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JEWEL

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連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

Feb 27, 2012
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1634年、夏。

キリシタン狩りは平和な村を襲い、村人の大半は磔にされるか、雲仙で命を落とすかのどちらかだった。
子どもたちの遊び場としていつもにぎやかであった村の広場は、処刑場へと姿を変え、誰も近寄らなくなった。
そんなある日のこと、四郎はりつに呼び出され、村のはずれにある池へと向かった。
「私にお話したいこととは、何でしょうか?」
四郎がそう言ってりつを見ると、りつは頬を赤く染めて言った。
「あの・・わたし、いままで四郎様のことをお慕いしておりました。」
16になったりつはあれから美しく成長していた。
「私を?」
「ええ・・ですから、私とお付き合いを・・」
「それは、できません。」
「何故ですか?理由を教えてくださいませ。」
「私には、姫様が・・」
「あなたは昔から、変わっていませんね・・いつもあの人のことばかり・・」
りつはそう言って涙を浮かべて、池を後にした。

(どうして四郎様はいつもあの人ばかり!あの人は化け物なのに!)

りつの中で、美津に対する憎しみが徐々に膨れ上がってきた。






Last updated  Apr 1, 2012 09:54:20 PM
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「キリシタン狩りは、まだ続いているようね?」

凛はそう言って、鬼神を見た。

「ああ、愚かな人間どもは、己と違うものを徹底的にいたぶることで快感を得るらしい・・」
鬼神は鼻を鳴らしながら言った。
「あいつらはもともと下等動物よ。人を利用するか、利用されるか・・人をいたぶるか、いたぶらるか・・どちら側の立場に立っても、殺し合いが好きだしねえ。」
凛は酷薄な笑みを浮かべながら言った。
「でも人っていうのは、そこが面白いところなのよねぇ?」
「まあな・・」






Last updated  Apr 1, 2012 09:53:16 PM
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藤吾の死から一週間が経ち、この村で大規模なキリシタン狩りが行われた。

連日村人達が役人に連行され、二度とその顔を見ることはなかった。
連行された村人達の大半は、雲仙の噴火口へと消えた。
この間まで平和だった村は、キリシタン狩りの犠牲となり、次第に村人達の顔から笑顔が消えていった。
美津は何とかしてキリシタン狩りから村人達を守りたいと思った。
だがそうしようとするたびに、鬼神の言葉が頭をよぎった。

“お前が人々を救おうとしても、尊敬されるどころか化け物呼ばわりされるだけじゃ”






Last updated  Apr 1, 2012 09:50:50 PM
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「鬼神が昨夜ここに?」

翌朝、四郎はそう言って美津を見た。

「そうなの・・彼こう言ったわ。お前がどんなに人々を救おうと、お前は尊敬されるどころか化け物扱いされるって・・」
美津はそう言ってうつむいた。
「これからこの村には何かが起こりそうな予感がするの・・恐ろしい、何かが・・」
「買い物に、行ってきます。」
四郎は畑を出て、買い物に出かけた。
広場では人だかりができていた。
何だとおもってみていると、役人が1人の男を指して怒鳴っていた。
「この男は異教の神を信じ、お上に弓引く者!よってこの者を死罪とする!」
四郎は男の顔を見てハッとした。
男は自分達に何かと親切にしてくれる藤吾だった。
「待たれよ、その男は何も・・」
だが役人は四郎の言葉に耳も貸さず、藤吾の首をはねた。
四郎の脳裏に、藤吾の笑顔が浮かんだ。
「藤吾さんが、殺された・・」
「はい、この目でしっかりと見ました・・藤吾殿が殺されるのを・・」
「なんてこと・・」

美津はそう言ってその場に蹲った。






Last updated  Apr 1, 2012 09:49:57 PM
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その夜、美津はなかなか眠れなかった。

この平和な村で、雲仙のような残虐なキリシタン狩りが行われるのだろうか?
村の人々を助けるために、自分は何ができるのだろうか?
美津がそう考え込んでいると、誰かが美津の髪を梳いた。
「四郎?」
美津がそう言って四郎を見ると、彼は隣で寝息を立てている。
「また来たぞ。」
鬼神は美津に笑いかけながら言った。
「・・何のよう?」
美津はそう言って鬼神を睨んだ。
「すっかり嫌われておるな、わしは。」
鬼神はため息をついた。
「そなたにひとつ、言うておきたいことがある。」
「言っておきたいこと?」
「そうじゃ。お前がどんなに人々を救おうと、お前は尊敬されるどころか化け物呼ばわりされる。」
鬼神はそう言って闇の中へと消えた。
美津は一晩中、鬼神の言葉が頭から離れないでいた。






Last updated  Apr 1, 2012 09:49:19 PM
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この頃、島原ではキリシタン狩りが頻繁に行われるようになった。

キリシタン達は奉行所に連れて行かれ、壮絶な拷問を受けた末に生きたまま蓑を着せられ火をつけられるか、磔にされるかのどちらかだった。
また、雲仙において、キリシタンに熱湯を浴びせたり、煮えだった硫黄を飲ませるなど、キリシタンの迫害や虐殺が村で噂になった。
「聞いたかい?今日も雲仙のほうで・・」
「ああ、大勢のキリシタンが殺されてるらしいよ・・」
「お役人様は毎日雲仙の噴火口にキリシタンを落としているんだってさ・・」
「ああ、恐ろしい・・」
美津はそんな噂を村で聞くたびに、母が遺してくれたロザリオをギュッと握り締めた。
(これから何か嫌なことが起きる・・)
いままでキリシタンに寛容であった世の中が、徐々に変わっていく。
この村でも、キリシタン狩りは起こるかもしれない。
嫌な予感がする。
「キリシタン狩り?」
四郎はそう言って美津を見た。
「そうなの。最近雲仙の方で・・なんだか嫌な予感がするのよ・・」
「・・何かが、ここで起こりそうな気がしますね。」

平和な村に、徐々に暗雲が立ち込めようとしていた。






Last updated  Apr 1, 2012 09:48:51 PM
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「姉ちゃん、天女様はあたしを家まで送ってくれたんだよ!それなのに化け物なんてひどいよ!」

ますはそう言ってりつを睨んだ。

「あんたは知らないからそういうことが言えるのよ!」
りつは美津に付けられた胸の傷を妹に見せた。
「これは天女様に付けられた傷よ!あんたが慕っている天女様にね!」
「でも昔のことじゃない!姉ちゃんだって天女様のこと、本当は好きなんでしょう?」
「嫌いよ、あんな人大嫌い!」
りつはそう言って家を飛び出した。
「ますのバカ、なんでわからないのよ・・天女様は化け物なのに・・」
村のはずれにある池でりつはそうつぶやき、美しい水面を見た。
本当は美津のことは好きだ。
だがあの日、美津の怒りにゆがんだ顔を見て、自分の胸に傷をつけた美津のことを一生許さないと決めた。
なのに、昔のことは水に流して美津とまたいい関係に戻りたいと思う自分がいる。
彼女は、化け物なのに。

(どうすればいいの・・)

りつはため息をついた。






Last updated  Apr 1, 2012 09:48:15 PM
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翌朝、美津はますを家まで送った。

「もうお姉さんやお父さんに黙って家を抜け出しちゃだめよ。心配するでしょ?」
「わかった。」
ますはそう言ってうつむいた。
「今度来るときは、ちゃんとお姉さんやお父さんに行き先を言ってから来てね。」
ますの家に着くと、藤吾とりつがますと美津に駆け寄ってきた。
「ます、どこに行ってたの、心配したのよ!」
「ごめんなさい・・」
ますはそう言ってうつむいた。
「美津さん、ありがとうございます。ますが迷惑かけました。」
藤吾はそう言って美津に頭を下げた。
「いいんですよ、お互い様ですし。」
そう言って美津は藤吾に微笑んだ。
「ますを食おうとしたんでしょ?」
りつは美津を睨みながら言った。
「え・・?」
「妹を取って食おうとしたんでしょ、この化け物!」

りつはますの手を引っ張って、家の中へと入っていった。






Last updated  Apr 1, 2012 09:47:47 PM
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ますは森を抜け、天女様が住む家の前に立った。

「天女様。」
戸の向こうから呼びかけても、何も反応がない。
「天女様。」
もう一度呼びかけてみたが、やはり誰もいないようで、返事はない。
ますがあきらめて帰ろうとしたとき、戸が開き、天女様が顔を出した。
「あら、どうしたの、こんな遅くに?」
そう言って天女様はますを見た。
白い肌は月光に照らされ、少し青白く見える。
「天女様、具合が悪いの?」
ますはそう言って天女様を見た。
「ええ、少し気分が悪くて寝ていただけよ。さあ、上がりなさい。」
そう言って天女様はますを家にあげた。
「ねえ、どうしてこんな時間に来たの?」
「天女様に会いたかったから。」

ますはそう言って天女様に屈託のない笑みを浮かべた。






Last updated  Apr 1, 2012 09:45:57 PM
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「姉ちゃん、今度天女様のところに行ってもいい?」

畑仕事を終えて家に帰ると、妹のますはそう言って自分を見た。

「だめよ。」
「どうして?」
ますはそう言って姉を見た。
「だめといったらだめよ。」
りつは気まずくなって妹から目をそらした。
「変な姉ちゃん・・」
ますはそう言って布団の中に入った。
その夜、姉と父が寝ていることを確認してから、ますはこっそりと家を抜け出した。
天女様に会うために。
ますは天女様が住んでいるという森の向こうにある家を目指した。
姉ちゃんは天女様のこと嫌っているようだけれど、ますは天女様のことが好きだ。
優しいし、それに挨拶をすれば微笑んでくれる。
あんなに優しくて綺麗な人を、どうして姉ちゃんは嫌うのだろうか?
わからない。






Last updated  Apr 1, 2012 09:47:06 PM
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