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投資の余白に。。。

投資の余白に。。。

June 9, 2009
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カテゴリ:自叙伝
旧東ドイツには3つ、優れたオーケストラがある。シュターツカペレ・ドレスデン、シュターツカペレ・ベルリン、ライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団である。ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団というのもあって悪くなかった気がするが、この3つは人によっては世界のトップ10に1つ、あるいは2つ、あるいは3つ入れるだろう。

ベルリン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ベルリン)の音楽監督だったオトマール・スイトナーは、単独でもNHK交響楽団の客演などで何度も来日しているから日本の音楽ファンにはおなじみの指揮者だった。

しかし札幌へは1977年と1984年の二回来ただけだった。1977年のときは2日公演を行い、一日目はバッハなどの小編成の作品をやり、二日目はモーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」をやった。

1984年のときはモーツァルトやベートーヴェンの交響曲を並べたオーソドクスなプログラムだったと思う。

ところで、外国のオーケストラの来日が常態化したのはさほど昔ではない。昭和30年代は年に一つか二つで、昭和40年代、すなわち1965年以降になってから急に増えた。

しかし、札幌のような地方都市に来る外国のオーケストラは稀だった。あんなに何度も来日したノイマン=チェコ・フィルも、とうとう札幌には一度も来なかった。1972年に来たオーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団も1978年の時には来なかったので、とうとうオーマンディは聴き損ねた。

海を越えて来る必要があり、東北止まりのオーケストラが多かったのである。

だから、札幌に来るオーケストラはなるべく逃さないようにしていた。1970年代の後半は学生でお金にゆとりはなかったが、ヴィトルド・ロヴィツキ指揮ワルシャワ・フィル、小澤征爾指揮サンフランシスコ交響楽団、ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団などには万難を排して出かけた。そしてそれは大金を払うに値するじゅうぶんに貴重な経験だった。

しかし、それではなぜスイトナーを逃したのか。

1984年のときは、カルト宗教団体との熾烈な闘いのちょうどピークだった。洗脳された信者を家族の元に奪還するのに、どうしても現場指揮に行かなければならなかったしそこが天王山だった。

しかし1977年のときは、二日共行こうと思えば行けた。しかしこの時行かなかったのは、そのころ入っていたブラスバンドの演奏会があり、連日の練習に追われていたためだ。

アマチュアの音楽団体は、週に1度練習しているところが多い。そして年に1度か2度の定期演奏会が近づくと、集中して練習する。たいてい、本番の前一週間は毎日のように集まる。

それでも別に義務ではないから、さぼろうと思えばできた。社会人が主である以上、すべての団員がすべての練習に参加できるわけもなく、直前でも来られない人もいる。

しかし首席奏者がさぼるわけにはいかない。この団体はブラスバンドには珍しく、クラシックの曲を主体としていて、バッハやワーグナーをやっていたし、プッチーニのオペラアリアなんかもやっていた。重要なソロもあるので、なおさら休むわけにはいかなかった。

それ以来、こうした活動に参加するのはやめることにした。このバンドともおさらばしたし、最近、プロ級の奏者を集めて作るというブラスバンドに誘われたのも断った。

人生は時間でできている。凡庸な指導者の下で「演奏」して消耗している時間、どこかですばらしいコンサートが開かれているかも知れない。いや開かれている。だから、それを「聴く」妨げになるようなことには一切、関わらないと決めたのだ。

スイトナーは地味な指揮者なので録音ではそのよさはわかりにくいが、特にモーツァルトはすばらしい。オーケストラ・ビルダーとしても優れていたのではと思う。数年前、バレンボイムの指揮でシュターツカペレ・ベルリンを初めて聴くことができたが、あの柔らかく美しい弦の響きは、スイトナーの長年の薫陶による果実だろうと思う。

スイトナーは1922年生まれで、死んだという話は聞かないからまだ生きているのだろう。何年か前、インタビュー番組が作られたことがある。病を得て引退している彼を支えているのは長年連れ添っている奥さんと、子どもまで作ったもうひとりの女性と、その子どもの3人で、この4人が連れ立って歩いている光景は感動的だった。

長い曲は無理でもモーツァルトの序曲一曲くらいは指揮できないだろうか。もしスイトナーが指揮するならドイツのいなかでもどこでも行くつもりだ。





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最終更新日  June 9, 2009 01:04:04 PM
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