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JEWEL

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連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

2012年02月27日
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「わたしはあなたの花嫁なんかにはならないって言ってるでしょ!」

美津はそう言って鬼神に向かって長刀を振り回した。

「気性が荒いのは相変わらずじゃの。」
鬼神は美津の刃を素手で受け止め、笑った。
「わしの花嫁に、お前はいずれなるのじゃ。」
鬼神は美津のあごを持ち上げ、その唇を奪った。
「近寄らないで!」
美津はそう言って鬼神の頬を打った。
激しい拒絶を受け、鬼神はため息をついた。
「まだおぬしの気は変わらぬようじゃな・・」
鬼神は四郎を睨んだ。
「まぁよい。おぬしの気が変わったらまた来ようぞ。」
鬼神はそう言って闇の中へと消えていった。
「姫様、あれは一体・・」
「あれは嫌な奴よ。とっても嫌な奴。」

美津はそう言って食卓へと戻っていった。






最終更新日  2012年04月01日 21時36分50秒
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「あの子、じっとあなたのこと見てたわよ。」

夕餉の最中に美津はそう言って四郎を見た。

「あの子?」
「昼間村の広場にいた、女の子よ。あなたのことじーっと見てたわ。きっとすきなのよ、あなたのことが。」
「でもまだ子どもですよ?」
「女心をわかっていないな。」
エーリッヒはそう言って鼻を鳴らした。
「じゃあお前はわかるのか?」
「まぁな。姫様、その子の名はなんというのです?」
「りつちゃんっていったわ。私のこと天女だと思ったみたい。」
「天女ですか・・それよりも鬼女のほうが似合ってると思いますが・・」
「ちょっとそれ、どういう意味?」
美津がそう言ってエーリッヒを睨んだとき、どこからか悲鳴が上がった。
「なに・・」
美津は長刀に手を伸ばした。
「どうやら、招かざる客が来たようですね。」
「そのとおりじゃ。」
煙の中から、1人の男が現れた。

「久しいな、わしの花嫁。」

そう言って鬼神は、美津に笑いかけた。






最終更新日  2012年04月01日 21時35分52秒
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「ここね・・」

凛はそう言って島原の街を見渡した。

「ここに、鬼姫がいるのね?」
「そうじゃ。」
不快そうに紺碧の瞳を細めながら、鬼神は言った。
「もうそろそろ目覚めておろう。」
「じゃあ鬼姫様のところへ行くわ。」
凛がそう言って駆け出そうとすると、鬼神が凛の手を掴んだ。
「お前はいまは動かぬほうがよい。」
「あら、どうして?」
「どうしてもじゃ。」
凛は鬼神の言葉にむくれたが、鬼神の言うとおりにしようと決めた。
「そうね・・それに島原がどんなところか、ちょっと知りたいし。」
「わしは四郎に会うてくる。」
「そう。あんまり乱暴なことはしないでね。」
「わかっておる。」

鬼神はそう言って闇の中へと消えた。






最終更新日  2012年04月01日 21時33分41秒
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りつは今日も、村の広場で遊んでいた。
またあの人に会えるだろうか?
黒髪の優しい青年に会うことを期待しながら、りつは鞠をついていた。
そのとき、りつは鞠を落とし、それは地面に転がった。
「これ、あなたの?」
雪のような白い肌が、りつの鞠を拾った。
艶やかな黒髪と、紅の瞳。
そしてふっくらとした桜色の唇。
「天女様?」
そう言ってりつは鞠を拾ってくれた女性を見た。
「私は天女じゃないわ。私は美津。あなたは?」
「わたしはりつ。」
「そう・・よろしくね、りつちゃん。」
美津はりつの頭を撫でて、広場を後にした。
りつはぼーっとして、美津の姿が見えなくなるまで彼女の背中を見ていた。

(綺麗な人・・)

天女のような美しい女(ひと)は、りつにとって憧れの女となった。






最終更新日  2012年04月01日 21時31分59秒
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美津は畑で四郎とエーリッヒと共に野菜を耕していた。

「久しぶりに体を動かすのって気持ちいいわね。」
美津はそう言って深呼吸した。
「そうですね。姫様は長い間寝ていらしたから、新鮮な空気を吸って気分が優れましたでしょう。」
四郎は美津に微笑んだ。
「ええ、そうね。畑仕事をしていると、四郎の実家のことを思い出すわ。」
「ええ・・」
四郎の顔が一瞬曇った。
「ごめんなさい、辛いことを思い出させちゃって・・」
「いいんですよ。私の家族の魂はいつも私に寄り添ってくれています。」
四郎はそう言って母の形見のロザリオをまさぐった。
「そうね・・旅の間も、私が眠りに就いている間も、父上や母上はいつも私のそばにいるって感じてるの。」
美津はさびしそうに笑いながらいった。
「今日から新しい暮らしが始まるのね。」
「ええ。」

四郎は青い空を見ながらいった。






最終更新日  2012年04月01日 21時31分18秒
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「姫様の様子が、少し変なんだ。」
「変?」
買い物から帰ってきた四郎は、そう言ってエーリッヒを見た。
「なんというか・・寝息を立てているんだが時々目が開いたりして・・それに夜中から奥の部屋で物音がするんだ。ひょっとすると・・」
「姫様が目覚める日が近い、と?」
四郎はそう言って唸った。
「姫様は40年の眠りに就くとご自分からおっしゃった・・私はそれを信じて・・」
そのとき、奥の部屋で物音がした。
「まさか姫様が・・」
2人が奥の部屋へと向かうと、そこにはうめき声を上げて畳の上を這う美津の姿があった。
長い黒髪の隙間から紅い瞳が見える。
「姫様・・」
四郎がそう言って美津に近寄ると、美津は四郎の腕を掴んで頭を摺り寄せた。
「四郎・・」
「お目覚めになったのですね、姫様。」
美津の頭を撫で、慈愛に満ちた表情を浮かべて四郎は彼女を見た。
「ごめんね四郎、長い間、待たせちゃったね。」

美津はそう言って、2人の従者に微笑んだ。






最終更新日  2012年04月01日 21時30分30秒
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1621年夏、島原。

3歳のりつは村の広場で友達と遊んでいた。
本当は家で母に甘えたいが、母は妹を産んだ後、重い病に倒れ、寝たきりとなっていた。
日が暮れて友達が次々と帰り、りつが家に帰ろうとしたとき、彼女は誰かにぶつかった。
りつが振り返ると、そこには紺の着流しを着た黒髪のハンサムな青年が立っていた。
「ごめんなさい・・」
りつがそう言って頭を下げると、青年はニッコリとりつに微笑んだ。
「怪我はないかい?」
優しい光を放った黒い瞳に、りつは一目で恋に落ちた。
これが、りつの初恋であった。






最終更新日  2012年04月01日 21時29分27秒
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1621年、島原。

この年に、益田甚兵衛の元に1人の息子が生まれた。
その名は四郎。
のちに、「救世主」と呼ばれる天草四郎時貞の誕生である。
「四郎殿、向こうの村で赤子が生まれたとか。」
刀の手入れをしながら、エーリッヒはそう言って四郎を見た。
「赤子が?それはめでたいな。男か、女か?」
「男だそうだ。名前はお前と同じ四郎だ。」
「そうか。」
四郎はそう言って槍の手入れを始めた。






最終更新日  2012年04月01日 21時25分53秒
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その夜、エーリッヒは縁側で物思いに耽っていた。

戦乱のない太平の世に暮らし、平凡な日々を送っている。
四郎はいまの暮らしにあまり満足していないようだが、自分は戦場を駆け抜ける日々よりも、のどかな暮らしのほうがいいと思っている。
3ヶ月前の戦で、エーリッヒはたくさん惨いものを見てきた。
凛が無抵抗の村人達を虐殺している光景は、いまも夢に見る。
故郷を遠くはなれ、この村に移り住んだとき、エーリッヒはあの戦を忘れてしまった。
もう戦うことはないのだと思い、うれしかった。
この生活がずっと続いてくれたら・・そう思いながら、エーリッヒは眠りに就いた。






最終更新日  2012年04月01日 21時19分37秒
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美津が眠りに就いて27年の歳月が過ぎた。
四郎とエーリッヒは農作業に勤しんでいた。

「秋にはたくさん野菜が獲れるな。」
「ああ。」
縁側で一休みしながら、四郎とエーリッヒはそう言って茶を飲んだ。
「こうも平和な日々が続くと、なんだか気がたるんでしまうな。」
四郎はそう言って玄関に掛けている槍を思い出した。

「戦乱のない日々は畑を耕すことが一番の仕事だ。それに戦など、決していいものではないからな。」

青く澄んだ空を見上げながら、エーリッヒはそう言った。






最終更新日  2012年04月01日 21時18分13秒
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