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2007.07.06
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カテゴリ:評論・エッセイ
  

河出書房が出している『文藝』別冊シリーズの「森茉莉」を読んでいる。
思えば、お耽美志向~ジュネ~BLへの進化(退化?)のきっかけは森茉莉だった。
もうこれだけでトシが知れるというものだ(笑)。小学校高学年か中学のころ。母の読んでいた本(無類の本好きの母親は、新刊はもとより、複数の小説月刊誌、週刊誌の連載までくまなく読んでいた)の中にあった『甘い蜜の部屋』。今改めてみると、ポルノ小説のようなタイトルだな。

おそらく現在の腐女子の萠芽ともいえる耽美好き女子は、もれなく森茉莉の育った環境やその後の生活に憧れた。
晩年暮らした、紙ゴミにまみれて床の見えない部屋で、なんと一番下は畳と一体化して古新聞が土に還っていたという伝説をもつ、下北沢のアパートの一室。他人にとってはゴミ同然でも、彼女にとっては宝物だった、ガラクタの数々。そんなものにすら憧れた。彼女が食べるもの、得意な料理を真似しようとした。

サブカルが特殊なものじゃなくなって、どんな奇矯なシュミでも認知される現代では、別に「ああ、いるよね、こんな人」で終わってしまうけど、「森鴎外に一番愛された娘」という破格の肩書きを持つ彼女の最晩年が、他人が見たら悲惨な貧困生活なのに、それを楽しんでいるところがすごい。
少女マンガと雑多な流行小説と文学全集と乱歩とホームズで育った自分に、ロマンチックなタイトルと、ルイス・キャロルのアリスの世界と澁澤龍彦をミックスしたような小説は夢のような毒だった。

後年、『赤毛のアン』を通過するかどうかで、女子の脳味噌の成長は大きく方向を異にすることを知って、アンを読まず、早々と森茉莉を通過してしまった自分は、まっとうな良妻賢母になどはなれないだろう(なりたくない、だな)と、中学の頃に悟った覚えがある。

家には森鴎外全集はあったけど、森茉莉全集はまだ刊行されていなかったと思うし、母の本棚に『父の帽子』と『甘い密の部屋』はあったけど、森茉莉に関しては、その後、自分で全集まで揃えた最初の作家だ。

なんだ、西洋を舞台にした少女マンガの世界がとっくの昔に文学にあったんだという驚きと、不思議な文体。眩暈のするような耽美の世界。
でも母によると、昭和初期の女流文学には、もっととんでもないものがめっちゃあって、彼女が学生時代を過ごしたミッション系女学校の寄宿舎では、戦中戦後にレズ小説を回し読みしていたらしい。おそるべし戦中の女学生!それで記憶に残っているのが野溝七生子の『女獣心理』。最近復刊されたものを読んだけど、レズではなかったし、まあ、ちょっと少女マンガチックだわね。でもこれが80年前に書かれた小説と思うとやっぱり驚愕。

そのうち腐海にはまって、すっかり忘れていた頃に、森まゆみさんの『欧外の坂』を読んで、鴎外とその妻が傑作な夫婦だと知って、国語で習った「文豪」とのギャップに笑った。後妻の志げは、明治時代にしてはっきりもの言う女性で、鴎外は恐妻家だったんだよね。そのうちに再び森茉莉を思い出した。

私は、天然のインテリの金持ちが大好きだから、茉莉の夫だった山田珠樹とその父親にも憧れたバカだ。パリ時代を綴ったエッセイは、森茉莉がいかに世間知らずのお人形だったかに腹が立って、山田珠樹に同情したものだったが、よく考えるとすべてのエッセイは、一人暮らしを始めて「贅沢貧乏」していた頃の茉莉が、過去を回想して、恥も外聞もなく「世間知らずだった自分」をさらけ出しているんだよね。一方、珠樹は親の金で高等遊民をやっていただけで、平凡な学者として終わっている。

この別冊の中では、森茉莉についての本も書いている作家の笙野頼子と森茉莉の同人誌を出していた長谷川さんの対談が面白かった。「境界の天使」という賛辞を送っていて、うまい言い方に唸らされた。
上品と下品、贅沢と貧乏、お嬢様とあばずれ、インテリとエセインテリ、どっちにも転びそうで、ギリギリのところで落ちない。それはもう天性のものなんだろう。人間は無垢な精神のまま老いていくことができるんだという見本。天衣無縫な老人なんて、周囲には迷惑なだけだろうが、茉莉はそれを許された。あ、ミケランジェリを思い出すなあ。ピアノの世界の妥協を許さぬわがまま王子。

白石かずことの対談は、編集なしのまんま肉声掲載に近くて、あちこち話の飛ぶ森茉莉の思考回路の一片がうかがえて楽しい。自分もこういう、一見ちょっと頭のおかしい、でも実は深い背景があって回りから大事にされる年寄りになりたい(笑)。





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Last updated  2007.07.06 08:21:04
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