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Feb 29, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 鵜飼流の村松三太夫は、凄腕として幕臣のなかでも知られた存在であった。

 先手組の面々は崩れ落ちた土塀の小路を封鎖し、緊張しつつ村松家突入の

下知を待っていた。そんな事とは露知らず、三太夫は母屋から離れた別棟の

一室で腕枕で庭先を眺めやっていた、庭と言っても畑である。幕臣とは名ばかり

で下級侍は、内職や庭を畑として生活の足しとせねば、食ってゆける時代では

なかった。土塀の外が何となく騒めいて感じられ、目蓋の垂れ下がった眼を光ら

せた三太夫が、赤鞘の愛刀を引き寄せた。

 屋敷には三太夫一人が残っていた、父と兄は西ノ丸警護で城にあがり、次男

と母は親類の家に行って留守にしていた。突然、表玄関が騒然となった。

「村松次郎兵、その方の三男、三太夫の捕縛を命じられた。温和しく差し出せ」

 次郎兵とは三太夫の父の名である。

「留守のようじゃ、屋敷内を捜せ。手向かうならば斬って捨てよ」

 指揮者の与力の声が離れまで聞こえ、三太夫が隠した金子を懐中に納め声を

張り上げた。  「おいらはここじゃ」

「別棟じゃ」  声と供に大刀を抜き連ねた先手組の同心が、足音を乱し駆け寄

ってきた。  「おいらに何用かね」  

 三太夫が赤鞘の大刀を腰にぶち込み、先手組の面々を見据えた。

「わしは先手組与力の青山兵庫じゃ。そちが村松三太夫か?」

「ふん」  鼻先で笑いとばした三太夫が庭先に躍り出た。

「たかだか二百石の小役人が何をほざく」

 三太夫の垂れ下がった目蓋が見開かれ、妖気のような殺気が湧き上がった。

「上様ご寵愛のお真紀の方さま殺害と、老中阿部政弘さま暗殺の目論は全て

顕かとなった。温和しく縛につけえ」

「喚くな、あの女の女陰(ほと)の具合が忘れられねえぜ」

 三太夫が昂然と嘯いた。  「黙れ、下種め。斬り捨てえ」

 命令と同時に、三名が猛然と斬り込んできた。三太夫の大刀が陽光を裂いて

左右に煌き、攻撃者が血潮を噴き上げ畑に転がり落ちた。ざっと包囲網が

広がった。噂にたがわぬ凄腕を目の当たりにして戦慄が奔りぬけた。

「何を臆する、相手は一人じゃ」  与力の青山兵庫が正眼に構え、じりっと

前進を始めた。それを見た一堂が、一斉に剣先を並べ押し包む態勢となった。

「鵜飼流の太刀筋を見せてやろう」

 頬の傷痕を崩し三太夫が一歩前進した、勇をふるった一人が真っ向から大刀

を振り下ろした。刃風を軽く横に流した三太夫が猛烈な突きをみせた。

 躱せずに胸元をえぐられ血潮を撒き散らした躯を蹴倒し、三太夫の大刀が

旋回し、次ぎの犠牲者の頭上に襲いかかった。ずんと頭蓋を断ち割られ脳漿が

噴きあがった、恐怖で躯が金縛りとなった同心達の中に三太夫が飛び込み、

彼の体躯が縦横に駈け巡った。大刀が三太夫の躯の動きにあわせ光芒となっ

て奔りぬけ、絶叫をあげ五名の犠牲者が血潮の中に横たわっていた。

「これが、おいらの腕だ」 声と同時に三太夫が宙を舞い、土塀に片足を掛け

屋敷の外に降り立ち、そのまま逃走に移った。

「逃すな」  どっと先手組が跡を追ったが、三太夫は追いすがる者を余裕で

斃し、小十人組屋敷を抜け、やがてその姿を没した。

 その日の深更、水野忠邦の屋敷に村松三太夫が現れた、応接は加地三右衛

門である。  「お主の正体が大目付に知れたの、直ぐに江戸を離れよ」

「阿部政弘は、どうする?」  三太夫が垂れ下がった眼で加地を見つめた。

「仕方がない、時期を待つ」   「裏切る事はないだろうな」

 三太夫が眼を光らせた。   「裏切っても何も徳がないわ」

 加地三右衛門がふてぶてしい嗤いを浮かべた。

「暫く江戸を離れる、ほとぼりを冷まし阿部政弘を始末する」

 加地三右衛門が、三太夫の言葉で目蓋を瞬かせた。

「お主は諏訪に行け」  「諏訪?」  三太夫が不審そうな顔をした。

「大川で襲撃に失敗した男が諏訪に向かっておる」  「何者だ?」

「正体は明かされぬ、奴の名は伊庭求馬と言う」

 そのまま加地三右衛門は黙した。  「その男を始末するのかえ?」

「出来るならばな」  「なにっ」  加地の言葉に三太夫が気色ばんだ。

「お主の腕で始末できるならばじゃ」  「おいらには出来ねえと言うのかえ」

 三太夫の躯から殺気が立ちのぼった、加地三右衛門が沈黙のまま切餅を

一個差し出した。  「これは貰えねえ」

「手付けじゃ。伊庭は諏訪高島藩か諏訪湖に向かう筈じゃ」

「判った、必ず仕留める」  村松三太夫は一声残し屋敷から去った。

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Last updated  Feb 29, 2008 11:33:13 AM
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