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Oct 17, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(39)

「お見事にございます」

 若山豊後が興奮の叫び声をあげた。

 血糊を拭った懐紙が舞い上がり、四谷左門町の夜空に散った。

「猪の吉、死体を改めてくれ」

「合点で」

 猪の吉が火を点し死体を改めている。

「伊庭殿、また助けて頂きましたな。感謝を申しますぞ」

 山部美濃守が丁重に挨拶をした。

「何も申されますな、それがしの勤めにござる」

 求馬が乾いた声でさえぎった。

「旦那、この男は六間堀で相手をした男です。刺青は庚午で、もう一人は

癸亥の刺青が彫ってありゃす。暗殺が成功したら身を隠すつもりのように

思われますな」

「・・・」  求馬が猪の吉に視線を移した。

「切餅一個を持っておりやす。内藤新宿でも逃げ込む魂胆のようですな」

 猪の吉が切餅を求馬に放った。

 天野監物が傍らに寄り声をかけた。

「なんでこの曲者が組頭殿を襲うと思われました?」

「天野さん、これら曲者の仲間は江戸のどこかに隠れております。奴等が

ご貴殿等に一泡吹かせる積りで山部美濃守さまを襲うと推測いたしたまで

にござる。それ故に猪の吉と平河天神で見張っておりました」

「左様にございましたか、奴等は何処に隠れておりましょうか?」

 天野監物が求馬の勘の良さに感心して訊ねた。

「それがしの関与すべき問題ではござらん」

「それは」

 天野監物が声をつまらせた、言われてみればその通りである。

 このお勤めは火付盗賊改方が行わねばならぬことであった。

「探索の輪を広めなされ。奴等はご貴殿等の動きをよんで動いてござる」

 求馬が天野に乾いた声でつげ、猪の吉に顎をしゃくって去っていった。

「天野の旦那、あっしも失礼いたしやす」

 猪の吉が挨拶の声を残し、求馬の跡を追って闇に消えた。

      (七章)

 品川宿は日本橋を起点とし東海道の一番目の旅籠町として大いに栄えて

いた。目黒川を挟んで南品川宿と北品川宿とに分かれていた。

 旅籠の数は一千六百軒といわれ、江戸の吉原か品川宿かと比較される

一大遊興の地として知られていた。海辺よりには貸し座敷が軒を並べ、

造りが土塀造りのために土塀相模と呼ばれていた。

 その一角にある岡崎屋に十一名の男達が宿泊した。

 彼等は十五畳ほどの座敷を貸切とした、座敷から見る江戸湾は青黒い

海にに白波が荒れ狂い、寒々とした光景を見せつけている。

 目前には品川灯台が浮かび、遥か先には佃島が霞んで見えた。

 彼等は冷酒を数杯のみ、直ぐに眠りについた。

 朝の五つ半(九時)に威勢のよい読売の声で目覚めた。

「大変だよ、お江戸はたいそうな騒ぎだよ。町奉行所にならんで治安を

守る、火付盗賊改方長官の山部美濃守さまが昨夜襲われなすったよ」

 一同が起き上がって耳をすました。

「さあ買ってくんねえ、詳しく書いてあるよ。なんせ長官の山部さまの

お屋敷が襲われなすった、さあ買ってくんな」

 売り子の興奮する声が聞こえてくる。

「曲者は二人だそうだ」

「それでどうした」

 客の声もする。

「曲者は首を刎ねられ即死だそうだ、さあ買ってくんな」

「お頭、庚午め失敗したようですな」

 配下が一斉に甲戌の顔を見つめた。

「火付盗賊改方なんぞに敗れる庚午ではない、さしずめ伊庭求馬が現れ

たに違いあるまい」

「どういたします?」

「一晩泊まって様子をみる。癸巳(みずのとみ)、火盗改方を捜って参れ」

「畏まりました」

「三十名おった者が十一名となった。我等は明日、再び神明門前町に

戻る。頭領のご指示を仰がねばならぬ」

 甲戌が鋭い眼差しで一座に申し渡した。

「お叱りがきつうございますな」

「仕方があるまい。己未(つちのひつじ)、貴様が知らせに走ってくれ」

 指示を与えた甲戌の背筋に、不意に戦慄ば這いのぼるのを感じた。

「皆、今宵は憂さ晴らしに女を抱き大いに飲むぞ」

 甲戌はすでに平静にもどっていた。


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Last updated  Oct 17, 2011 12:23:27 PM
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