福島県内の鉄道の輸送密度 その1
8月31日の日記でJR東日本の各線区における輸送密度(平均通過人員)を紹介しました。旧国鉄時代ならば廃止対象にされていたであろう路線がかなりあって個人的には非常に驚いた次第。やっぱり心配なのは、地元・福島県の鉄道路線の今後。今回と次回の2回に分けて、県内を走るJR東日本の在来線各線区の輸送密度を見ながら、今置かれている状況を確認したいと思います。なお、各線区の輸送密度は、現在不通区間を抱えている常磐線と只見線が2010年度、それ以外の路線が2012年度のデータです。【東北本線】◎輸送密度黒磯駅~新白河駅間 輸送密度2,451人/日新白河駅~福島駅間 輸送密度8,724人/日福島駅~白石駅間 輸送密度6,057人/日◎コメントまず驚いたのは、黒磯駅~新白河駅間の輸送密度の少なさです。東北本線内では小牛田駅~一ノ関駅間(2,475人/日)と並んで、輸送密度がもっとも低い駅間となっています。県境を跨ぐ区間は通勤、通学の需要が少ないため輸送密度が少なくなるのが一般的ではありますが、栃木県と福島県との県境付近は交流はそれなりにあるはずですが、クルマ利用が主流で鉄道は脇に置かれている感があります。白河市付近の利用者からは黒磯駅以南へ直通する列車を運行して欲しいという要望を時折耳にしますが、来年烏山線で用済みとなるディーゼルカーをこの区間にあてがって宇都宮駅~白河駅・郡山駅間の直通列車を運行すれば、多少は輸送密後も上がるかも(笑)反面、福島駅~白石駅間は、黒磯駅~新白河駅間に比べて輸送密度が倍以上の高さ。私もこの数字を上げるのに貢献していますが(笑)実際に乗っている印象からすると、福島県内から仙台方面へと通う学生(大学生、専門学校生、予備校生)の姿が目立ちます。高速バスとの競合が激しい区間ですが、バスよりも定時性が高いメリットを有することもあり、思った以上に健闘しているようです。その中間の新白河駅~福島駅間は、さすがに高い輸送密度を誇ります。同じ東北本線だと、一ノ関駅~盛岡駅間(8,825人/日)とほぼ同じレベル。ただし、区間を更に区切ると、主要都市の都市近郊に位置し列車の運行本数が多い矢吹駅~郡山駅間や松川駅~福島駅間あたりはもっと高い輸送密度を記録しているものと推察されます。【奥羽本線】◎輸送密度福島駅~米沢駅間 9,818人/日◎コメント板谷峠を控え、途中駅はすべて無人駅というこの区間。でも輸送密度的には東北本線の各区間を上回っています。やはり、山形新幹線の存在が大きいようです。普通列車だけの区間だったら、1,000人/日もあったかどうか微妙な印象があります。沿線人口が多い福島駅~庭坂駅間の普通列車を、もう少し増やして欲しいですね。県運転免許センターが所在する庭坂界隈には路線バスも結構走っているし、需要は掘り起こせると思います。【常磐線】◎輸送密度勝田駅~いわき駅間 18,846人/日いわき駅~原ノ町駅間 3,592人/日原ノ町駅~岩沼駅間 5,714人/日◎コメント勝田駅~いわき駅間は、福島県域にかかる区間では最も多い輸送密度となりました。ただし、この要因は水戸市~日立市間の通勤、通学需要や特急スーパーひたちの存在によるところが大きいので、いわき市内での輸送密度はこの半分にも届いていないだろうなというのが、個人的な印象です。いわき駅以北は、県中部を走るいわき駅~原ノ町駅でボトムとなり、原ノ町駅以北の宮城県境で上昇しています。双葉郡を境として「いわき市=茨城県の一部」「相馬地方=宮城県の一部」のごとき様相を呈しています。今もって不通区間が多く残る沿線一帯ですが、旅客のみならず貨物にとっても重要な役割を有する幹線なだけに、一日も早い復旧を望んでやみません。【水郡線】◎輸送密度常陸大子駅~磐城塙駅間 262人/日磐城塙駅~安積永盛駅間 1,090人/日◎コメント上記の3路線と比べて極端に少なく、しかも旧国鉄の廃止対象路線と同レベル(2,000人/日未満)の輸送密度。将来的な廃止議論は避けられないと思います。水戸市と郡山市とを結ぶ交通インフラは常磐自動車道⇒磐越自動車道のルートが整備されているから長距離輸送の需要は皆無と言っていいし(それ以前に水戸市にとって郡山市が、郡山市にとって水戸市が「行きたい!」という魅力を伴う都市なのか?という問題がありますが…)、通勤、通学需要にしても沿線人口が少ない上に並行して走る路線バスとの競合があるため、あまり期待できない状況。上京する際のメインルートにもなり得ない(石川町や棚倉町からだとバスで新白河駅まで出て東北新幹線を利用するのがメインルートとなります)し、ハッキリ言って、沿線地域の交通体系上必ずしも必要な存在ではありません。なお、茨城県内の常陸大宮駅~常陸大子駅間も1,143人/日とあまり芳しくない輸送密度を記録していますが、この区間については、沿線の西金駅で道床砂利の採取が行われていることや水郡線全線を管轄する車両基地が常陸大子駅に置かれている事情に鑑みると、当分の間廃止は免れるものと推測しています。【定価より20%OFF】★DVD/鉄道/鐡路の響煙 水郡線 SL奥久慈清流ライン号/PSSD-217