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2008.10.09
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カテゴリ:評論・エッセイ

『昭和快女伝』森まゆみ

森さんの『明治快女伝』は、ずいぶん前に読んでいた。これはその続編で、明治生まれ(一部大正生まれも)で主に昭和に活躍した女性たちの評伝。前作との決定的な違いは、森さんが当の本人に会って聞き書きしているところだ。会っている時点ですごいと思う。うらやましい。

明治生まれで平成まで、インタビューに応じられるほど元気というのはすごいことだ。
明治・大正・昭和・平成と4つの時代を生きた女性たち。加藤シヅエさんに至っては、19世紀に生まれて21世紀に亡くなっているから、足掛け3世紀。つくづく女性は長生きだ。

評伝を書かれるような仕事を成し遂げ、この本がハードカバーで出版された時点でほとんどの方がまだ現役だった。森さんも事前に相当資料を読んで覚悟して立ち向かわないといけないし、インタビューされるほうも、90歳を過ぎてなお耳もちゃんと聞こえ、思考力も万全、もちろん理路整然と話せないといけない。こういう人たちにとって老化とはなんなのか。

紹介されている15人中、全く知らない方が5人もいた。これは恥ずかしい。でも、実際にお会いしたことのある方も2人いた。そして、お会いしたいと思っているうちに亡くなられてしまわれた方もいる。

鈴木真砂女、北林谷栄、飯田深雪、吉行あぐり、小澤さくら、長岡輝子、加藤シヅエ

この7人はメディアでも取り上げられる機会が多かったので、なにを成した人たちなのかはよく知っている。小澤さくらさんはこの中では異質だけど。お目にかかったことがある人もいらっしゃる。
鈴木真砂女さんは、銀座のお店に行きたい行きたいと思っているうちに鬼籍に入られた。飯田さんも何度も取材申し込みをしているうちに……。

全く存じ上げなかったのは、岡本宮染、丸木俊、板倉登喜子、鍛冶千鶴子、斎藤史の5人。でももう忘れない。特に自分とは無縁の登山の世界で女性に勇気と力をあたえた板倉さんのお話は印象的だった。

ほかには名前は知っているものの、その人生についてはよく知らなかった櫛田ふき、観世寿弥、三木睦子の3人で、計15人。

もうね。なんかね。庶民なんて一人もいないのよ。皆、もともと士族や華族の出だったり、父親が明治時代に留学していたり、母親も英語が話せてコスモポリタンな環境で育っていたり。唯一、実業で稼いでいたのは鈴木真砂女さんだけど、彼女にしたって裕福な商家の娘だ。
多くが血筋も血統も教育もパーフェクト。日本のノブレス・オブリッジな女性たちばかりで頭が下がる。

なのに自ら市井に分け入って苦労をしている。これはイートン中退してインド行ったりスペイン独立戦争で従軍記者やっていたジョージ・オーウェルと似ている。生まれが良くてドロにまみれた人生を送った人なんて山ほどいるだろうけど、所詮は「帰るところがある」人生だよね。そうそう、宮沢賢治も同様だ。
でも、この本の女性たちは、夫によって、戦争によって、その「帰る場所」を奪われ、自ら立ち上がって自分の足で未踏の地に分け入っている。

どんなに生まれがよかろうと、女は系図に名前も記されない日本において、評価されることも褒められることも望まず、ひたすら自分のやりたいことを貫き通す人生。強くないと生きられない。

森茉莉は1910年代のパリでディアギレフ夫妻と親交があったが、飯田深雪は大正期にシカゴ、ロンドン、英領カルカッタで生活していた。
「ロンドンにいたころは、エリザベス女王が11歳で、うちの子が9歳」って比較対照がすごい。

盛岡生まれの長岡輝子に至っては、士族出身の父、クリスチャンの母のもとに育ち、本格的に芝居を始める前にパリに遊学し、レオナール藤田と親交をもち、岡本太郎からラブレターをもらっている。森さんの「東京の山の手の知的な家庭が生んだ最良の人々」という表現がまぶしい。

加藤シズエさんが、大正時代から産児制限運動をしていたことは知っていたが、まさかペッサリーを作らせて、中華鍋でゼリーをつくってチューブに詰めて売っていたなんて知らなかった。新華族の家でかしずかれて育ち、夫の赴任先で炭坑で仕事をする女性たちの現実を知ってマルクスに転ぶ。いや、この時代、女性がマルクスを読むこと自体、珍しかったと思うんだが。

恵まれた環境から脱することで、なにかを成しえた人間はまぶしい。今は女性だからといって優遇されることなんてない時代だけど、平等な分、舞台はもっと広いはずなのに、自分も含めて現代を生きる女性の器が小さいことにがく然とする。





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Last updated  2008.10.10 00:19:42
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