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カテゴリ:星新一
『殿さまの日』に続く星新一流時代劇中短編集第2弾。
表題作は豊臣秀頼の一生を描いたもので、どちらかというと太宰治がよく似合うモチーフのところを、例によってスマートにそつなく仕上げている職人芸。 これと比べたくなるのが「はんぱもの維新」。時代設定こそ江戸時代の初めと終わりと対照的であるが、幕府の要人小栗上野介忠順は行動的でエネルギッシュな人物である。それでも時代の流れには逆らえず、はんぱものの下級武士のために滅びてしまった。それを象徴するかのようにお「うう」しか言えない五助が、新しくできた皇居前で死んでいく様はまさに「はんぱものの死」である。『リア王』の道化にあたるのが五助だとすれば、小栗もまた… 「春風のあげく」は江戸時代版『源氏物語』いや『偽紫田舎源氏』というべきか。コミカルな結末が因果応報的で笑える。 「正雪と弟子」は『出家とその弟子』のパロディのよう。稀代の詐欺師として扱われる由井正雪の心境や如何。草葉の陰から声を拾ってみたいものだ。 「すずしい夏」は江戸時代の冷夏→凶作→飢饉の悪循環の中で、侍が領民ともどもいかに生きながらえていくかを克明につづったフィクション。最後の結末がやはり笑える。 角川文庫版↓ 城のなかの人改版 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.11.01 19:56:34
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