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Feb 26, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 三人は内藤新宿を一歩踏み出した、そこからは荒涼とした武蔵野の原野であ

る。その原野に一本の街道が広がっている。その街道は内藤新宿から甲府に

至り、信濃の下諏訪で中仙道と合流する江戸時代の五街道のひとつで甲斐の

国を東西に貫く甲州道中である。

 甲州道中は他の街道と異なり、参勤交代の大名の通行が少なく、伊那の

飯田藩、高遠藩、諏訪藩の三家のみが、この街道を使っていた。

 もともと初宿は日本橋から高井戸であったが、四里余りの距離があり一宿と

しては遠すぎるという事で元禄十一年に初宿を内藤新宿とした経緯があった。

 これから内藤新宿から二里の下高井戸、上高井戸を経て、布田(ふだ)五宿に

至るのだ。ここは国領、下布田、上布田、下石原、上石原の五宿が並びひとつ

の宿場となっていた。

「旦那、もう芒が見られますね」

 お蘭の言うとおり武蔵野には、秋の気配が忍び寄り、至る所に芒の穂が風に

ゆれていた。お蘭が足を止め辺りの景観に見蕩れている。

 陽が沈みかけ、寂寥とした武蔵野の原野が茜色に染まっている。

「猪の吉、今夜は国領泊りじゃな」

 求馬が上高井戸の一里塚を越えたころ、猪の吉に声をかけた。

 お蘭の顔に疲労の色が浮かんでいる。

「そうですな、あっしが先駆けしゃす」

 猪の吉が早足に街道の先に姿を消し去った。

「お蘭、足に肉芽(まめ)など出来ておらぬか?」  「大丈夫です」

「もう少しで旅籠に着く、頑張るのじゃ」

「はいな」  気丈な声で応じ、お蘭が道を急いだ。

 甲州道中に日暮れが訪れようとしていた、真っ赤な太陽が没し薄闇が忍び

寄ってきた。もう暮れ六つ(午後六時)を過ぎた頃と思われる。

「旦那、この先に木賃宿がありやす」  猪の吉が駆け戻って告げた。

「お蘭、その宿で一泊いたす」

 三人は小さな旅籠に着いた。濯ぎ桶の水で足を洗い、猪の吉が二間続きの

部屋を注文し、代金を前払いした。

「裏に風呂がごぜいますだ」  番頭が上客とみて愛想笑いを浮かべた。

 早速、お蘭が手拭を持って風呂場に向かった。

 猪の吉が三人の荷物を部屋の隅に片づけ、求馬は隅の壁に躯をもたせてい

る。ようやく一日が過ぎ宿に着いたと実感される。

「亭主、酒はないか?」  「へい、地酒ならございやす」

「貰おう」  求馬が地酒を頼み、すぐに大徳利と山菜の漬物が運ばれてきた。

 猪の吉が二人の湯呑みに、地酒を注ぎ求馬に手渡した。

「美味いねえ」  猪の吉が感嘆の声をあげた。旅に疲れた躯にしみじみと酒が

染み渡る。  「お客さま、夕餉はいかがなされます?」

 粗末な形の五十年配の旅籠の亭主が、敷居ぎわから訊ねた。

「貰うが、風呂のあとにしてくんな」  猪の吉が応じ亭主が去った。

「ああ、良いお風呂でしたよ。さっぱりしました」

 お蘭が宿の浴衣に着替え手拭を持って戻ってきた、急に部屋が華やいだ。

 化粧を落とした顔色が紅色に染まっている。

 猪の吉が柳行李から麻縄を取り出し、軒下に張った。

「有難う」  お蘭がそこに手拭を掛けた。長旅には麻縄も必需品である。

汚れた下着や足袋などの洗濯物や、こうした濡れた手拭などを干すのに便利

であった。  「師匠、どうです一杯」

 猪の吉が甲斐甲斐しく世話をする。

「美味しいねー」  お蘭が咽喉を鳴らして飲干した。

「旦那、風呂を使ってくだせえ」  「お主も一緒いたせ」

「あっしは後で入りやす」  猪の吉の警戒心を悟り求馬が風呂場に向かった。

 夕餉は粗末な麦飯であったが、鮎の焼き物と味噌汁に漬物が出た、旅の

所為か、お蘭が旺盛な食欲をみせている。

「明日は府中か八王子に宿をとる、恐らく六紋銭が現れような」

 求馬が箸を置き、湯呑みを手にし考えを述べた。

「旦那、襲ってくるとしたら、どの辺りでしょぅな」  猪の吉が眼を光らせた。

「何処で襲われてもおかしくはない、特に小仏峠が危ういと考えておる」

「甲州道中の最初の難所でやんすな」  求馬が無言で肯いた。

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Last updated  Feb 26, 2008 01:55:53 PM
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