|
カテゴリ:随筆・評論・エッセイ
『父・漱石とその周辺』の「それから」です。前回は〈近代日本文学〉の範疇に入れましたが、今回は随筆扱いにします。「父と母のいる風景」といってもそれにふさわしいものはほとんどなく、「野戦病院」のように著者の個人的体験記のようなものが入っているからです。
個人的に興味深いのは、早稲田界隈に関する箇所と、漱石が朝日新聞への「こころ」の連載終了後、次は誰に書いてもらおうかと当時の記者並みに苦心惨憺したという話。当初は志賀直哉に白羽の矢を立てたのですがうまくいかず、鈴木三重吉、武者小路実篤、小川未明、谷崎潤一郎など人選がまとまったのですが、武者小路以外は誰も締め切りを守りません。心痛のあまり持病が酷くなったのではないかと息子さんは書いておられますが、当時の文士気質というのが眼前に彷彿とせられるようで、文豪には気の毒ですが読んでいてにやにやさせられる章です。その名も父の「心」と「暗夜行路」。 他にも芥川龍之介、寺田寅彦、菊池寛、野上弥生子などに関する逸話のあって興味深い本です。 [単行本]【中古】【メール便可】父と母のいる風景 続父・漱石とその周辺 / 夏目伸六 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.11.02 20:51:02
コメント(0) | コメントを書く
[随筆・評論・エッセイ] カテゴリの最新記事
|