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ギャロン伯爵は一度一線を退き、息子のギャロン・ジュニアに地位や権限を譲っていた言わば退役軍人だった。彼がまだ現役の軍人だった頃、トイランダー国は今よりもっと貧しく、民の生活は苦しかった。しかし、最近ようやくこの国もわずかながら繁栄の道へと進んでいるように思えた。
それがなぜだかは彼もよくわかっていなかった。 長い軍人生活を送り、引退後は世俗からはなれ一人で住み、がらりと変わったのんびりとした生活を送っていたのだ。三週間前に突如ジョールズ三世から呼び出され、この度のキャット・ザ・キングの訪問を機に息子のギャロン・ジュニアとともに王に同行するように命じられるまでは。 「ジュニア。ワシはよく分からんのだが、陛下はなぜまたワシの様な老いぼれをこの様な所に引っ張りだされたのであろう?そなたは何か知っておるのでは?」 ギャロン伯爵は我が子で、トイランダー国軍を統率するギャロン・ジュニア将軍に聞いた。 「父上。それは私にもよく分からないのですが、おそらく私が軍を進めるうえで父上のご助力がきっと必要になる時が来ると陛下がお思いになられたやも知れぬと思っております。」 ギャロン・ジュニアも小首を傾げながら答えた。 「ワシの助けがのう.....」 ギャロン伯爵は皆目分からない自分の身の上ながらも、この世が見舞われている災難とこれを取り払おうとするキャット・ザ・キング王の崇高な志には打たれるものを感じ、己に残された最後の力を捧げようという気持ちに偽りはなかった。 やがてミーグル、トイランダー合同軍は目指す火山地帯へと到着し、活動拠点となる火山地帯北側に広がる台地に野営する事になった。また同時に沢山の偵察隊が各方向に差し向けられたのだった。 二日後・・・・ 「申し上げまーす。申し上げまーす。」 野営地から西に向かった偵察隊から戻った一人の伝令がギャロン・ジュニア将軍のもとへ声高に叫びながらやって来た。彼は将軍の前に跪くと直ぐに報告を始めた。 「将軍に申し上げます。この先半日先ばかり行ったある火山の頂上より巨大な生物の物と思われる触手の様な物が火口より無数に這い出し、火山を覆い尽くし、動き回っているとの事であります。その辺りの住民もかつてこの様な物を見た者はおらず、無数の群衆が集まって来ている様子であります。」 キャット・ザ・キングと次男のウィートは目を合わせた。 商人夫婦のブビとホノが言っていた、火山の頂上を覆う黄色い靄の中に何か蠢く巨大な触手を見たというあの話しに関係がありそうだと思ったのだ。 「父上、これはまず調べてみる価値がありそうですね?」 ウィートは言った。 そこで手始めにその山を調べてみる事になり、ブラックとレオンが先発隊としてギャロン・ジュニア配下の隊長とその部隊を引き連れ向う事になった。 「ねえブラック、ただの火山じゃないか?どこにそんな物がいるんだ?」 先発隊としてやって来たレオンは山を覆いつくし蠢いているはずの触手があるどころか、群衆いや蜥蜴一匹いない、他の山と何ら変わらない光景に拍子抜けしながらブラックに尋ねた。 ブラックも腕組みをして頂上を見上げ憮然としていた。 背後から忍び寄るギャロン・ジュニアの兵たちに二人とも気付かなかった。 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「蠢く触手」で4件だった。 やはりあるもんだ。 最初は彼の有名な江戸川乱歩の小説。
これは18禁ものなので軽くスルー。
作者はないがタイトルに「蠢く触手」はある。江戸川乱歩とかぶっているかもしれないが.....
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