|
カテゴリ:ショートショート
氷の魔女エリーカの伝えた我が子レイナの予言通り、それから間もなく空は黒い雲に覆われ幾日も晴れる事はなく、たまに晴れたとしても長くは続かず次第に国が、世界がどんよりとした世界に変わって行った。
キャット・ザ・キングは城の展望台から城下を見下ろしていた。 「父上お呼びですか?」 キャット・ザ・キングが振り返ると一番下のひとり娘ビーンズが静かに立っていた。キャット・ザ・キングは振り返り、彼女に告げた。 「ビーンズ来てくれたか。実は今から私は旅に出ようと思う。そして是非お前に一緒に来てもらいたいと思っている。お前の人並外れた魔術の能力を貸してはくれぬか?」 ビーンズも常々この世に降りかかった災いをどうにか治められないものか心を悩ませていた。 「父上、是非私をお供させて下さい。このままこの国が腐り果て、人々の身の上に災難が降りかかることを見過ごす訳には参りません。しかし、父上が旅立たれた後この国はどうなさいます?」 「今三人の息子は各地に散らばり、各々その地の災いを食い止めるのに精いっぱいだ。だからこの国全体を守る役目は弟のハッピーに任せたいと思う。あいつなら安心して任せる事が出来る。」 キャット・ザ・キングの言葉を聞き、ビーンズも大きく頷いた。 「では早速出発致しますか?私の準備は既に出来ております。」 娘の言葉にキャット・ザ・キングは一瞬驚きの表情を見せたが、「お前はもう察していてくれたのだな。」と言いニコリと笑った。 「おいアオお前どこに行くつもりだ?ポイポイ。」 アオと呼ばれたキジトラ猫の頭に停まったインコがやかましく騒ぎたてた。 「どこ行くったって、俺もう腹ペコでどうしていいやらわからねえ。」 アオはもう1週間何も食べておらず、途方に暮れていた。二人はケチな泥棒稼業でどうにかその日を食いつなぐ生活をしていたが、最近は空いっぱいを覆い尽くした分厚い黒い雲のせいで、作物は腐り果て盗む物さえなくなる有様だった。 インコの名前はポイポイ。鳥であるポイポイはまだ木の上や、草むらの陰を探せばまだどうにか食料は見つかったからアオほど深刻ではなかった。 「腹減ったぁ!何か食いてぇ~!」 アオはやけっぱちに叫んだ。 「シッ!隠れろ。向こうから誰か来る。ポイポイ。」 ポイポイが叫んだ。アオもようやく気づき慌てて道の脇の藪の中に飛び込んで通りを伺った。やがて二人のキジトラ猫がアオ達の前を歩き過ぎて言った。 「父上、まずは東の法王を訪ねるのですね?」 「ああそうだ。所でビーンズ、この旅では私たちの身分は隠しておこうと思う。だからお前も人前で私を呼ぶときは単に父さんと呼ぶようにしてもらいたい。」 「わかりました父上・・・・、いえ父さん。」 「資金の方はハッピーに頼んで行く先々に送ってもらうから心配はいらないが、辛く長い旅になると思うが頼んだぞ。」 二人のキジトラ猫はそんな会話をしながら東に向かって歩き去って行った。二人が立ち去った後藪から抜け出して来たアオ達は顔を見合わせた。 「おいアオ、聞いたか?ポイポイ。」 「ああ聞いた。あの娘ビーンズって言うんだ。可愛かったなぁ。」 「バカ野郎。そんな事じゃない。娘がビーンズ、そしてハッピーとくればあの男はキャット・ザ・キングに違いない。」 「キャット・ザ・キングと言えばこの国の王様だろ?それぐらいは知ってるぞ。なんで王様がこんな所にいるんだ?」 「知るもんか。ポイポイ。」 ポイポイはけたたましく叫んで続けた。 「だけどそんな事はどうでもいい。あいつらが話していた事だ。」 「何話してたっけ?俺あの娘に見とれちまって何にも覚えちゃいない。」 「だからお前はダメなんだ。キャット・ザ・キングは言っていた。金はあいつらの行く先々にちゃんと用意されているってな。ポイポイ。」 「それで?」 「それでだと?お前はつくずく間抜けなんだよ。俺たちはなぁ、あいつらの先回りをしてその金を頂くのよ。ポイポイ。」 「どうやって?」 「自分じゃ気が付かないかも知れないがアオよ。お前とキャット・ザ・キングは瓜二つだ。」 そう言うとポイポイはニタリと笑った。 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「旅立ち」で31,630件だった。 いい湯旅立ち?
Mr.Children
キムタクではなく松本零士原作
今度はいい歳旅立ちと来た。
千春に髪がある!
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ショートショート] カテゴリの最新記事
|