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Feb 3, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「むっー」  気合も噴かず闘牙の三十郎が、大きく跳躍し無反りの豪刀が

唸りをたて、求馬の右肩に振り下ろされた。

 上段からの攻撃を防ぐには余程の力量がいる、疾風のように痩身が三十郎

の躯の下を駆けぬけ、脇差を抜き放った求馬が股間を突き上げた。

 闘牙の三十郎が左の指輪で刃をはねのけた時、二人の位置が反対に変わ

っていた。求馬は完全に敵に背を向ける体勢となった。

 背後の数名の六紋銭がじりっと接近し、緊迫した殺気が本堂に充満した。

 闘牙の三十郎が、そのままの間合いで左に廻りはじめた。

 瞬間、求馬が躯を反転させ、背後の敵に突進し左右の敵を大小で血噴かせ、

前面に立ち塞がる敵の頭上を飛び越えた。闘牙の三十郎の無反りの豪刀が

襲いかかった時には、すでに求馬は敵の背後に位置を変えていた。

「ざくっ」 と肉を絶つ音が響き三十郎の豪刀が、味方の頭蓋を断ち割った。

「しまった」 三十郎が己の豪刀で味方を斃し思わず声をあげた。

 彼等は求馬が、かって忍び者であったことを失念していたのだ。

 その動揺を見逃さず求馬が本堂を駆けめぐり、またもや村正が数名の新たな

血潮を存分に吸っていた。

「おのれ」  闘牙の三十郎が怒気をあらわした。

 ぴゆっと空気を裂く音に気づき三十郎が身を躱した。飛翔音と供に飛礫が

三十郎の躯を掠め、前面にいた味方の六紋銭の眉間を砕いた。

「誰じゃ」  山彦の彦兵衛が身を低め声を荒げた。

「飛礫の猪の吉と云う、けちな男だ」  屋外の闇から声があがった。

「貴様か、駿河台に潜みおった男は」  闘牙の三十郎が吠えた。

 猪の吉による思いもせぬ攻撃で敵の態勢が崩れ、求馬が片手薙ぎで敵の

胴を両断した。その者が地に這わぬうちに、あらたな一颯で敵を血噴かせ

求馬が、本堂から屋外の闇に逃れ葦原に身を隠した。

「闘牙の三十郎、今宵の勝負はあずける」

 冴えざえとした求馬の声が屋外から聞こえてきた。

「わしが絵図を持っておる、無頼者のわしが金塊を我が手に握る積りじゃ。

そのように飼い主に伝えよ」  声が途絶えた。

 荒れ寺の本堂の内部は、惨憺(さんたん)たる有様であった、江戸の六紋銭は

ほぼ、全滅の憂き目にあった。それも己らの隠れ家で被った被害である。

 山彦の彦兵衛と闘牙の三十郎は、地団駄を踏む思いを味わっていた。

「旦那、やりやしたね」  猪の吉が櫓を操りながらはしゃいでいる。

「恐ろしい遣い手が居ったものじゃ」  求馬がぼそりと呟いていた。

 二人の乗った猪牙舟は小名木川から抜け、夜半の大川を静かに横切ってい

た。

          (六章)

 水野忠邦は書院で常のごとく、単衣に袖無しの羽織り姿で書見をしていた。

「ご前、彦兵衛がお目どおりを願いでております」

 低い加地三右衛門の声がした。

「この刻限じゃ、奴めなにか失敗(しくじり)をやったな」

「お会いになられまするか?」  「会わずばなるまい」

 加地三右衛門が忍び足で下がって行った。

(荒事では、何の解決にもならぬな)と、忠邦が胸裡に呟き座敷に向かった。

 山彦の彦兵衛が、茶道の宗匠姿で控えていた。

「この夜更けに何事じゃ」  「一切の釈明は控えさせて頂きます」

「妙なことを申すな」  傍らの加地三右衛門が声を荒げた。

「お怒りを承知で申しあげます、今宵で江戸の六紋銭は壊滅いたしました」

「なんと」  二人が絶句し、彦兵衛の顔を見つめた。

 彦兵衛が平伏したまま、今宵の出来事を告げた。

「元公儀隠密の伊庭求馬が、そち達の隠れ家を襲ったと申すか?」

「御意に」  「噂どおりの凄腕じゃな」  水野忠邦が呟いた。

「猪の吉と名乗る町人を伴い、突然に襲われ闘牙の三十郎と数名が残る始末に

ございます」  山彦の彦兵衛が顔色も変えずに述べ終えた。

「それで尻尾を巻くと申すか?」  水野忠邦が怒りを鎮め訊ねた。

「復讐はおいおいと行いますが、伊庭が立ち去る際の言葉が気になりまする」

「何をほざきおった」  かわって加地三右衛門が糺した。

「金塊は己が手に入れると申して去りました。これには意味があると推測いたし

ます」  彦兵衛の言葉に水野忠邦と、加地三右衛門が考えこんだ。

「伊庭の言葉は、金塊の独り占めを暗示いたします」

「伊庭求馬は、諏訪湖に行くか?」

「絵図を持っての道中かと推測いたします。ならば六紋銭の総力をあげて伊庭を

葬り、絵図をご前さまに差し上げまする」

 水野忠邦と加地三右衛門の二人が、宗匠姿の彦兵衛を凝視した。

 山彦の彦兵衛が自信のある相貌を見せていた。

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Last updated  Feb 4, 2008 08:59:50 AM
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