表題作は『王子と乞食』の後日譚で、白雪姫と裸の王様と赤頭巾とシンデレラとハンメルンの笛吹きとロビン・フッドとピーター・パンがごっちゃになったスラプスティック。
著者はスラプスティックと「ミイラ取りがミイラになった」お話が得意で、「死体ばんざい」「流行の鞄」「エスカレーション」は前者系、「ミドンさん」「新しい政策」「善良な市民同盟」「魅惑の城」は後者系である。「ミドンさん」など、安部公房なら前衛小説にするだろうが、星新一だと軽文学になる好例だろう。
「そして、だれも…」と「収容」は宇宙SFコント。どちらもオチが暗くないのがいい。「ものぐさ太郎」は現代のデイ・トレーダーを言い当てて予言的だし、「合法」も臓器移植問題の解決を言い得て妙だ。
【新品】[本] なりそこない王子 / 星新一