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Feb 4, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 水野忠邦が、その姿を見ながら口を開いた、 「荒事は失敗じやったな」

「功罪、あいなかばかと存知ます」  彦兵衛の顔に嗤いがわいた。

「そちは、まだ強がりを申すか?」

「昨夜、浅草駒形町の質屋を襲わせた一団が、飛礫の猪の吉により始末され、

そこで下忍が捕らえられたようにございます。その者が隠れ家を白状したものと

思われます」  その言葉を発した時、彦兵衛の顔つきが険しくなった。

「それで伊庭が襲ったと申すか?」

「はい、荒事ゆえに元公儀の凄腕が我等の前に姿を現したのです。これは願っ

てもないことに御座います。さらに伊庭が甲州道中を利用し、諏訪に向かうな

らば、我等の思うつぼ」  彦兵衛の言葉に水野忠邦が反応した。

「三右衛門、そちの考えはどうじゃ」

「伊庭求馬、まことに甲州道中に向かいまするかな」

 策士の加地三右衛門には、まだ迷いがあった。九分九厘は間違いなく諏訪に

向かうと確信があるが、いまいち決断が付かないでいた。

「伊庭が動かぬとしたら、奴が残した言葉はざれ事じゃ。絵図は他の者が隠し

持っておると考えねばならぬ」

 水野忠邦が己の考えを述べた。

「そのお考えが正しければ、我等は里から仲間を呼び寄せねばなりませぬ。

だが、甲州道中に向かうならば、街道の宿場、難所等で襲撃いたし必ず絵図を

奪ってみせまする」  山彦の彦兵衛が嘯いた。

「三右衛門、伊庭は諏訪に行くか?」 再び、水野忠邦が念を押した。

「大目付の嘉納主水、高島藩江戸家老の嘉納隼人正と伊庭は繋がっておりま

すな、彦兵衛の申すとおりかと推測つかまつります」

 加地三右衛門が思案しつつ、彦兵衛の意見に賛同した。

「よし、二人の考えに賭けてみよう。我家の者を四谷、内藤新宿に向かわせよ、

あくまでも見張りじゃ。奴の姿を見つけたら江戸に戻るよう厳命いたせ、あとは

彦兵衛に任せる」  水野忠邦が決断を下した。

「畏まりました」  加地三右衛門が首肯した。

「さて彦兵衛、これからいかがいたす?」

「ご前のご許可を頂けますなら、信州上田に帰りとうございます」

「そこで何をやる?」  「影の軍団として動ける態勢を整えまする」

「うむっ」  忠邦が腕組みをして考え込んだ。最近、上様の信任が阿部政弘

に傾いている、それが一抹の不安であった。六紋銭が引きあげると緊急事の

対応に打ち手がない、大奥の女共もうるさく改革を批判する。だが、甲州金塊

を手にすれば、幕閣なんぞは己の意のままである。

「ご前、闘牙の三十郎を残して行きましょう、伊庭求馬が甲州道中に入ったら、

お返し願います」  彦兵衛は水野忠邦の心境を見透かしていた。

「そうしてくれるか」  「水野家の家臣としてお傍に置いて下され」

「三右衛門、部屋の用意をいたせ」

「さらば明日にも三十郎を遣わします。拙者はこれにてご無礼つかまつります」

 山彦の彦兵衛が素早く屋根裏から姿を消した。

 
 神田川から一艘の屋形舟が大川に向かっていた。葦簾張りで内部は見えな

い。無風状態で大川に入っても、船の揺れが感じられない凪の晩であった。

 箱膳を前に四人の男が、ひっそりと酒宴を催している。

 艫の座に嘉納主水が、左右に伊庭求馬と嘉納隼人正、舳先に猪の吉が躯を

硬くして座っている。求馬が六紋銭の隠れ家を襲った経緯を語り終わったところ

であった。 「首座にとり痛いことに御座るな」  主水が顔をほころばした。

「左様、邪魔者を取り除くすべを失った訳じゃ」

 嘉納隼人正が愉快そうに杯を干した。

「ご両所、我等は近々に諏訪高島城に向かいます。既にお話いたしたとおり、

六紋銭の抹殺が我等の努め」  求馬が乾いた声で嘉納兄弟に語りかけた。

「危険な旅となりましょう、これも水野忠邦の力を削ぐため。無事な帰還を祈っ

ておりますぞ」  主水が濃い髭跡をみせ案じた。

「主人にもお知らせいたします」  隼人正が軽く頭を下げた。

「ご案じあるなとお伝え下され」  「承知つかまった」

(まるで双子の兄弟だね)  猪の吉が感心しながら、主水と隼人正をみつめた。

「猪の吉、お主にも面倒をかけるの」  「任せておくんなせえ」

「隼人正、猪の吉は飛礫の名人じゃ」  主水が隼人正に告げた。

「兄じゃから聞いておる、凄腕としてな」 「滅相な」 猪の吉が躯をすくめた。

「伊庭殿、お蘭もやはり一緒にござるか?」

「目立った旅にしとうござる。危険は承知、お蘭も納得しております」

「・・・」  主水が何か云おうとして口を閉ざした。

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Last updated  Feb 4, 2008 11:17:19 AM
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