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Feb 8, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 内藤新宿と言うば、江戸四宿のひとつで町の賑わいは、有名であった。

遊女を置いた旅籠の他に、曖昧宿(あいまいやど)にも女を置いた町であった。

 宿場町の宿命で至るところに馬糞が転がっている、風が吹くと町中が馬糞

で黄色に染め抜かれる事もままあった。

 甲州道中は江戸から、甲斐、諏訪まで続く幕府直轄の街道である。

 道中の宿は人足二十五人、馬二十五頭の供出を義務付けられていたが、

街道の宿は貧しく小さな村ばかりで、単独での宿場の勤めが無理で、

隣りあった村々が交替で宿場の仕事をする、助郷制度が定められていた。

 下高井戸と上高井戸がそうであった。

 幕府は西国の脅威に対抗するために、甲斐を天領とし、八王子の千人同心

や甲符勤番を設けた。更に内藤新宿裏に根来、甲賀、伊賀二十五騎の鉄砲衆

である、百人組の組屋敷をここに設置した。

 彼等は幕府の下級武士で貧乏侍の代名詞と言われた。

「師匠、ここは上町、中町、下町に分かれておりやす。中町には有名な太宗寺が

ありやす」  「へえー、閻魔堂の奪衣婆(だついば)の像は有名ですよね」

「閻魔大王につかえ、三途の川を渡る死者から、衣服をはぎ取り罪の軽重を計

る婆が奪衣婆と云われておりやすね」

 猪の吉が、薀蓄(うんちく)を傾けお蘭と喋りあっている。

「猪の吉、団子屋で休息いたす」  求馬が前方に顎をしゃくった。

「へい」  猪の吉が一軒の団子屋に駆け込んだ。

「お蘭、ここの団子は有名なのじゃ」  求馬はお蘭の足を心配したのだ。

「旦那も食べられますんで」  「わしは遠慮いたす」

 三人が団子屋に姿を消すと、眼の鋭い町人が店に足を入れた。

 三人は店の奥に腰を下ろし、お蘭がはしゃいでいる。彼女の前に名物の

団子が皿に盛られている。  「美味しいそう」 早速、手を伸ばしている。

 求馬と猪の吉が後ろ姿をみせ、茶を啜っている。

 求馬の双眸が鋭く輝いた、猪の吉が求馬の横顔を見つめ湯呑みを置いた。

店先に座った町人が、団子を頬張りながら伏目で三人の様子を探っている。

「済まねえが厠を貸してくんねえ」 猪の吉が店子の案内で奥に消えた。

 町人が慌てて立ち上がり、銭を置いて店から立ち去った。

「お蘭、足は大事ないか?」  求馬が労わりの言葉をかけた。

「旦那、あたしの昔の稼業は承知でしょ、此れくらいで音をあげてはお蘭の名

が泣きますよ」  澄まし顔で団子を口にしている。

「猪さんは?」  「厠だ、すぐに戻る」 求馬が音をたてて茶を啜った。

 猪の吉は厠から裏口に抜け、小路の影に身を隠していた。

 先刻の町人が足早に近づいてきた。

「おめえさん、何者だえ」 猪の吉が鋭い口調で訊ねた。ぎよつとした態度を

見せた男が、いきなり匕首を取り出し、猪の吉の躯に躯をぶち当て鋭い突きを

浴びせた。猪の吉が身をそらし相手の手首を握った。

「素人じやねえな、水野の手の者かえ」  「うるせえ命は貰うぜ」

「手加減はしねえ」  猪の吉が、相手の腕を捻りあげ、逆に相手の横腹を

突き刺した。  「ぐっ」苦悶の声をあげ町人が小路に転がった。

「悪く思うなよ」一声のこし猪の吉が団子屋の厠に戻り、手水鉢の水で手を洗い

求馬の横に座った。微かに血の臭いが求馬の鼻腔に漂った。

「お蘭、そろそろ行くぞ」 「はいな」  満足したお蘭が菅笠を被った。

「ここに置くよ」小銭を皿の横に置き、猪の吉が真っ先に外に出ていった。

 求馬の痩身が、すいと猪の吉の横に並んだ。

「六紋銭じゃあございやせんが、素人とも思われませんな」

「そうか、仲間はどうじゃ」  「一人と思いやす」

「なにさ、大の男が二人でこそこそと」  お蘭が不満声をあげた。

「折角の美人が台無しですぜ」  猪の吉も負けずと受け流した。

「今夜の泊まりじやが、布田五宿のひとつに泊まるぞ」

 求馬が二人に声をかけ、内藤新宿の大通りをうっそりと行く。

「本当に馬糞ばかりだね」  お蘭が器用に避けながらぼやいている。

「師匠、裾さばきに色気があるね」  猪の鉢が、そんなお蘭を揶揄った。

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Last updated  Feb 8, 2008 10:29:21 PM
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