 AM
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