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テーマ:徒然日記(22706)
カテゴリ:音楽全般
リレイヤーまでとABWHで止まっている私のなかのイエス史の扉を開いて、2カ月半で現在まで追いついた。アルバムは一体何枚買ったんだろう。DVDが10種類以上、関連書籍もリックの自伝など10冊ほどにおよび、聞いていなかった時期に起こったことも概ね理解した。もう最近ではメンバーのアシスタントやエンジニアの名前まで覚えてしまったよ。
もっとも衝撃が大きかったのは、「芸人リックの大活躍」だったけど(笑)。 イエスは2カ月足らずで追いついたので、ここ1カ月ほどはリックのクロニクルをカバー中なんである。今はクリムゾンやストローブスにまで飛び火している。 もう彼はオリジナルのコンセプトアルバムを生み出す力はなくて、ひたすら過去作品のメンテナンス作業とピアノ1台の気軽な(下品な)トークと音楽の会、たまにアダムを巻き込んで大掛かりなコンサートを南米あたりでやるぐらいになっているんだな。それでもまだまだ活躍しているだけでもうれしいよ。往時は彼のピアノをじっくり聞く機会はなかったから、グランド一台で何時間でもコンサートが出来そうなhugeでexcessなところは天下無双で驚いた。かっこつけたり秘密主義なところが一切なくて、ワーキングクラス丸出し感満載で自分のだらしなさもひっくるめて全部ネタにしてMCやっているところなんて、まあ知りたくなかったともいえる。 結局この人は、すばらしい指さばきとアレンジメントの技術が飛びぬけているけれど、国立劇場ではなくて浅草演芸ホールの人だし、大衆演芸向けにしては(そしてあのごついガタイからは信じられない)美しすぎる音とメロディを紡ぎ出すところがすごいんだろうな。あと、あの話芸があまりにも俗人すぎて、それも彼の音楽とは対極にあって、そのギャップを楽しむ人なのかもしれない。レコードコレクターの最新号がキーボードプレイヤーの特集だったけど、リックなんても場外もいいとこだった。評価の多くは「過剰すぎる」。プログレは過剰で大げさなのが身上かと思っていたけど、今はそういう評価なんだな。 さて、本家イエスだけど、未だに入手していないアルバムはUnionとTalkとOYEだけとなった。 プロデュースの問題などもあって評価が極端に低い、いわばイエス史から抹殺したいようなアルバムと理解して、この3枚は聞かずにそっとしておこうと思った。 だって、LadderやMagnificationも、一部絶賛する人はいるので聞いてみたけど、私にとってはイエスにはなくてもいいアルバムだった。 新たに聞いたイエスの曲で、これぞ名曲!と思ったものはAwakenだけだったよ。これは70年代プログレの白鳥の歌としてイエス史に残る曲だろう。あと、Keys~に収録されているMind Driveも往年のイエスらしい大曲で好きだけど、どうも組曲同士のつながりがぎこちない感じなんだよね。大曲ということではFFHもよかったけど、小ぶり感は否めない。 もちろん他にも、印象に残るポップソングとしての出来のいい曲はたくさんあった。Dramaは名作だし、20125にもH&Eにも上質な曲はあったけど、やはり私は70年代のアルバムを一生の友として行くんだろうと思っていた。 ところが、ARW始動ということで、某掲示板で複数のファンがセットリストを妄想しているのを読むと、やたらEndless Dreamの名前が挙がってくる。そんな曲あったっけと焦って調べてみたら、これが、最初から無視していたTalkに入っている曲だった。そしてなぜか、ファンの多くが「ラビンとリックによるEndless dream」を切望している。 さっそく聞いてみたら・・・すごくいい曲じゃないか! ポップなのに王道プログレ。うわー灯台もと暗し。こんな名曲を知らずに過ごすところだった。 Talkはラビンが最後にイエスに残していったアルバム。ポップなロック寄りのヒットメーカーが、最後にこんな「いかにもイエスらしい」大曲を残していってくれるんなんて。しかも冒頭からピアノでのエンドレスなミニマリズムイントロで始まる。こんな技、トニー・ケイにできるんだっけ?と思ったら、やっぱりラビンが弾いている。ケイの存在って・・・。続いて、まるでリレイヤーのようなシャープでアグレッシブなギターリフ。 ヴォーカルも、最初はピアノをバックにメロディアスなラインで始まり(ラビン)、中間部のピアノソロなんて、まるきりリックが弾きそうな(書きそうな)展開で驚いた。ユニオンツアーで意気投合した2人は、結局その後イエスで一緒にプレイすることはなかったけど、もしかしてラビンはこの曲をリックに弾いてほしいかったのかもしれない。ジョンの声によるBメロが始まると、その余りのリリカルなメロディーとジョンの高い音の神々しさに、時間は短いのに泣けてきた。これだよ、イエスって! しかし、危機からは20年以上経っていて、その間にパンクだテクノだ産業ロックだといくつものウェーブが襲ってきて、プログロックは不遇の時代を過ごしていた。ほぼ20年後のEndless Dreamは、ちゃんとそれらを教訓として受け入れ、前人未到だった70年代感を排している。神々しさやわけのわからない精神主義っぽさ、呪文とか宗教とか高尚な歌詞なんかはない。それでもシンフォニックでわかりやすいメロディーと、シンセ満載の音作りはまぎれもないプログロックに聞こえる。 Talkに入ってからの中間部のシンセは、「リックだったらこうはしない」というのっぺりした部分もあるけど、それもまたよし。宇宙空間をほうふつとさせるシンセのバックに、ラビンのエッジの聞いたギターが響く。ジョンが歌いあげるメインテーマは、ラビンだけにちょっとポップすぎるとも思うけど、バックにずーっとミニマルな音型が流れていたり、いかにもマルチプレイヤーらしいラビンのアイデアが満載。結局、こういう人がいないと、ジョンとクリス、アランだけではアルバムが作れなかったんだよな。イエスは。 ちょっとクラシックらしいメロディラインに、荘厳なミサ曲のエンディングのような美しいハーモニーが聞ける後半もすばらしい。これがラビンの作曲だとすると、意外なほどに保守本流な正統派のクラシック理論を見に付けていることがわかる。これは本当にライブで聞きたい曲だわ。リック、サポートにトニー・ケイでも誰でも連れてきていいから、ぜひこの曲やってほしい。 そして私の中では、ラビンはイエスを21世紀につないだ中継ぎの功労者という認識だったけど、彼の功績はもっともっと評価すべきだった。この1曲だけでも。ラビンはその後、ハリウッドで名うての映画音楽作家となったけど、その背景には、彼がもともと南アフリカのユダヤ人社会でのセレブであったことと、ユダヤ人脈とハリウッドの関係がなんとかというのもちらっと読んだけど、まあそんなことより、イエスでの12年ほどの経験が、彼にとって無駄な時間でなかったことを祈るばかりだ。 ■オリバーよ・・・ いつものようにつべを巡回していたら、珍しくオリバーとリックの二人に新生EREを加えたアットホームな感じのコンサートを見つけた。リックが住んでいるノーフォークの近くにある古い農業倉庫を改造したライブスタジオ。この場所は有名で、クラシックのアーティストもよくコンサートをしている。しかしここはキャパ150くらいのはずだ。お客さんはいつものとおりリックと同年代。@5000円くらいで5人もステージ登場したら、ほとんどあがりはないんじゃないのかなあ。リック、営業がんばるなあ。年末にはアダムとジョイントコンサートがあるらしい。 それにしてもオリバー、リックとは共演しないんじゃなかったの?それともアダムの都合がつかなかったの?仕事がなくて困ってるの? 相変わらずリズムがグダグダ、メリハリのないのっぺり演奏、速弾きも微妙…。 なんか無理やり笑おうとしている瞬間があって、そうそう、その調子と思ったらすぐにいつもの仏頂面に戻っちゃった。 リックはいつものように軽口MCで「オリバーは生まれたとき4,5キロもあったビッグベビーだったんだ」とか言ってるけど、リック、おまえもなー。アシュリー・ホルトとは17歳で知り合ったと言ってて(ピアノ弾いていた酒場にいた)、優に50年以上のつきあいであることを知る。そうだったのかー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.05.16 20:32:11
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