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Mar 8, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「旦那、お怪我は?」  廃屋から転がるようにお蘭が駆けよってきた。

「大事ない」  求馬の言葉を聞き、お蘭が胸の中に飛び込んだ。

「心配をかけた、そろそろ夜も明けよう、猪の吉を待つといたそう」

 白々と辺りが白みかけ、杉木立の間に湯気があがっている。まるで靄である。

「お蘭、わしの行李に瓢がある」

「はいな」  お蘭が柳行李から、瓢を取り出し手渡した。

 求馬が息もつかずに飲み干し、 「美味い」 と感嘆の声をあげた。

 あれほどの壮絶な闘いをしたというに、些かの乱れもみせず乾いた双眸で

部屋の外を見つめている。

 お蘭が竹筒の水で手拭を濡らし、求馬の額から頬に浴びた返り血を拭った。

「済まぬ、そろそろ出立の用意でもするか」

 求馬が言葉みじかく呟き、隅から二人の柳行李を引き出した。

 お蘭が、濡れた長合羽や袴を畳み麻縄で縛り、手甲や脚絆と一緒に油紙に

包み行李に仕舞い、新しい手甲と脚絆を身につけている。

「道行き衣は大丈夫か?」  「はいな、だいぶ乾きましたよ」

 求馬が腕枕で横になった。  「お腹は大丈夫ですか?」

「わしには酒がある」  「驚いた旦那」  お蘭がびっくりしている。

「わしは隠密の修行で三日や四日は何も口にしなくても大事ない躯になった。

そちが心配する事はない」  お蘭に説明し屋外に鋭い視線を向けた。

[旦那っー、・・・・・師匠ー」  遠くで猪の吉の声がした。

 求馬が鋭く指笛を鳴らした、足音とが聞こえ直ぐに猪の吉が姿を見せた。

「猪の吉、わざわざ済まぬ」  「旦那、ここで奴等とやりやしたか?」

 猪の吉が廃屋の外に顎をしゃくって尋ねた。

「明け方に襲って参った」  求馬が乾いた口調で答えている。

「師匠が一緒で心配しやしたよ」  猪の吉が屋外に出て改めて死骸を見つめ

ている。  「悪うござんしたね、あたしが一緒で」  お蘭がすねている。

「あの大雨で師匠の躯がもつかと心配したんで」

 その言葉で、お蘭がしゅんとなった。  「ご免なさいね、猪さん」

「いいてことよ」  「猪の吉、お主は小仏宿で泊まったのか?」

「へい、小汚い木賃宿で一夜を過ごしやした。旦那がついておられるんで安心

とは思いやしたが、やはり心配で眠れやしませんでしたよ」

「気遣いさせて済まぬ、ここに六紋銭が襲ってきたことは、奴等は我等の

動きを察しておる証拠じゃな」  求馬がさりげない口調で猪の吉を見つめた。

「旦那、小仏宿への標識が動かされておりやしたぜ」

「そうか、わしらをこの場所におびき寄せるためじゃな」

 二人の会話を小耳に、お蘭が黙々と荷物をまとめ旅支度を整えている。

「取りあいづ、お主の泊まった旅籠に戻ろう」

「ここからなら、一里もありやせんよ」

 猪の吉が先頭にたって熊笹を掻き分け、泥濘るんだ小路を進むと小さな

集落に着いた。  「ここが小仏宿ですか」  お蘭が物珍しく眺めている。

「こんな旅籠に泊まる旅人なんてめったにおりやせんよ」

 猪の吉が茅葺屋根の小さな木賃宿の表戸を開け、三和土(みたき)に入った。

「あれ、旦那、忘れ物でもござったか?」  旅籠の老婆が驚いている。

「そうじゃねえよ、婆さん、お二人に何か暖かい物を差し上げてくんな」

 三人は濯ぎ水で足を洗い、小部屋に通された。

 早速、お蘭が厠に向かった。

 囲炉裏に鍋が吊るされ、美味しそうな匂いが漂っている。部屋は煤で黒光り

している。  「雑炊だが、口に合うかね」 老婆が気の毒そうな顔をした。

「いいよ、雑炊を二人分と冷酒を頼まあ」

「年代物だね」  お蘭が化粧を治して現れた。先刻の青白い顔が桜色に

変わっている。  「こんな時でも化粧ですかえ」  猪の吉が揶揄った。

「女のたしなみですよ」  お蘭がべったりと囲炉裏ばたに腰をおろした。

 老婆が漬物と冷酒を置いて裏の勝手口へと向かった。

 猪の吉が三杯の湯呑みに、酒を注ぎ分け求馬とお蘭に勧めた。

「有難う」 お蘭が美味しそうに一口啜り、求馬が半分ほど一気に飲干した。

「猪の吉、今日はここで一泊いたす。小仏峠も昨夜の雨で泥濘るんでおろう、

女の足では無理じゃな」

「そうですな、奴等が襲ってくると知って出かける馬鹿はおりやせんね」

 すかさず、猪の吉が賛成した。  「済みません、あたしの為に」

 お蘭が、済まなそうに謝っている。

「師匠の所為ではありやせんよ」  猪の吉が慰めている。

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Last updated  Mar 8, 2008 04:05:26 PM
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