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2023.12.02
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カテゴリ:時計
6月になり公開された是枝監督の”怪物”という映画がある。

そのロケ地が諏訪地方だったという事は、
坂元裕二さんによる脚本がカンヌで脚本賞を受賞してから知ったけど、
映画で使われた坂本龍一さんによる音楽自体が最後の遺作になってしまい、
改めてこの映画の存在が自分にとって大きなものになっていった。


諏訪に縁のある映画監督では、
蓼科の別荘/無藝荘で脚本を書いていた小津監督が有名だけど、
宮崎駿監督も富士見に別荘があって、
映画に出て来るキーワードには、
地元の人間に馴染みのあるものが出てきたりして面白い。

その1997年に公開された名作映画の”もののけ姫”では、
乙事(オッコト)とかエボシとか甲六など地元では馴染み深い地名が使われて、
曲者の”ジコ坊”は主にハナイグチというイグチ系のキノコの地元名。

取り分け鮮度が良い傘の開いていないジコボウは、
お馴染みの汁物やおろし合えではなく、
ホイル焼きにすると山の味そのもので個人的にはマツタケよりも好む。

デイダラボッチという巨人に関しても、
地元にはデエダラボッチという名前の巨人伝説がある。

 富士山と八ヶ岳が背比べをして八ヶ岳が勝ったのに、
 怒った富士山に頭を蹴られ山が八つに割れてしまい、
 それを治そうと巨人のデエダラボッチがモッコを使って土を運ぼうと、
 線香を杖にしたら折れてしまい、それをそのまま放っておいたら、
 茅野にある大泉(おおずみ)山と小泉(こずみ)山になったというのがある。

 これには付随する物語もあって、
 頭がギザギザの八ヶ岳を見た妹の蓼科山が大泣きをして、
 その涙を溜め込んだのが諏訪湖である。

宮崎作品で見掛ける木々が一斉に芽吹いて萌えていく様は、
別荘周辺の春の景色のイメージらしいけど、
この地域に住む者には良く理解できる。

一度、地元の富士見町が宮崎監督に講演をお願いしたら、
地元自治体が進めているゴルフ場だったかスキー場開発に関して、
無残に破壊されていく自然環境に対する憤りを話されたそうだ。
主催者は、さぞ気まずかっただろう。


当時、宮崎映画が大ヒットして、”E.T”の記録を塗り替えたのには拍手したけど、
翌年の1998年に世界中の映画に大きな影響を与えた黒澤明監督が亡くなっている。

更に、その翌年の1999年には後を追うように、
名キャメラマンの宮川一夫さんが亡くなってしまい、
21世紀を待たずに偉大な2人の映画師がこの世を去ってしまったのは大きなショックだった。

今年は黒沢監督の没後25年という節目でもあるのだ。


黒沢監督自身が画家を目指していた時もあり、
緻密な絵コンテを元にして映画を創り上げていたのは有名な話しだ。
お蔭で黒沢映画はムービーの動画から1フレームだけ取り出して、
静止画のスチル写真にしても見応えがありそうな重厚な映像が見事。

その黒沢監督がスウォッチの企画で、
映画誕生100周年記念の1995年に、
自らデザインした時計を出すというニュースをキャッチ。

かつては画家を目指し色彩にも構図にも煩くて、
重厚な映像を描いてきた監督による時計とは一体どんなものかと、
ワクワクして待ち構える事になった。


やがて発表された時計の現物を目の当たりにして、
今まで見た事も無い前衛的というか独特な目玉ウォッチを前に、
”すげえーな、これは。”と呟く事しか出来なかった。

何となく岡本太郎画伯に通じる所を感じるのは、
図抜けた天才に共通する何かかも知れない。


2010年に”一個人”が監督の生誕100周年という事で発行した雑誌があって、
その表紙にはムービーキャメラのファインダーを覗く黒沢監督がいる。

監督の特集本と目玉ウォッチを並べてみたら、
少し時計の持つ意味が分かったような気がした。

この目玉ウォッチは黒沢監督の視覚であり、
視神経の延長なのではないだろうか。


時計が発表された3年後に監督は亡くなってしまうので、
この時計が恐らく公式の黒沢監督最後の作品ではないかと思われる。
そう思うと、企画してくれたスウォッチの仕事に対しては感謝しかない。


最初、常人には及びもつかないデザインに圧倒されているだったのだけど、
今見るとシンプルに面白いし楽しいデザインの時計だ。

そうは言っても緻密なシナリオを2年掛けて書き上げ、
それを元にシナリオを描いた上で撮影に1年半ミッチリ張り付いて、
雲の形が気に入らず役者を常に現場でスタンバイさせたまま何日も待つという、
あらゆる妥協を一切拒否してきた黒沢監督である。

やはり本質というか内面に潜んでいる狂気と呼んでも良い位の、
監督が持つ底なしのエネルギーを直に見ているようでクラクラしてくる。





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最終更新日  2023.12.02 19:30:10
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