1177992 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

アーモンドチョコレ… New! 千菊丸2151さん

寿司とうなぎ! New! 韓国の達人!さん

フリマとかPayPayの… New! Pearunさん

^-^◆ あか・あお・… New! 和活喜さん

リュウちゃんの日記… flamenco22さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Nov 14, 2011
XML
カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 

     「影の刺客」(60)

 翌日の夜、神田駿河台に向かう二人の男がいた。一人は着流しの

浪人といま一人は町人である。

 相変わらず冷たい風が吹いており、高い空は蒼々をした色がひろがり、

雲ひとつないが、鎌月か煌々と輝いていた。

 浪人は伊庭求馬で彼は懐手でゆったりと歩を進め、いま一人の町人は

飛礫の猪の吉であった。

 二人は大目付の嘉納主水の屋敷に吸い込まれるように消えた。

 何時もの書院には主人の主水と用人の根岸一馬、その前には火付盗賊

改方の天野監物と若山豊後も同席していた。

「伊庭殿、寒い夜にお誘いいたし申し訳ござらぬ。猪の吉もご苦労じゃ」

「へい、あっしは伊庭の旦那のお供で参りやした」

 猪の吉が遠慮し部屋の隅に腰を据えた。

 主水が昨日の老中会議の様子を手短に語り終えた。

「嘉納殿、お言葉をかえすようですが、一橋治済さまはシロにござる」

「何を根拠にそうきめ付けられる?」

 主水が髭跡をみせ不審そうに訊ねた。

 求馬は先日、一橋家に押し入ったことを語った。

「驚きいったことを成されたものじゃ」

 主水をはじめ天野監物、若山豊後が驚愕の顔をした。

「それがしの見立ては、一橋さまの専横を憎む者の仕業と心得ますな」

 求馬が高い鼻梁をみせ断言したが、主水が反論した。

「だが、それがしには伊庭殿の考えに賛同できかねますな。なぜ曲者は

一橋治済さまを狙わず、二度にわたり首座殿のお命を狙いお屋敷に

押し入ったのでござる」

 一座の疑問は主水と同じであった。

「そこが奴等の付け目かと思いますな、あたかも首座殿のお命を狙う。

そう見せかけておるだけにござるよ」

「既に奴等は半数の手練者を斃されております。そこまで策を弄する必要が

ござるか?」

 主水が求馬に疑問を投げつけた。

「嘉納殿、既にご老中はじめご貴殿も火付盗賊改方、両町奉行所までが、

奴等の狙いは首座殿と決めつけておられる。それがしの長年の経験では、

獣は最後の隙を狙って襲いかかるもの。その為に首座暗殺が奴等の狙いと

思わせたら可笑しくはござらん」

「うむ」

 主水が腕組みをし唸った、思いもせぬ求馬の返答に困惑したのだ。

「その証拠に首座殿の屋敷を襲いながら、一歩も屋敷内に踏み込まぬのは

何故にござる」

「そう言われますと昨夜は奴等は総力をあげての襲撃でしたが、お屋敷に

踏み込む気配はいっさい見せませんでした」

 天野監物が若山豊後の顔を見つめ、昨夜の件を報告した。

 その言葉に一座に重苦しい沈黙が支配した。

「曲者は何を企てておるのじゃ」

 主水が吠えるように野太い声を洩らした。

「それが分かれば事件の謎は解けます。まず事件を分けて考えてみましょう。

まず先に曲者の残党を見つけ出すことです」

「そうですな、天野、火付盗賊改方として奴等を捜しだせるか?」

 天野監物と若山豊後が自信なげに顔を見つめ合っている。

「嘉納の旦那、あっしの考えを申しても宜しゆうございやすか?」

 それまで沈黙していた猪の吉が膝を乗りだした。

「猪の吉、そちに考えがあるか。遠慮は無用じゃ」

「へい、あっしの勘でございやすが、奴等は朱引地には居らぬと思いやす」

「なにっ」

「大きなお勤めをしようと思いやすと一旦、身を隠し相手の出方を窺うものに

ございやす」

 猪の吉の言う、朱引地とは江戸城を中心とした狭い範囲を言う。それより

広い四里以内を御府内と言っていたのだ。

「猪の吉、そちにしては珍しいことを申すな」

 主水が不審そうに声をかけた。

「嘉納殿、秘密の話にござるが、猪の吉は元大泥棒の頭であった男にごさる。

その猪の吉が言うからには間違いはござるまい」

 求馬が瞑目しつつ猪の吉の秘密を乾いた声で述べた。

「旦那、ひどいことを言われやすな」

 猪の吉が情けなそうな顔つきをしている。

「猪のさん、今の話は本当かえ」

 天野監物が驚きを隠さず訊ねた。

「伊庭の旦那に言われては隠すこともありやせん。まぎれもなくあっしは

泥棒の端くれでした」

「驚いた、猪のさんが泥棒だったとは」

 若山豊後までが驚いている。

「旦那、なんとか言って下さいよ」

「もう、十数年前のことにござる。詮索はここまでにして頂く」

 求馬が助け舟をだした。

「猪の吉の詮議はよい、そちならどうする?」

 主水の髭面に興味が湧いている。


影の刺客(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 14, 2011 11:20:56 AM
コメント(36) | コメントを書く
[伊庭求馬活殺剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.