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長編時代小説コーナ

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Jan 8, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 その頃、高島藩の奥の書院で諏訪忠政と隼人正が、蚊遣(かやり)の煙を

浴びながら、密談を交わしていた。二人とも白練りの衣装姿である。

「そちの兄、主水殿の申されたとおりになったの」

「まさかとは思っておりましたが、襲ってきましたな」

 隼人正が剽悍な眼差しをしている。再び、蝉時雨が湧きだした。

「これからいかがいたす?」  

「絵図は、この上屋敷にございますのか?」

「ある、用心のために奥御殿に隠してある」  

 忠政が低い声で告げた。

「危険ですな。万一の場合、奥方さまにも危難がかかりましょうな」

 隼人正が憂い顔で主人の顔をみつめた。

「ご免」  声とともに岩村弦四郎が厳しい顔つきで現われた。

「死骸から、身元の割れるものは出たかの」

 隼人正の問いに、弦四郎が首をふった。

「怪しい物は何も持ってはおりませぬが、これが懐中にござった」

 岩村弦四郎が、二人の前に小銭を差し出した。

「六文銭ではないか」  

 嘉納隼人正の眼が光った。

「殿、信州上田の地には真田忍びがおると聞いております」

「隼人正、随分と昔の話をいたすな、神君、家康公が真田を葬って三百年も

経っておる。今頃、真田忍者なんぞが存在する訳がないは」

 忠政が端正な顔つきで断じた。

「風聞なれども確たる証拠はございませぬ、これは拙者が預かります」

 隼人正が疑惑の眼の色をみせ、懐紙につつみ、懐に仕舞った。

「殿にご家老、すでに八つ半(午前三時)過ぎにござる。お引取り下され」

 岩村弦四郎が就寝するように促した。

「拙者が奥御殿入口までお供つかまつります」

 隼人正が愛刀を携え、忠政を先導し中奥から廊下に向かった。二人の足音が

途絶え、弦四郎は暫く佇み、何事もないと確認し己の部屋に引き上げた。

 薄暗い廊下を進みながら、

「絵図の件はお暇なおりに相談いたしましょう」

「余も、いささか心配となった」 

 忠政にも心配の種があるようだ。

「誰じゃ」

 隼人正が低い声で鋭く誰何し、主人忠政の身を庇(かば)った。

 仄暗い廊下の真ん中に人影がうずくまり、不気味な殺気が襲いかかってきた。

「仲間の仇を討つ」 

 錏頭巾の男がくぐもった声を発した。

「矢張り曲者は二人であったか」  

 隼人正が忠政を庇って身構えた。

「おめえさんの腕は、先刻、見せてもらった」

 声が途絶えるや猛然と突進し、躯を跳躍させ凄まじい刃風が襲いかかった。

「ご免」  隼人正が忠政の躯を壁ぎわに押し付け、大刀を抜き放った。

「キーン」  鋼と鋼が交差し鋭い金属音を響かせ、火花が散った。

 錏頭巾の曲者が素早く体勢を立て直し、身を低め大刀を突き出し構えを変化

させ、そのままの体勢で接近してくる。

「その方の名前を聞こうか」  

 隼人正が余裕の声を放った。

「猿(ましら)の吉兵衛」 

 低い声で名乗り、再び両人が駆けちがい大刀が白い光芒を放って交差した。

隼人正の胸元を吉兵衛の刃がかすり、吉兵衛の錏頭巾が鉢金の真ん中から

両断された。

 血飛沫がほとばしり猿の吉兵衛の躯が音を響かせ、廊下に転がった。

「ふーっ」  大きく息を吐き、隼人正が血濡れた大刀を懐紙で拭った。

「これで屋敷に忍び込んだ曲者は退治いたしました」

 隼人正が、剽悍な眼差しで絶息した猿の吉兵衛を眺めおろしている。

「この事を予測いたし、余の警護をいたしたのか?」

「確かに侵入者は二人と感じておりました、心配した事が起こりましたが、もう、

安心にございます」 

 翌朝、上屋敷は騒然となった。

「ご家老は藩邸に潜む忍び者が、二人と看破(かんぱ)されておられたそうじゃ」

 藩士たちが、嘉納隼人正の凄腕に驚嘆していた。

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Last updated  Jan 8, 2008 06:03:32 PM
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