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Jan 29, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「絵図は間違いなく、伊庭求馬なる男が持っておるな」

 水野忠邦が目を見開き加地三右衛門を見つめた。

「奴は、絵図をどのような目的で使いますかな」  「判らぬ」

「高島藩改易の口実が、奴のために不可能となりましたな」

「大目付の嘉納主水に紛失届けが提出されては、わしの出番はない」

 水野忠邦が、悔しそうに顔を歪めた。

「ご前、伊庭求馬を見知っておる者はございませぬか?」

 山彦の彦兵衛が訊ねた。

「残念じゃが、堀井讃岐守の事件で公儀隠密は奴のために全て斃された」

 水野忠邦が苦い嗤いを浮かべた。

「このままでは、阿部政弘が上様の信任を得て、ご前の地位が危うくなります」

 加地三右衛門が、上目遣いで忠邦を見あげた。

「そのような事は承知じゃ、それ故に絵図が欲しいのじゃ」

「我等、六紋銭が阿部を暗殺いたしましょうか」

「彦兵衛、今は不味い。お真紀の方を殺めたばかりじゃ、また阿部政弘が暗殺

されれば、わしの差し金と疑われよう」

「申しあげます」  突然、天井から声がした。  

「何者じゃ」  加地三右衛門が大刀を引き寄せた。

 ふわりと音もなく座敷の隅に男が降り立った。  「闘牙の三十郎か」

「はっ」  闘牙の三十郎が不敵な顔をみせた。

「なんじゃ」  水野忠邦が鋭い声をあげた。

「江戸の町を混乱に陥らせましょうか」

「そちは何を遣ろうと考えておる」

「水野さま、貴方さまの改革は町人共にも評判が悪うございますな。その原因は

南町奉行の、鳥居甲斐守忠燿(ただてる)さま」

 闘牙の三十郎が不敵な言葉を吐いた。事実、水野忠邦は改革に事よせ、

町人の生活まで制限を加えたのだ。高価な菓子、料理、呉服、女浄瑠璃、芝居

など細かい禁止事項の指示を与えていた。それと逆に旗本、御家人の借金の

棒引き、商人には多額の増税を課したのだ。その手先となり、町人を締め上げ

たのが、妖怪と異名とる鳥居甲斐守であった。彼は丹念に調査をし、違反者を

廃業などの処分にした。町人の不満は頂点に達していたのだ。

「無礼であろう」  加地三右衛門が怒声をあげた。

「待て、三十郎、そちの考えを述べてみよ」  水野が渋い顔つきで訊ねた。

「我等、六紋銭は強盗の急ぎ働きに似せた荒事や、火付けなどを遣りまする」

 闘牙の三十郎は、大店のみを狙い泥棒仕事を遣ろうと考えた。

 この取締にあたるのは、町人達の管轄機関としての町奉行所が当たる事に

なる。当然に被害者の豪奢な生活が、町人たちに知れる事になる。

そうなれば水野忠邦の失政の責任は、当座は逃れることが出来る。その間に

絵図を持つ、伊庭求馬の消息を探ろうとする計画であった。

「ご前、面白い計画ですな」  加地三右衛門が細い眼を瞬かせている。

「三十郎、奪った金子はいかがいたす?」

「半分は我等が頂戴いたします、これからの軍資金として」

 代って山彦の彦兵衛が答えた。

「彦兵衛、あまり欲張るでない。南町の動きは三右衛門より知らせる」

「ご前、今月は南町の月番にございますな、うんと稼いで差し上げます」

 山彦の彦兵衛と闘牙の三十郎が、顔を見合わせ薄い嗤いを浮かべた。

「早速、用意をいたします。支度の整い次第江戸を恐怖におとしめましょう」

「二人に申しておく、忍び装束はならぬ。幕府の仕置きに不満なる者の仕業に

装うのじゃ、くれぐれも、わしとの接点を悟られるな」

「はっ」  二人が屋根裏から素早く姿を消し去った。

 水野忠邦が老獪な相貌をみせ加地三右衛門に語りかけた。

「わしは、今の計画には反対じゃ、江戸の騒動は改革の失敗を印象づける。

じゃが、裏で蠢く奴等の動きが知りたい、その意味では六紋銭の働きに期待

しておる。手綱を緩めるな、早う、伊庭求馬の所在を探りだすのじゃ」

「はっ」  加地三右衛門も忍び足で部屋を辞していった。

 翌日から江戸の町は大混乱をきたした。丑の刻(深夜二時)伝馬町の木綿

問屋の宮島屋が、何者とも知れない一団に襲われ、店の主人の五兵衛と店子

が惨殺される事件が起こった。金蔵が破られ、女子衆はすべて犯され斬り殺さ

れていた。しかも同時刻に江戸の目抜き通り、日本橋の呉服問屋の谷屋が同

じ手口で襲われた。

 江戸の町は恐怖に陥った。町奉行の与力、同心が総動員され、木戸が閉めら

れ厳重な警戒網が敷かれたが、それを嘲笑うかのように、浅草の下町で火付け

が起こった。直ちに町火消が駆けつけ、消火につとめ大事には至らなかったが

江戸の町は厳戒体勢をとり、火付盗賊改方も動員される騒ぎとなった。

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Last updated  Jan 30, 2008 09:00:10 AM
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