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カテゴリ:BLマンガ
新たに寝室に設置する本棚のために場所を開けていたら、クロゼットの隅から出てきたダンボールに入っていた一冊。引越しの際に間違ってクロゼットに入れたまま、放置されていたものらしい。 近藤ようこ。なつかしい名前。 小説しか読まなかった母が好きだった、数少ない漫画家さんの一人。 昔読んだ時は、独特の文学的なセンスは好きだったけれど、所帯じみていて合わなかった。 今読み返すと、所帯じみている部分は自分もそういう年齢になったので気にならなくなったけど、代わりに女の情の部分が生々しすぎて、やっぱり苦手。 シンプルな線で背景以外にトーンもほとんど使わない、典型的なガロ系作家だけど、日本独特の私小説のテイストを、そのまま画像に置き換えたような作品群は、静かな短編ドラマのようでもある。 不倫、倦怠期、もてない男女のさえない恋愛、底辺をうごめく女たち……湿った日本の風土の陰湿な人間関係や女のどろどろした部分がてんこ盛りで、ある意味、男と男のファンタジーであるBLとは対極にある作風だ。 2色ページの作品、長年蒸発していた夫が死亡したと報告を受けて、遺体を引き取りに行く女が、骨壷を抱えて車に乗るシーン。焼けた骨が熱を放っていて熱い。その部分に聖痕が残っていないかと確認するのが、ある意味ホラー。 なんだか山岸涼子も一時期、こういう情念ものを多く描いていたけど、彼女はそれを神話素にからめて独特の説話ものにしていたけど、近藤ようこは途中でぷっつり終わって、「あとは読み手の想像におまかせ」的なエンディングが多い。日常の一場面なんだから、それでいいわけなんだけど、一見サラッと描かれているようなプロットが、実は練りに練って、時間をかけて描かれているであろうことも、今の自分にはわかる。 この本、自分で買った本じゃないと思う。誰かに借りたのか、もらったのか。初めて読む作品と、記憶のある作品が混在しているけど、初出の雑誌を読んだことはないから、別の単行本に収録されたものを読んだことがあったのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.04.18 00:48:27
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