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Feb 5, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「伊庭殿、我が殿よりの伝言にござる、緊急時には飯田藩堀家、高遠藩

内藤家におすがり下され。我が藩から意を通じておきました」

 隼人正が諏訪因幡守の言付けを伝えてくれた。

「忝(かたじけな)い、ご造作をおかけしましたとお伝え願います」

「さて伊庭殿、諏訪家と大目付からの心付けを受取り願いたい」

 主水が懐中から、紫の袱紗を取り出した。  「それは?」

 主水が、はらりと袱紗をひらいた、切餅四個が眼の前に現れた。

「百両にござるか」  「旅にはこれが一番の妙薬じゃ」  

 主水が破顔した。  「忝い、遠慮のう頂戴いたす」

「さて飲みましょう」  嘉納兄弟が、独酌でぐいぐい飲みはじめた。

「お客さま、猪牙舟が突っ込んでめいります」  船頭の緊張した声がした。

「なにっ」  舳先の猪の吉が外に飛び出し、大川を透かし見た。

 船頭の云う通り、左前方から一艘の猪牙船が猛烈な勢いで近づいてくる。

「旦那、左手です」  求馬が佩刀を手に葦簾張りを開けた、舳先に男が蹲っ

ている姿が見えた。  「いかがじゃ」  主水が落ち着いた声で訊ねた。

「この舟を狙っておりますな」  求馬が乾いた声で応じた。

「おいらだー、村松三太夫だ、ようやく借りが返せるぜ」

 風にのって村松三太夫の声が流れてきた。

「猪の吉、相手の船頭は見えるか?」  「へい、良く見えやす」

「飛礫で脅し川に放り込め」  「任しておくんなせえ」

 猪の吉が舳先に仁王立ちとなった。

「船頭、相手の船頭が舟から落ちたら、右に急旋回するのじゃ」

「へい、判りやした」   「浪人、この前はこけにしてくれたな」

 村松三太夫の口汚い声が近づいてくる。

「船頭、よいの」  「へい」  必死の顔で船頭が櫓を操っている。

 猪の吉が飛礫を投じた、風切り音がして猪牙舟の船頭が悲鳴をあげ大川

に水飛沫をあげた。  「莫迦野郎」  村松三太夫の慌てた声がする。

「今じゃ」  求馬の声で屋形舟が右手に急旋回し、大きく揺らぎ一回転した。

その瞬間、猪牙舟の舳先に屋形舟の艫が接触した。

「わっー」  村松三太夫の叫び声があがり水音がした。

「野郎、大川に嵌りやしたぜ、どじな男だ」  猪の吉が船中に戻ってきた。

「奴が、お真紀の方を暗殺した犯人ですかな」

 杯を手にした主水の落ち着いた声がした。

「左様」  求馬が暗い大川を一瞥し席に腰を据えた。 

「捕縛いたすか」

「いや、何れ、それがしが引導をわたしましょう」

 求馬が乾いた相貌を見せつけ、杯に口した。彼には判っていた。水野忠邦の

刺客は全て甲州道中に集まる、そうなれば否応なく斬り捨てることになると。

         (六章)

 季節は九月の半ばを迎えているが、今年は残暑が厳しさを増していた。

 日本橋のお蘭の家に、猪の吉が姿を現した。

「旦那、そろそろ旅支度をしなければなりやせんな」

「そうじゃな、五十五里の行程じゃが、すんなりとは高島藩には着けまいな」

「水野忠邦は苛立っておりやしょうな、聞くところ上様の信任は日ごとに阿部

政弘さまに強まっているようです」

 猪の吉が自慢の地獄耳で幕閣の情報を披露した。

「水野の用人の加地三右衛門は希代の策士じゃ、お主に頼みがある。今夜

でも水野家の様子を探ってはくれまいか」

「ようござんすよ」  猪の吉がふたつ返事で胸を叩いた。

 求馬は、江戸を去るにわたり、水野忠邦の動きが不安であった。上様や

大奥があまりに騒ぐと、水野忠邦が暴発する恐れがあった。

 このまま無事に甲州道中を終える事が出来れば、水野忠邦の失脚は目に

見えている。玄関に音がしてお蘭が顔をみせた、相変わらず粋な江戸前女で

ある。今日は単衣の衣装に、小紋を散らした涼しげな姿であった。

「あら、猪さん、いらっしゃい」   「お邪魔をしておりやす」

「お蘭、一息ついたら猪の吉と一緒に旅支度の品を購ってきて欲しいのじゃ」

「はいな」  「わしは、この形で良いが、合羽と下着なぞ頼みたい。あとは、

猪の吉とそちの分じゃ」   「判りました」

「猪の吉、必要な物を書き出してくれ」

「へい」  旅慣れた猪の吉が矢立を取りだし、ひとつひとつ紙切れに書き出し

ている。お蘭が興味深く傍らから覗き込んでいた。

「こんなに多く必要ですか?」  お蘭が驚きの声をあげた。

「師匠、物見遊山の旅ではござんせんよ」   「判っておりますよ」

 天保七年に創刊された道中記「増補海陸細見記」では四十にあがる旅の

持ち物を紹介している。

 衣類、脇差、三尺手拭、股引、脚絆、手甲、足袋、下帯、手拭、鼻紙、

大小の風呂敷、薬、針と糸、髪結い道具、合羽、菅笠、弁当箱、手行李、

肩に担ぐ柳行李、矢立、煙草入れ、付け木等々、細々と書き印していた。

財布にいたっては、大財布、小財布、巾着などに分けられ紹介している。

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Last updated  Feb 5, 2008 11:49:51 AM
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