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Mar 1, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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         (七章)

「旦那」  街道の横道から猪の吉の声がした。鬱蒼たる樹木の間から朽ち

果てた社殿の跡が見える。

 求馬とお蘭が小路を伝って声が聞こえた社殿に近づいた。

 薄暗い社殿の裏から猪の吉が姿を現した。

「多分、この刻限に着かれると思い待っておりやした」

 こぼれ陽の差し込む社殿の奥で三人は合流した。

「ここまでに四人の胡乱な者を見かけやした」  猪の吉が求馬に語りかけた。

「上石原付近の茶店で二人の六紋銭を斬り捨てて参った」

 求馬がこともなげに告げ、 「それは浪人者ですかえ?」と猪の吉が問い返し

た。求馬が肯くと猪の吉が、満足そうな笑いを浮かべた。

「残りの二人はどうじゃ」

「一人は、あっしが仕留めやしたが、いま一人は気配のみで姿を現しやせん」

「なかなかの手練者じゃな」

「ですから、こんな場所で待っていたんで」  「そうか、ご苦労じゃ」

 お蘭が旅衣の埃を払って二人の会話を聞いている。

「師匠、驚いたでしょうな」  猪の吉が案じ顔をした。

「猪さん、水筒が空で咽喉が渇いて我慢できないよ」

「こちらにお出でなせえ」  猪の吉が社殿の奥の笹薮を掻き分け案内した。

見ると崖の途中から湧き水が流れ落ちている、猪の吉が手ですくって飲干し、

顔を洗っている。求馬は古株に腰を据え、煙草を燻らし周囲を眺め廻している。

 お蘭が密生する笹の葉を手にし、器用に三角に折り畳んだ。丁度、三角形の

杯のようである。それに水をすくい美味しそうに咽喉を鳴らした。

「こいつは驚いたね」  猪の吉が眼を丸くした。

「旦那も、一杯いかがです」  「貰おうか」  「はいな」

 お蘭が笹の杯に、水をすくい求馬に差し出した。

「これは美味い」  求馬が三杯ほどお代わりした。猪の吉が三人の竹筒に水を

満たしながら声をかけた。  「師匠、八王子までは二里半ほどで着きやす」

「心配をしないでおくんなさいよ、あたしは大丈夫だから」

 求馬が頭上の、こぼれ陽を見つめ太陽の位置を確かめている。

「八つ半(午後三時)頃じゃな、道中何事もなければ七つ半(五時)には着けよう」

「さいですな」  猪の吉が肯いた。

 三人は日野の渡し場から、渡船で多摩川を横切った。

「気持ちの良いこと」  お蘭が心地よい川風を浴び、川面に照りかえる陽の

光を眺めている。三人は日野宿を経て甲州道中を西に向かった。

 街道は山岳地帯から武蔵野に移る位置で、山々は落葉樹が鬱蒼と繁り、

陣馬山、高尾山が景観をひときわ引き立てている。

 街道の並木が銀杏並木に変わった、未だ紅葉するには早い時期であるが、

やや黄色に色づいた葉が見事である。

「旦那、この銀杏並木が紅葉すると綺麗でしょぅね」

 お蘭がうっとりとした顔で銀杏並木の下を歩んでいる。ここまで来ると八王子

は、眼と鼻の先である。辺りがうっすらと影ってきた。

 八王子は横山、八日町などの宿場が次々と店開きをし、八王子横山十五宿と

云われ、五十軒もの旅籠が軒を連ねていた。

 街道から見える八王子は、すでに灯が点されきらきらと輝き、いかにも江戸の

要衝に相応しい佇まいを呈している。

 家康が太閤秀吉により、関東八州を与えられた時期に、江戸の西の要として

八王子に武田家の遺臣をこの地に配した。その人数が千人に及んだことから

千人同心と呼ばれ、八王子の西側に屋敷を与えられた。

 彼らは半農半士の屯田兵としての役割を担った、これにより東を宿場とし

新規の旅籠を加え、五十軒もの旅篭町として栄えていたのだ。

 三人は甲州道中を下り、八王子の入口の常夜灯の横を通りぬけた。

 富士講の信者と思われる旅人が、杖を握り町の東に向かっている。

 彼等は小仏峠を越え富士山に向かう信者達であった。

 旅籠町に入ると街道には、男衆(おとこし)や女衆(おんなし)があふれ、盛んに

客引きをしている。三人は本陣の近くの旅籠に草鞋を脱いだ。

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Last updated  Mar 1, 2008 12:06:57 PM
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