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Feb 28, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「喧嘩だー」  人々が争って逃げ散り、遠巻きとして眺めている。

 お蘭が呆然として求馬の姿を食いいるょうに見つめている。

 街道に殺気が漲り、二人の六紋銭が抜刀した。

 陽光に映えた大刀が陽を浴びて青黒く輝いている。

「斬る」  求馬が鋭い声を発し、愛刀の村正を素早く抜き合わせ左下段に

構えた。刃渡り二尺四寸(七十三センチ)の互(ぐ)の目乱れ刃紋が陽を受けて

真っ青に変化した。二人がじりっと接近をはじめた。

 見つめるお蘭が息を飲み込んだ、二人が左右から同時に仕掛けた。

 キラッと輝いた大刀が求馬の痩身を両断したかのように見え、お蘭が目を

瞑った。村正が凄まじい勢いで跳ね上がり、左手の六紋銭の右脇腹から左首を

薙ぎあげ、弧を描き右手の六紋銭の頭蓋に襲いかかった。

 辛うじて躱した六紋銭が体勢を立て直そうした瞬間、再び村正が頭上に落石

の如く振り下ろされ、頭蓋を両断された。それは紙一重の差であった。

 真昼の街道に血飛沫が吹き上がり、路上にふたつの死骸が転がっている。

 懐紙が青空にばっと散った、求馬が大刀を納め死骸に近寄り懐中から二枚の

六紋銭を取り出した。

「婆さん、死骸はこのままにしておくのじゃ、仲間が現れ始末しょう。そこの雲助」 

「へい」  褌姿の雲助が恐る恐る近づいてきた。

「筵でもかけてくれまえか」 足元に一朱金を投げ出し茶店の婆さんと雲助に声

を残し、「行くぞ」と、お蘭を促し黒羽二重の裾を靡かせ、うっそりと立ち去った。

 お蘭が慌てて後を追った。

「強えい」 人々が白昼夢を見るように呆然と見送っていた。

 お蘭は今の闘いの場を見せられ、血の気の失せた顔で求馬の後姿を見つめ

て従っている。今頃になって膝が震えてきた。

 旦那はこのような修羅の世界を歩まれてきたのだ、それが実感となって先刻

の決闘の様子が蘇ってくる。初めて求馬の人を斬る場面を見たのだ。

 凄腕とは聞いていたが、あのような腕前とは思いもしなかった。

「今のような荒事は諏訪に着くまでに何度とあろう、それでも付いて参るか?」

 求馬が前方を見つめたまま乾いた声で訊ねた。 お蘭は答えに窮した。

「酷いものを見せたと後悔しておる、あのような事で心を悩ますなら江戸に帰れ」

「そんなひどい言い方はないでしょ、あたしだって元隠密の手先の女です。でも」

「でも、何じゃ」  「でも、ご一緒に参ります」

 お蘭の顔に覚悟の色が浮かんだ、これも公儀のお勤めと考えなおしたのだ。

(あたしだって江戸の鉄火女の端くれ、惚れた旦那とならば地獄まで一緒)

 そう考えた。 「狼狽えてご免なさいな」

「二度とは云わぬ、付いて参るのだな」  

「はいな」 ようやく日頃のお蘭に戻っていた。

 既に太陽が中天に輝きだし、二人は黙々と街道を進んでいた。

「お蘭、景色の良い場所で中食しょう、おっつけ猪の吉も現れよう」

 街道には松、杉、柏、榎、楓、柳などの樹木が植えられている。その枝下を

通り、小さな地蔵の前で休息した。宿で握ってもらった麦飯のお握りを食べ、

竹筒の水で咽喉を潤した。  「美味しい」  お蘭が満足の声をあげた。

 江戸幕府は街道整備として一里塚を設け、並木保護策を取っていた。

 これは街道を利用する旅人の防厚、防寒、防風などから考えられた施策で

あった。 「旦那、色んな木が並木に使われているんですね、あたしは松が好き」

 お蘭が食後の休息で辺りの景色を愛でている。街道には旅人の姿が見えな

い。時刻柄、何処かで休息しているようだ。

 求馬が煙管にきざみを詰め煙草を燻らし草叢に背を伸ばした。

 お蘭が街道を見つめ、誰も来ないことを知りそっと胸に顔を埋めた。

 その頃、江戸の小十人組の屋敷を先手組の与力に指揮された同心が、秘か

に村松家を包囲していた。これは大目付、嘉納主水の命令で動いた者達であ

った。目的は村松三太夫の捕縛である。

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Last updated  Feb 28, 2008 05:51:25 PM
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