全て
| カテゴリ未分類
| 育児問題
| 教育問題
| 子どもの問題
| 育児エッセー
| 人生論
| 時事問題
| 日々の随筆
| 家族のこと
| 自分(はやし浩司)史
| 友人より
| BW教室のこと
| 生きザマの問題
| 心の問題
| 育児のコツ
| 親子の問題
| 宗教問題(心の問題)
| 幼児・子どもの心理
| 老人問題
| 【保存原稿・SS】
| 旅行記
| ニュース
| 子どもの世界
| 私が見た映画
| ●宗教
| ●日本について
| 社会時評
| 夫婦の問題
| ●経済について(日本+国際)
| 英語のことわざ
| ★BW方式
| 小説
| BW教室
カテゴリ:カテゴリ未分類
●家出をした高校生
「親子関係は、完全に破壊されました」(相談者)というメールをもらった。そのため、高校1年生の息子は、家出。 たまたま家に置き忘れていった携帯電話を頼りに、息子の友人たちに電話をかけて、息子をさがしまわる。みな、「知らない」と言っていたが、一人だけ、「連絡してみる」と。 やがて息子から電話。「もうすぐ帰る」と。一安心したものの、その日のその時刻になっても、息子は帰らず。心配は、つのるばかり。「どうしたらいいか?」と。 ++++++++++++++++++ 子どもの巣立ちは、必ずしも、美しいものばかりとはかぎらない。たがいにののしりあいながら、別れていく親子も、珍しくない。 しかしこういうケースでは、親が、何とかしようとあせればあせるほど、逆効果。子どもは、そういう(親の干渉)から、逃れたいのだ。 それにもう一つ。家出を、三番底、四番底とするなら、さらに五番底がある。六番底もある。 実際、S市であった話をしよう。 両親は、その市でも、職業を言ったらその人とわかるほどの名士。その両親の1人娘が、小学6年生のころから、外泊をするようになった。その前に、門限に遅れてきた娘を、両親が、はげしく叱っている。 で、あとはお決まりの非行コース。携帯電話で出会い系サイトに片っ端から電話を入れ、男遊びをするようになった。もちろん、学校へは行かなくなった。 両親は、娘をそのつどさがして、家に連れ帰り、はげしく説教。しかし効果はなかった。やっと学校へ行かせても、その帰りには、もう行方不明。担任の教師と、徹夜でさがしまわる日がつづいた。 何とか(?)小学校を卒業したものの、中学へ入ってからも、ほとんど、学校には行かなかった。父親も、母親も、自分の仕事を優先した。つまりそれほどまでに、重い責任のある仕事をしていた。 娘は、両親が家にいないことをよいことに、さらに外泊を重ねた。 が、中学2年になった春、娘が、体の不調を訴えた。最初は、軽い風邪と思っていたが、症状が、長くつづいた。近くの医院から、大病院へ移され、そこで精密検査。その結果、HIVに感染していることがわかった。 娘は、夏休みの間、ちょうど、1か月間、入院した。症状は収まったが、しかしその病気は、治る病気ではない。 が、そのあと、さらに大きな問題が起きた。その娘が、ことの重大さを認識できないまま、親友(?)に、「私、エイズよ」としゃべってしまった。 あとは、大騒動。その話は、数日のうちに、全校生徒の親が知るところになってしまった。「あなただいじょうぶ?」「うちの子だいじょうぶ?」と。 その娘は、かなり多くの、不特定多数の男性、男子と遊んでいた。それでそうなった。男子ばかりではない。女子生徒の親も、騒いだ。「トイレでうつったかもしれない」と。二次感染、三次感染の可能性もある。 私の聞き取り調査によっても、このH市内ですら、3~4%の女子中学生が、性体験をしていることがわかっている。しかしHIVに感染したという例は、少ない。 その女の子は、今度は、学校へ行きたくても行けなくなってしまった。 今、時代は、ここまできている。多くの親は、「うちの子にかぎって……」「まさか……」と考えている。しかしそう考えるのは、甘い。 ++++++++++++++++++++ ショッキングな話を書いたが、子どもの非行は、ある日、突然、始まる。そして一度始まると、あとは、あっという間に、底なしの悪循環。二番底から三番底へと進んでいく。 親は、そのときのその状態を最悪と思うかもしれないが、しかしその下には、まだつぎの底があるということ。 だから子どもの非行を、どこかで感じたら、親は、手を引く。そして「今の状態を、それ以上悪くしないこと」だけを考えて、様子を見る。具体的には、暖かく無視し、ほどよい親であることに努める。 説教しても意味はない。叱り方にもいろいろあるが、叱れば叱るほど、逆効果。(門限破り)→(外泊)→(家出)と進んでいく。 相談者のメールによれば、こうある。 「息子が出て行くとき、学校に退学届けを出し、就職先も見つけてからにしなさい。それなら出て行ってもいいと言いました」と。 しかしこれほど、子どもに酷な話はない。高校に自分で退学届けを出せはないし、就職先についても、そうだ。これは、子どもにしてみれば、「二度と帰ってくるな」と言うに等しい。 つまり親は、親意識で、子どもをしばっているだけ。自分の不安や心配を、子どもにぶつけているだけ。無理難題をふっかけて、子どもの家出を阻止しようとしたのだろう。その気持ちはわかる。 では、どうするか? 相談者は、今も、息子をさがしまわっているという。そしてメールには、こうあった。「いったい、親って、何ですか」と。 ++++++++++++++++++ 私は、「親意識」について、何度も書いてきた。その親意識には、善玉と悪玉がある。「親らしく、堂々と責任をとろう」という意識を、善玉親意識という。一方、「親に向かって、何よ」と、親風を吹かす意識を、悪玉親意識という。 とても残念なことだが、その相談者は、後者の悪玉親意識が強いように感ずる。恐らく、……というより、まちがいなく、その母親自身も、かなり権威主義的な家庭環境の中で、生まれ育っているにちがいない。 その悪玉親意識が強ければ強いほど、子どもにとっては、家庭は息苦しい家庭環境となる。果たして、それを、その母親は、理解していたか。わかっていたか。もっと言えば、子どもの立場で、子どもの苦しみや悲しみを、理解していたか。 「携帯電話の請求書だけでも、5万円もありました」とあり、「自己管理能力がまったくありません」と結んであった。 しかし、本当に、そうだろうか。 子ども自身が、自暴自棄的になるように、子どもを追いつめていたのではないだろうか。生活習慣が乱れてくると、約束や目標を守れないという初期症状につづいて、生活態度そのものが、だらしなくなる。 しかしそれは子ども自身の自己管理能力というよりは、いわば心の病気によるものと考える。過食症や拒食症と同じように、携帯電話依存症になったことも考えられる。そういう症状があったからといって、「自己管理能力がない」と決めつけてはいけない。 かなりきびしいことを書いているが、母親自身が、かなり自己中心的な子育て観をもっているのがわかる。その自己中心性がなくならないかぎり、子どもは家には帰ってこないし、また帰ってきても、すぐ家を出て行く。私だって、そんな(うるさい家庭)には、一日だって、いないだろう。 +++++++++++++++++ では、どうするか? 今の状況では、母親にさがしまわされること自体、苦痛であるにちがいない。私には、「もう、放っておいてよ」と叫んでいる、子どもの声が聞こえるような気がする。 そこで大切なことは、まず、あきらめること。現状を受けいれること。「今」の状態が現実と考え、ジタバタしないこと。メールでは、「捜索願いを警察に出そうかと考えている」ということだが、事件性が感じられないなら、これもかえって逆効果。 高校1年生といえば、親が考えているより、子どもは、はるかにおとなである。その(おとなである)部分を、親がもっと、信じなければいけない。たぶん、この母親は、その子どもが乳幼児のときから、心配先行、過干渉気味の子育てをしてきたにちがいない。もっと言えば、自分の子どもを、まるで信じていない。あるいは自分自身も、あまり恵まれない家庭環境に育った可能性もある。とくにその母親と母親の父親(子どもの祖父)との関係が悪かったことが疑われる。 それにもう一つ気になるのは、メールの中に、父親の存在感があまり感じられないこと。それはともかくとして、「親として、ここで折れると、また同じことの繰りかえしになると……」と、がんばっている点が、たいへん気になる。 どうして折れてはだめなのか? そう、がんばらないで、折れればよい。すなおに折れる。折れれば、気も楽になる。 電話がかかってきたら、すなおに自分の心を表現すればよい。「お願いだから、帰ってきてください。もう何も言いませんから」「あなたがいなくて、お母さんは、さみしいです」と。泣きたければ、泣けばよい。どうしてそんなふうに、無理にがんばるのか。 母親自身が、自己開示(心の解放)をしていない。ならば、どうして、子どもにそれができるのか? 親としての気負いが強すぎる。私は、そう感ずる。 ときにはバカな親になる。バカな親のフリをして、子どもの自立をうながす。それも、子育てでは、重要な技術の一つと考える。「親だから……」「子どもだから……」という、『ダカラ論』にしばられてはいけない。 親には3つの役目がある。ガイドとして、子どもの前を歩く。保護者として、子どものうしろを歩く。そしてもう一つは、友として、子どもの横を歩く、だ。 その母親も、勇気を出して、子どもの横を歩いてみるとよい。勇気を出して、だ。悪玉親意識など、今、すぐ、捨てたらよい。 そして子どもが家に帰ってきたら、暖かい無視にこころがける。相手が求めてくるまで、無視。しかし何かを求めてきたら、それにはていねいに応じてやる。あとは、ほどよい親に努める。 高校はそのまま中退することになるかもしれない。しかし心配は、無用。家出をするほどバイタリティのある子どもは、そういう逆境を、かえってバネとして、たくましくなっていく。 非行をすすめるわけではないが、そうしたサブカルチャ(下位文化)を経験した子どもほど、あとあと常識豊かなおとなになることが知られている。 そういうふうに前向きに考えたらよい。 子どもは、小学3、4年生を境に、急速に親離れを始める。しかし親はそれに気づかない。「私はいい親子関係にいる」という幻想にしがみついたまま、それに気づかない。 この日本では、親が子離れを始めるのは、子どもが、中学生から高校生にかけてから。その相談者も、決して、好ましい方法ではないかもしれないが、今、子離れをし始めている。 大切なことは、子どもも高校生なのだから、子離れをしっかりとして、母親は母親として、つまり1人の人間として、自分の人生を生きることを考えること。こんな問題で、心をわずらわせてはいけない。 はっきり言おう。 相談者の子どものほうが、私には、相談者より、おとなに見える。だから相談者の方は、何かと心配かもしれないが、今は、高校1年生の息子を信ずるしかない。 おういう話は、必ず、笑い話になる。この種の家出は、まさに日常茶飯事。「うちの子だけが……」と思いこんではいけない。さらにそれから被害妄想をふくらませてはいけない。今、あなたの子どもは、あなたから巣立ちをしようとしている。 私の好きなエッセーを最後に、ここに添付します。 ++++++++++++++++++++++++ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年04月08日 13時47分07秒
|