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Jan 28, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 残暑の名残りを吹き払うかのように、川風が気持ちよく流れ、川岸に植え

られた柳が揺れている。そんななかを菅笠を被った武士が、風呂敷包みを

片手にゆったりと歩んできた。お蘭が玄関先に水を撒いている。

「相変わらず艶やかじゃな」  突然、背後から声をかけられ、お蘭がふり向い

た。武士は立ち止まり菅笠を脱いだ、嘉納家の用人の根岸一馬であった。  

「根岸さま、お久しゅうございます」  お蘭が、慌てて挨拶を返している。

「お蘭、堅固でなによりじゃ。主人より届け物を持参いたした」

 根岸一馬が柔和な笑みを浮かべ、風呂敷包みを手渡した。

「旦那も居られます、お上がり下さいな」

「そうもしておれぬ、くれぐれも道中に気をつけられるよう、主人が申されて

おったと伝いてもらいたい」

 根岸一馬はそれだけ云うと、もと来た道を去っていった。

「旦那、嘉納の殿さまより、品物が届きましたよ」

 お蘭が興奮で顔を染めている。

「包みを開けてみよ」  求馬が醒めた声で命じた。

 お蘭が風呂敷包みを解いた、なかに三人の道中手形と油紙に包まれた封書

が二通入っていた。  「お蘭、封書をみせよ」  「はいな」

 求馬が封書を手にし、軽く押し戴き油紙から書状を取り出した。

「この者共、大目付発行の道中手形を持参せし故、一切の取調べなく通行さ

せるべきこと。  大目付、嘉納主水」

「この者共、我が藩の最寄の者にて宿泊の便益を図ること。高島藩江戸家老、

嘉納隼人正」   二通とも花押が押されていた。

「お蘭、これを見よ、これさえあれば道中難儀せずに旅ができる」

「有り難いことですね」   お蘭が封書を丁寧にもとにもどした。

 奥の部屋に戻った求馬は、道中の思案を巡らしいる。この頃の旅は一日の

行程九里強と云われていた。勿論、東海道を利用した成年男子の話であるが、

甲州道中となると話が違ってくる。

 全行程五十五里(二百二十キロ)ではあるが、難所で知られる小仏峠や笹子峠

を越えねばならない。さらに、六紋銭の忍び者の襲撃を想定すると一日の行程

は、五、六里が妥当に思われる。

 求馬は思案しながら、胸騒ぎに襲われていた。三人のうち一人でも怪我なぞ

したら、動けない情況に陥ってしまう。

 今回、お蘭を連れてゆく意味は、出来るだけ派手な旅をして、敵を引きつける

思惑があった。それが逆作用をしたら、随分と危険な旅になる。

           (五章)

 水野忠邦の屋敷の奥座敷で、三名の男が集って密談を交わしている。

 上座に水野忠邦が脇息にもたれ、下座の右手に加地三右衛門が、左手には

山彦の彦兵衛が座っていた。いずれも険しい顔つきを見せている。

「三右衛門、今の話は間違いあるまいな?」  水野忠邦が再度糺した。

「まず間違いなきところ、堀井讃岐守の事件で活躍した、伊庭求馬なる元公儀

隠密が我等の敵にございます」  加地三右衛門が断言した。

「今や公儀でも、伝説的な隠密として知られた男じゃ」

「我等、六紋銭にも聞こえておりまする。逆飛燕流なる秘剣の遣い手として恐れ

られておりまする」

「厄介な男を敵に廻したの」  水野忠邦が嘆息した。

「奴の配下として動いた男が、飛礫の猪の吉と申す。先日の飛礫の威力からし

て間違いはございませんな」  加地三右衛門が断じた。

「彦兵衛っ、そちの存念が聞きたい」

「我等は貴方さまを通じて、世の中に出ることが夢にございます。このままおめ

おめと尻尾を巻いて退散とは参りませぬ」

 山彦の彦兵衛が不敵な口調で言い切った。

「いかがいたす?」  水野忠邦が鋭く訊ねた。

「我等にも、敵の情報は入っておりまする。大目付の嘉納主水と高島藩、江戸

家老の嘉納隼人正が兄弟と判明いたしました」

「何とー、それは真か?」  水野忠邦と加地三右衛門が顔を見つめあった。

「嘉納主水は伊庭求馬と接点がございます。堀井讃岐守の事件では伊庭と共

に、讃岐守に敵対いたした事実を、我等は探りだしました」

「大目付の嘉納主水が、一枚咬んでおったか」

 水野忠邦が、腕組みをして目を閉じた。加地三右衛門が細い眼で主人を

見つめている、行灯の芯が微かな音を響かせている。

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Last updated  Jan 30, 2008 09:00:59 AM
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