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実は、科学実験教室で意識していることがあります。
それは、むかしばなしの世界です。 科学実験と昔話って、似つかわしくないと思われるかもしれません。 しかし、ちょっと聞いてください。 日頃、私が意識していることは、科学的に間違ったことを言っていないか? もありますし、 安全かどうか? 別な場所で、子どもたちがマネしても危険はないかどうか? も、もちろんあります。 でも何といっても、子どもたちの集中力を引き出せるか? 子どもたちを熱中させられるか? ワクワクのエンターテイメントになっているか? が一番です。 疑問に思っていることがあります。 「これは子どもたちに受けるだろう」、と自信をもって見せても受けないことがあるのです。 逆に、大したことないことなんだけど、あとあとまでも、感想を言ってくれることも つまり記憶にしっかり定着していることもあります。 この差は何だろう?と疑問に思っていました。 この疑問が最近、解けてきました。 それが、むかしばなし です。 子どもは、新しいこと、びっくりすることに出会うのを好むと、思い込んでいませんか? 私もそう思っていました。 でも、子どもはもう知っていることに出会うのが好きなのです。 よく知っている絵本を何回も読んだり、よく知っているお話を、また聞かせてと言います。 昔語は子どものそういう欲求をよく知っていて、それをきちんと満たしてくれます。 もちろん、新しい発見がなければ、意味がないのですが、 子どもの脳みそに働きかけるには、リズムが必要なのです。 昔語は、すじの流れのある物語ですから、物語としてのリズムがあります。 これが重要だと思うのです。 そして同じ場面は同じ言葉で語るのです。 しかも3回繰り返されます。 グリム童話の「白雪姫」では、 白雪姫は女王によって一度目はひもで、 二度目は毒のくしで、三度目は毒のりんごで最後には殺されます。 三回の繰り返しが、ほとんど同じ言葉で語られているのですが、 よく読むと、三回目が一番長く語られていることがわかります。 そして、一番重要なのも三回目であることは明らかです。 なぜなら、りんごで殺されて、生き返らなかったからこそ、 王子との結婚が成就したのですから 。 そうすると、ここにストーリーとしてのリズムが潜んでいることがわかります。 それは、タン、タン、タンという、三回目にアクセントのあるリズムです。 こういうリズムがあることがわかると、可能性はうんと広がります。 石を前に投げるとき、人間ならば誰でも一、二、三と投げます。 予備動作が二つあって、三つ目で投げます。 陸上競技の三段跳びを思い起こしてください。 ホップ、ステップ、ジャンプと跳ぶとき、ジャンプが一番遠くへ跳び、一番重要です。 「白雪姫」のストーリーのリズムと同じであることがわかります。 昔話の中で、どうしてこんな形ができたのかといえば、 耳で聞くストーリーとして、それが最も心地よかったからでしょう。 音楽の場合にも、特定の人が発明したのでなく、 このようなリズムが耳で聞いて心地よかったからです。 それを敷衍すると、文芸とか音楽という芸術作品が人に与えてくれる心地よさにつながります。 ところが、大人が科学の法則を教えようとすると、 三回を一回にして、結論だけで終わってしまっているものが多いようです。 科学だけではありません。 絵本だって、節約しています。 白雪姫はりんごで一発必中で死ぬから面白くないのです。 シンデレラは一回目の舞踏会で靴をなくしてくる(本当は三回目なのに)。 これでは、せっかくの心地よいリズムが消えてしまいます。 そればかりか、そこに込められた大切なメッセージも消えてしまうのです。 私は、科学も物語だと思っています。 少なくとも子どもたちにとってはそうです。 長年、生き延びてきた物語には、ヒントがいっぱいありそうです。 しばらく、それをまとめてみようと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.04 06:04:53
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