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長編時代小説コーナ

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Feb 27, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 お蘭が少しの酒でほんのりと頬を染めている、初の旅路の緊張で疲労がでた

ようだ。目敏く猪の吉が気づき声をかけた。

「師匠、お疲れのようだね。二人に構わず休んでおくんなせえ」

「有難う」  お蘭が隣りの部屋で布団をのべはじめた。

「旦那、猪さん、あたしはお先に休ませて頂きます」

「お蘭、急ぐ旅ではない、ぐっすりと眠ることじゃ」

 求馬が声をかけ、猪の吉がそっと襖を閉じた。

「お客さま、片付けさせて頂きますが、他に御用はございませんか?」

 小女が現れ訊ねた。  「もう二本ほど徳利を頼むぜ」

 猪の吉が酒を追加し、小女の足音が消えるのを待って求馬に向きなおった。

「旦那、あっしの勘ですが笑いはなしですぜ」  「・・・・・」

「この旅籠も六紋銭が見張っておると思いやすが、旦那のお考えはいかがです」

「まずは飲め」  求馬が猪の吉に酒を勧め、 「お主の不安は当たっておろう」

 と乾いた声で応じ、にやりと破顔した。  「旦那は何かご存じで?」

「先刻、厠から不審な男を見た」  「なんですって」

「我等を見張る六紋銭の奴等じゃ。隙を見せれば襲って参ろうな」

「成程」  猪の吉が納得顔をみせ湯呑みを呷った。

「わしはそれを待っておる、襲いくれば始末するまでじゃ」

 求馬の考えは道中の難所で知られる、小仏峠や笹子峠に至る前に六紋銭を

出来るだけ始末する事であった。敵が小人数で出て来ることは願ってもない

好機であった。

「猪の吉、お主は明日から我等から一里ほど先行してくれぬか?」

「物見ですかえ、ようござんすよ」  猪の吉が不敵な笑みをみせた。

 翌日、山菜の入った雑炊を朝餉に食し、三人は七つ(四時)立ちで宿を出た。

 布田五宿は国領、下布田、上布田、下石原、上石原の村落でひとつの宿駅を

担っていた。その中心が上布田で現在の調布市に当たる、この辺りは多摩川で

晒した木綿が有名であった。さらに近くには天平時代に創設された深大寺があ

り、門前には門前蕎麦が出され、人々で賑わっていた。

 街道は武蔵野の鬱蒼と繁った樹木の中を通っている。芒が靡き、まるで大海

原の波浪を見るような光景が続いている。

「それじゃあ、あっしは先駆けいたしやす」  「府中前で落ち合おう」

「へい」  求馬の声に肯き、猪の吉が軽快な足取りで視界から消え去った。

 街道は賑わいをみせ、法被(はっぴ)に褌姿の男等が荷物を満載した車を馬で

引いて行く。

「この辺りに深大寺がある、蕎麦は江戸でも有名じゃが昼時には早いの」

「上布田に深大寺があったのですか?」

 お蘭が菅笠に手を添い物珍しく辺りを見廻している。

 道行く旅人が、お蘭の艶姿とうっそりと歩む浪人の二人旅を物珍しげに眺めて

行く。街道の先に大きく枝を広げた榎(えのき)の大木が眼についた。

 これが一里塚である、旅人はその木陰で休息しては旅を続けたものであった。

 小さな茶店が店開きをし、道端に雲助が褌ひとつの裸姿で駕籠の脇で客を

物色している。

「悪党面の雲助だね」  お蘭が菅笠を伏せて呟いた。

「よっ、色っぽい姐さん、駕籠はどうだい」  口汚く声を掛ける。

求馬はそんな雲助を無視し、茶店に近づいた。

「お蘭、ここで休息しょう」  求馬が店先の腰掛に腰を据え、お蘭も傍らに

腰を下ろした。今日も空は真っ青に晴れ渡っている。

「婆さん、茶をくれ」  注文をした求馬が一文字笠を脱ぎ風を入れた。

 途端に雲助の顔色が変わった。乾いた相貌に虚無感を浮かべた求馬の

相貌は、命知らずの彼等だけに判る、何かを感じさせるようだ。

 二人は熱い茶を喫し周囲を見廻した、汗が茶の熱さで心地よく引いてゆく。

「旦那、気持ちの良い日ですね」  お蘭が手拭で額の汗を拭っている。

 求馬が湯呑みを置いた。  「お蘭、騒ぎが起こっても動いてはならぬ」

 と声を掛け痩身を立ち上げ、冷や酒を呷っている二人連れの浪人の席に近づ

いた。「お主達、そのような形をしても、わしの眼からは逃れられぬ」

 と、乾いた口調を掛けた。  

「なにっー」  二人が敏捷に立ち上がり後方に退いた。

「水野忠邦の飼い犬の六紋銭と見たが」  低く呟き乾いた双眸を二人に浴

びせた。二人が左右に分れ身を低めた体勢で身構えた。

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Last updated  Feb 27, 2008 10:50:59 AM
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