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Jan 31, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「番屋には引き渡させたねえが、誰の命令か白状しねえ。ついでに隠れ家もな」

「むっ」  「おっと」  猪の吉がすばやく男の顎関節を外した。

 舌を咬み切ろうとしたが叶わず、凶暴な眼差しをみせる男の首筋に手刀を

落とし気絶させた。猪の吉は男の躯を巧妙に縛りあげ、剥ぎ取った盗人被りの

布切れを持って、散らばった飛礫を拾い集め懐中にしまった。

「旦那に格好な拾い物が出来たな」と独り言を呟き、男を担いで闇に消えた。


「ご免なすって」  表から男の声が聞こえ、お蘭の艶姿が玄関に現れた。

 天秤棒に空の桶を担いだ男が佇んでいた、朝の商いを終えた振売りの男の

ようだ。   「何か用かえ」  お蘭が不思議そうに訊ねた。

「師匠ですかえ、これを猪の吉の旦那に頼まれ持ってまいりやした」

「有難うさん」  お蘭が小銭を渡し書状を受け取った。

「綺麗な姐さんだね」  お世辞の言葉を残し振売りが駆け去った。

「旦那、猪さんからの書状ですよ」

 求馬が書状を読み下し、佩刀の村正を手にし立ち上がった。

「出かける」  「遅くなりますか?」   「判らぬ」

 求馬は雪駄の音を響かせ船着場に向かい、猪牙舟の胴に腰を据えた。

 猪牙舟が求馬の痩身をのせ神田川を横切って直ぐに大川に出た。舟は

ぐんぐん船足を速め、戸田の船着場に着いた。

 求馬は、いつもの黒羽二重の着流しで大川の土手道を辿っている。

 そこから見える大川は、長閑な風景が広がっていた。高瀬舟が荷物を

満載し、順風を受けた帆が大きく膨らんでいる。

 季節は秋の気配を漂わせ、芒の穂にアキアカネが群り、鰯雲が空を覆っ

ている。求馬は迷う事もなく猪の吉の待つ廃寺に足を運んだ。

「旦那っ、こんな場所にお呼びいたして申し訳ありやせん」

 小道から猪の吉が顔をだして詫びた。

「無茶をいたしたな」  「あまりに非道でつい手がでやした」

「お主の腕は信じておるが、近々に江戸を離れる身じゃ」

 求馬が猪の吉をみつめ、「そこか?」 と顎をしゃくった。

「へい、念入りに縛っておきやした」

「ご苦労じゃ」  労いの言葉をかけ痩身を廃寺に踏み入れた。

 無人の境内は荒れ果て本堂の奥に、坊主頭の男が縛られ転がっている。

 求馬が男に近寄り、いきなり蹴飛ばした。男の躯が床を転がった。

「猪の吉、縄を解いてやれ」

「へい」  猪の吉が乱暴な手つきで縄を解いた。

「押し入り強盗で女まで殺めた人非人ですぜ」  「顎を外したな」

「へい、舌を咬み切る気配をみせやしたもので」

 求馬が頬に手をかけ顎の骨をもどした。

「舌を咬み切る莫迦は止すことじゃ、今度は両腕を斬り落す」

 乾いた声で告げ、痩身から凄まじい殺気を湧きあがらせた。

 坊主頭の男の肌が粟立った、このような恐怖は初めてであった。

「そちは影の軍団と呼ばれる、六紋銭の忍び者じゃな」

「殺せ」  男が喚いた途端に、求馬の愛刀村正が鞘奔り白い光芒を放ち

男の衣装が両断された。

「そちの首なぞ刎ねるはいと易い、じゃが今は殺さぬ。六紋銭を持参いたして

おるな」  「・・・・」  六紋銭の男が蒼白となった。

「出すのじゃ」  「おい、つんぼになったのかえ」  猪の吉までが凄んだ。

 男が緩慢な動作で懐中から六紋銭を取り出した。

「矢張り、持っておったか」  求馬が歯をあてがった。

「これは」  猪の吉が驚いて眼を剥いた。

「そちの名は朝霧の小兵か、何ゆえに夜毎の狼藉を行う?」

「元公儀隠密を炙りだすためと聞いておる」  

「その隠密を探り出す目的はなんじゃ」  求馬の双眸が強まっている。

「わしら下忍には詳しい話は聞いてはいないが、なんでも大層な絵図をその男

が、隠し持っていると云うことじゃ。わし等が江戸の町を荒らし廻れば、そいつ

の背後の黒幕が判ると、お頭が云われた」

 朝霧の小兵が、諦めてぽつりぽつりと語りはじめた。

「そちの頭の名は、山彦の彦兵衛じゃな、老中首座の水野忠邦との繋がりを知

っておるか?」  「知らぬ」  朝霧の小兵に恐怖の色がはかれている。

 何故、この浪人はお頭の名を知っているのか、それは下忍の性(さが)であっ

た。それ故に、一層、恐怖が募っていたのだ。

「ぴゅー」  空気を裂く音が響き、小兵の耳元を掠めて飛礫が壁に突き刺さっ

た、猪の吉の素早い脅しであった。

「隠さずに全てを話すことじゃ」  求馬が乾いた声で小兵を見つめた。

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Last updated  Jan 31, 2008 11:47:08 AM
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