1178212 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

向いている向いてな… New! 韓国の達人!さん

街道のハナミズキ New! Pearunさん

^-^◆ 思わず にっ … New! 和活喜さん

プロ野球〜ソフトバ… New! クラッチハニーさん

いさまろの【1億円稼… Isamaroさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Feb 1, 2008
XML
カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 励みになります、応援宜しくお願いいたします。

「白状すれば家族が殺される」  朝霧の小兵が恐怖の声をあげた。

「なにっ」  求馬と猪の吉が顔を見つめあった。

「お願えだ、一思いに殺し大川に死骸を投げ捨ててくれ」  小兵が哀願した。

「里の家族が殺されるてえのは、いってえどうゆう事だ」

 猪の吉が、不審そうに聞いた。

「裏切ったとお頭が判断されたら、わしの家族は村八分にされてしまう」

「駒方町の質屋では、おめえの仲間の死骸が転がっているが、おめえの死骸

がないとなると仲間はどう思う」

「だから、大川に投げ捨ててくれと頼んでいるんだ」

「そちの死骸が発見されれば、上田の家族は助かるのか?」

 求馬が乾いた声で応じ、朝霧の小兵の顔色が変わった。

「おめえさん達は何者だ、なんで六紋銭の秘密を知っている」

「取引といこうか、そちを放してやる。そのかわり隠れ家と人数を教えることだ」

「出来ねえ」  小兵がわめき声で応じた。

「ならば家族は助からぬな、猪の吉、こやつを縛りあげよ」

「へい」  猪の吉が素早い手つきで朝霧の小兵の躯に手をかけた。

「糞っ」 小兵が獰猛な顔つきをみせ、舌を咬み切ろうとした。

「くっー」  朝霧の小兵が苦悶の声をあげた。

 求馬の腰から刃渡り二尺四寸の村正が迸り、小兵の左手首を刎ね斬った。

 血潮を引き手首が床に転がった。

「先刻、申したとおり、いらざる考えを起こすと今度は右足を斬り捨てる。

出血で死ぬまでじゃな、死骸は仲間に見つからぬように始末してやる」

 求馬が冷酷な言葉を浴びせかけた。

 左手首を押さえた、朝霧の小兵の躯から力が失せている。

「おめえさんが、元公儀の隠密だな」  「そうじゃ」

「なにもかも知ってる事は白状するぜ」  朝霧の小兵が観念した。

「聞こうか」  「その前に約束してくれ、話したら自由にすると」

「良かろう」  求馬が小兵の前に腰を据え、猪の吉が辺りを警戒している。

「隠れ家は御府内の外れの本所の荒れ寺だ、仲間は最初は三十名ほど居た

が、今は半数に減っている。おめえさん達に殺られたお蔭だ」

「大川のどちら側だ?」  代って猪の吉が訊ねた。  「東岸だ」

 観念した朝霧の小兵が、すらすらと喋り終わった。

「猪の吉、そやつの傷の手当をしてつかわせ、戻るにしても逃げるにしても

不自由であろう」  求馬が腰の印籠を猪の吉に放った。

 猪の吉が手拭を裂き血止めを施した。

「すまねえ」  朝霧の小兵が礼を述べた。

「おめえさん、これからどうするね?」  猪の吉が心配顔で訊ねた。

「判らねえ、この躯だ。隠れ家に戻れば、おめえさん達が襲ってくるだろう」

「物分りのいいことだ」  求馬が乾いた声をあげた。

「この躯では忍びのお勤めは出来ねえ」  小兵が力なく呟いた。

 求馬が痩身を、うっそりと立ち上げた。

「小兵、里の家族のもとに帰れ、その躯なら誰も疑わぬだろう」

 朝霧の小兵が、求馬の白面の相貌を見つめた。

 求馬が財布を取り出し、二枚の小判を小兵の足元に投げ出した。

「これは?」  「当座の生活の足しにはなろう」

 一声残し、求馬は廃寺の本堂から痩身を消し去った。

 その日の夕刻、江戸の町は凄まじい驟雨に襲われた。雷鳴が轟き土砂降りの

雨が、半刻ほど続きひたっと雨足が途絶えた。

 その雨のお蔭で江戸の町は暑気が去り、涼風が吹きぬけている。

 一艘の猪牙船が日本橋河岸よりひっそりと、大川に櫓を音を響かせ下って

いる。艫(とも)に浪人が座し煙草を燻らしている。舟は小名木川に入りゆっくりと

東に向かった。本所、深川方面である。

 櫓を操るのは飛礫の猪の吉で、艫に座しているのが伊庭求馬であった。

「旦那、本所は目と鼻の先ですぜ」

 猪の吉が艫の求馬に声を懸けた、川風が心なしか冷たく感じられる。

「猪の吉、岸に沿って荒れ寺を探ってくれ」  「判りやした」

 猪の吉が軽々と櫓を操り、岸辺に猪牙舟を流している。

 西側を展望すると、明りが点々と点り、まだ賑わいをみせている時刻である。

「こうして眺めやすと江戸の町は広うござんすね」

 猪の吉が艫にいる求馬に語りかけた。

「どうです、この辺りの葦の多さは、まるで天国と地獄の差ですな」

 時刻は五つ(午後八時)頃と思われるが、人影ひとつ見えない。

「旦那、あの寺が奴等の巣ですな」

 猪の吉が指を差した。葦原の彼方に荒れ寺が、黒々と横たわっている。

「舟を岸に着けてくれ」

 舟を岸辺に乗り上げ、猪の吉が近くの潅木に猪牙船を繋いだ。

「旦那、満潮時刻ですよ」  「そうか、帰りが楽じゃな」

 求馬が煙草入れから煙管を出して一服燻らしている。猪の吉も真似て紫煙を

吐き出し、鋭く荒れ寺を見つめた。所々から微かな明りが漏れている。

「猪の吉、押し込みには早すぎる、酒でも飲もう」

 求馬が用意してきた瓢を投げた。  「こいつは有り難い」

 二人は舳先と艫にわかれ、瓢の酒を楽しんでいる。

血風甲州路(1)へ




 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Feb 1, 2008 12:18:28 PM
コメント(8) | コメントを書く
[伊庭求馬孤影剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.