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カテゴリ:明治維新・アジア主義
あづいー。頭上からは刃のような日差しが照りつけ、大気中には眩しい光の粒子が散乱し、下を向けばコンクリートとアスファルトからの放射熱がじんわりと頬をやく。 しかし、言うまでもなく、彼の描いた天皇の下での 「五族協和」 という理念自体が、そもそもただの絵に画いた餅にすぎない。それは、いわば世間知らずの軍人が描いた、あまりにも現実性を欠いた、理想という名にも値しないただの空論でしかない。 また、強力な兵器の登場が戦争に対する抑止力となるという理屈には一定の現実性はあるものの、「一発あたると何万人もがペチャンコにやられるところの、私どもには想像もされないような大威力」 の破壊兵器や、「無着陸で世界をぐるぐる周れるような飛行機」 を備えた二大勢力による、徹底的な 「最終戦争」 ののちに現れる世界とは、マッドマックスやケンシロウの世界以外のなんであろうか。 なお、中公文庫には、そのほかにも田中隆吉の 『日本軍閥暗闘史』 や大川周明の 『復興亜細亜の諸問題』、『高橋是清自伝』、石光真清の 『城下の人』、荒畑寒村の 『平民社時代』、『大杉栄自叙伝』、杉山茂丸の 『児玉大将伝』 など、近代史の勉強にはたいへん役立つ歴史的資料がそろっている。 こういった資料の文庫化は、とうてい利益の上がるものとは思えないが、講談社文庫や角川文庫などのように、利潤追求のみを至上命題としている出版社が多い中、まことに頼もしい限りである。中央公論社は、もともと明治に京都・西本願寺の有志らによって設立されたそうだが、9年前の経営危機によって新社が設立され、現在は読売新聞の子会社となっている。 若者の活字離れが叫ばれる中、出版界をめぐる状況は相変わらずたいへんのようだが、今後とも中公文庫の健闘を陰ながら応援する所存である。
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昨日の夕刊に、岩波から独立したユビキタスタジオさんのコラムがありました。題して「いまドキの出版起業」
「出したい本だけを出していて苦しくなってくると、他社はどうしているんだろう?と考える。僕がかつていたI書店では、当時の安江良介社長<故人>が「好きな本をつくれ。だが同時にもう一方の手で、売れる本もつくれ」と力説していた。 まわりを見ると、アダルト系の出版をしながらたまに重厚な本を出すところもあるし、ゲームの攻略本で儲けながら出したい本を出しているところもある。 (中略)つくりたい本をつくりたいようにつくるために、嵐の海に飛び込んだんだも~ん!水を飲んで死にそうになったら、誰か酸素をください。」 だそうです。中公文庫をはじめ、日本の出版業界がんばれ! (2008.08.01 07:01:02)
薔薇豪城さん
昔、三一書房が五味川純平の「人間の条件」で大当たりを出し、その一作で有名出版社の仲間入りを果たしたという話があります。 最近は、堅い本は売れない。売れないために定価が上がる、の悪循環で作る方も買う方もなかなかたいへんです。文庫でも、1000円を越すのがありますからね。 売れない本を出し続けるには、一方で売れる本で利益を確保しておくことも必要なわけですが、その反面、出版物の量は増え続けているそうで、地方の郊外書店などだと、なかなかいい本は置いてません。 その分、ネット販売などに頼る面が大きくなるのでしょうが、出版社のみならず、地域の書店なども経営はたいへんのようですね。小さな書店などは、どんどん潰れていってます。 (2008.08.01 10:45:05) |