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Feb 6, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「猪さん、糒(ほしい)、勝栗、するめ、干し昆布、干し貝柱、こんな物まで持って

ゆくの?」  お蘭が吃驚して訊ねた。

「師匠、万一、敵に追い詰められ山にでも逃げ込んだら、何を食べる積りです

かえ。今度の旅はそれだけの用意が必要なんだ」

 お蘭は、猪の吉の一言で危険な旅と改めて実感した。  「ご免なさい」

「いいって事さ、師匠には杖と紅紐の草鞋もいるね」

「猪の吉、お蘭には合羽のかわりに油紙の道行き衣を買ってやってくれ、出来

るだけ軽装でゆきたい」  求馬が買い物に注文をつけた。

 二人が買い物に出かけた部屋で、求馬が印籠に忍び者の薬を入れていた。

 無傷で帰れる保障はないのだ。

 その晩、猪の吉は水野邸の屋根裏に潜んでいた。そこは忠邦の書院の真上

である、先刻から忠邦は熱心に書見をつづけていた。

 廊下に忍び足が聞こえ、  「ご前」  加地三右衛門の声がした。

「入れ」  襖の音がした。  「村松三太夫が参っておりまする」

「何かあったか?」  水野忠邦が不審そうな声を発した。

「先日、屋形船で伊庭求馬と嘉納主水兄弟が会っていた由にございます」

「なにっ、奴等が集まっておっとたと申すか」   「御意に」

「それで」  「猪牙舟で襲ったそうですが、失敗したと申しております」

 暗闇で猪の吉が、にやりとした。

「いよいよ諏訪高島城に旅立つか?」   「左様に心得まする」

「抜かりはないの」  「早馬を仕立て上田に使者を遣わしました」

「闘牙の三十郎に戻るよう命じよ、くれぐれも失敗は許さぬと申せ」

「畏まりました。ところで村松三太夫はいかが計らいましょう」

 加地三右衛門の問いに水野忠邦が考え込む気配がし、猪の吉が耳をそば

だてた。  「阿部政弘、些か目ざわりとなった。奴に始末を命じよ」

 猪の吉の顔が険しくなった。(いよいよ牙を剥き出したな)

 加地三右衛門が廊下を伝っていった。すかさず屋根裏を移動した。

 村松三太夫の面を見ておきたかった、大川での光景が脳裡に浮かんでいた。

(どじな 殺し屋だぜ) 大川で悲鳴をあげた声が蘇っていた。

「三太夫、ご前の命令じゃ。阿部政弘を始末いたせ」

「おいらの腕は高いが承知かね」  「始末できるか?」  「銭次第」

  猪の吉が天井から盗み見た、目蓋の垂れ下がった御家人風の男と赤鞘の

大刀が視線に映った。あいつが鵜飼流の遣い手か、猪の吉は、お真紀の方を

暗殺した男と聞かされていたが、眼下にみえる男がそれほどの凄腕とは見えな

かった。  「間抜けた面をしているぜ」 と独語し耳をそばだてている。

「そちには十分な手当ては渡してある、今回も五十両じゃな」

 加地三右衛門が、苦々しい声を発した。

「断る」  「なにっー」  三右衛門が沈黙し、殺気に似た気配が漲った。

 猪の吉が顔を引き締めた。

「小十人組の三男坊が何をほざく」  加地三右衛門の怒気を含んだ声がした。

「老中首座と噂される、阿部政弘の命が五十両とは笑わせるぜ」

「貴様っ」  「おいらが斬れるかえ」  突然に声が変わっている。

「判った、切餅四個だ」  「はなっからそう云いな、それなら受けるぜ」

 ふてぶてしい声が途絶えたと同時に、天板を突き破る猛烈な突きが猪の吉の

足元を襲った。それも猪の吉の動きを読んだように正確に、右、左と刃が襲い

かかってくる。危なく猪の吉が梁に飛びのった。

「やい鼠、そこに居るか」  猪の吉が梁の上で気配を絶った。

「逃げたようだ、これでも暗殺をやるかえ」  加地三右衛門が肯いたようだ。

「承知」  凄まじい殺気を噴き上げ、村松三太夫の足音が廊下に消えた。

 流石の猪の吉も脇の下から汗が滴った。

「伊庭の旦那なら、奴の命はねえが、おいらには荷が重いぜ」

 四半刻(三十分)ほど、猪の吉は梁の上で気配を絶っていた。

 ようやく、加地三右衛門も諦めて部屋を去った。

 猪の吉が水野邸を脱出したのは、半刻ほど経ってからであった。彼は盗人被

りをとり、懐中にしまい駿河台へと足を向けた。こんな事で旅立ちが遅れては申

し訳ない、今夜の一件は嘉納主水の旦那に頼もうと思案していた。

「ご免なすって」  猪の吉が嘉納邸の書院の外から、低く声をかけた。

「猪の吉か?」  野太い声がした。  

「へい」  主水が格子戸を開けようとした。

「旦那、そのままで聞いておくんなせえ」  直ぐに主水が察したようだ。

「何事じゃ?」  猪の吉が、水野邸の出来事を告げ、喋りながらも辺りを窺が

っている。  「判った。阿部さまには、わしから伝えおくから安心いたせ」

「有難う存じます、それではあっしはご無礼いたしやす」

 ふっと気配が消え去った。書院で主水が憤りど顔を染めていた。

「殺し屋の村松三太夫が、小十人組の三男坊であったとはな、早速、明日にでも

引っくくってやる」

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Last updated  Feb 6, 2008 11:04:24 AM
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