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Mar 11, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 かすかな足音がする、 「戻ってきたようだ」  求馬がお蘭に告げた。

「遅くなりやした」  猪の吉が顔を見せたが疲労の色が浮いている。

「どうであった見つかったか?」

「ようやく見つけやしたが、増水が思ったより激しゅうござんす。船頭も首を

ひねっておりやした」  猪の吉が三和土で汗を拭い首尾を告げた。

「そうか、ご苦労であった。裏に露天風呂があるそうじゃ、汗を流して参れ」

「そいつは嬉しいや」  猪の吉が手拭を下げ裏手に向かった。

「お蘭、そちは泳げるか?」  求馬がさり気なく訊いた。

「泳げますとも、こうみえても大川育ちです。猪さんはどうでしょうね」

 お蘭が自信を込め、猪の吉を案じている。

 その晩は囲炉裏を囲んで山菜うどんの夕餉を楽しんだ。

「何もないが、川の幸をご馳走しょぅかの」

 老婆がすまなそうな顔つきで竹篭をみせた。

「お婆さん、これは蟹でしょ」  「そうじゃ、身がつまり美味しい筈じゃ」

 篭の中には爪の先に黒い藻のようなものが付いている蟹がいる。

「これが雄蟹じゃ」  老婆が器用に甲羅をはがし勧めた。

「美味しい」  真っ先にお蘭が感激の声をあげた。

 求馬と猪の吉が、早速、甲羅酒を楽しんでいる。

「こんな山奥で甲羅酒なんぞ乙でやすな」  猪の吉が満足そうな様子である。

「猪の吉、明日の旅立ちじゃが、小原まで船で行こう」

「へい、少しは危険ですがあっしも賛成です」

 二人が酒を飲みながら明日の旅立ちの相談をしている。

 夕餉が済み、三人は囲炉裏を囲み漬物を肴に酒を飲んでいる。珍しく猪の吉

が顔を赤らめている。 (疲れておるな) 求馬が胸中で呟いた。

「あっしは、これで失礼いたしやす。少し眠くなりやした」

 猪の吉が早々と部屋に引き上げたが、求馬は顔色も変えずに飲み続けてい

る。傍らでお蘭がうっとりとした眼差しで、求馬の横顔に見蕩れていた。

「お蘭、明日は早発ちじゃ」  ようやく求馬が湯呑みを伏せた。

 明り取りの窓から満月が見える。  「明日は上天気ですね」

 お蘭の言葉に肯き、求馬が手拭いを手に立ち上がった。

「湯を浴びてくる」  痩身を立ち上げ囲炉裏端から露天風呂に向かった。

 お蘭の眼が輝きを増した。(あたしもご一緒しよっと)考えるや素早く部屋に

もどり、手拭をもつて露天風呂に向かった。

 宿の裏手は鬱蒼とした樹木に覆われ、枝が頭上を覆い隠している。

 巨岩石が重なり、その間が露天風呂となっている。昨夜の大雨が嘘のように、

満月が皓々と輝き、月光に照らされ闇の中に浪人髷が影絵のように、お蘭の

視線に映った。求馬が岩に躯をもたせ湯に浸っている。

 胸の高鳴りを抑え、「失礼しますよ」  お蘭が下半身を覆い恥ずかしそうに

湯に入った。肩口まで湯に浸かり、お蘭が、おずおずと求馬に近づいた。

「お蘭、そばに参れ」  「はいな」  小声で答え、お蘭が近づいた。

「お背中を流しましようか?」  「無用にいたせ」

 乾いた声で答え、求馬の腕が伸び軽々と膝の上に抱えあげられた。

「あれ、旦那、こんな場所で・・・・」  あとは言葉にならなかった。

 首筋に熱い唇が触れ、両の乳房を揉まれ、お蘭がため息を洩らした。

 股間に脈打つものが触れた、(恥ずかしい)と感じた時、お蘭は求馬の命を

受け入れていた。湯音が響き直ぐに歓喜の渦に襲われ、お蘭は果てた。

          (八章)

 朝の七つ(午前四時)に三人は寝床から起き旅支度をはじめた。

「早発ちかね」  老婆が驚いて訊ねた。

「世話になったね、朝餉の用意を頼むぜ。それに握飯もね」

 猪の吉が一分金(百文)を握らせた。  「こがいな大金は貰えねえ」

「いいから取っておきなって」  猪の吉が無理やり握らせた。

 三人は老婆に見送られ、猪の吉の案内で山に踏み込んだ。木々の葉が湿り

気をおび、名も知らぬ小鳥のさえずりが心地よく聞こえる。

 三人は獣道のような小路を辿り先を急いだ。

 明の五つ(八時)頃が干潮となると船頭が語ったと云うが、こんな山奥の川でも

満干潮があることじたいが不思議に思える。

 樹木の間に靄が流れ、頭上を覆う枝葉の間から木漏れ陽が洩れている。

 三人は無言で足場の悪い小道を進んでいる、滔々と流れる相模川の水音が

響いてきた。

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Last updated  Mar 11, 2008 11:16:48 AM
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