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Mar 12, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 求馬がふいに歩みを止めた。  「旦那、どうか致しやしたか?」

「いや、何でもない」  答えつつ求馬の五感に人の気配が感じられる。

「もう少しで着きやす。あの杉の大木の陰に小屋がありやす、音吉という船頭で

すがね」  「信用できるか?」 求馬が乾いた声で訊ねた。

「なかなかの食わせ者ですが、銭に弱いところが付け目にございやす」

 猪の吉がにやりとした。  「あっしが話しをつけてめいりやす」

 猪の吉が潅木の中に姿を消した、それを確認し求馬がお蘭に耳打ちした。

「はいな」  お蘭が茂みに身を潜めた。

 求馬の痩身が樹木の間を疾走しお蘭の視野から消え去った。

 猪の吉が熊笹を掻き分け葦の繁った河原に姿を現した。

 相模川が濁流となって白い波をあげて牙を剥いている。少し平坦となった

河原に古びた川舟が一艘引き上げられている。

「音吉さん、おいらだ」  猪の吉が杉の木陰の朽ち果てた小屋に声をかけた。

「町人、待っていた」  錏頭巾の男が三人小屋から姿を現した。

「なんだ仲間か」  猪の吉は平然と言葉を返した。道中姿の猪の吉の顔は

菅笠に隠れて相手には見えない。

「我等を知っておるのか?」  頭分らしい男がくぐもった声をあげた。

「おいらは江戸の隠れ忍びだ、いわば仲間だぜ」

「なにっ」  三人の六紋銭が不審な声をあげ散開した。

「慌てるな、証拠はある」  猪の吉が懐中から六紋銭を取り出した。

「その六紋銭をこちらに投げな」  再び頭分が忍び声で命じた。

「山犬の藤兵衛だ」  猪の吉が名乗り六紋銭を放った。

 片手で受けた男が確かめ、「なんで川を渡る」 不気味な声で訊ねた。

「極秘の任務だ」  「それを聞くまでは通す訳にはいかぬ」

「彦兵衛お頭の命令を無視するのかえ」 猪の吉が声を強めた。

「わし等の一存では決めかねる」  三人が集まり油断なく猪の吉を見つめ

小声で相談している。

「山犬の藤兵衛、笠をとって顔を見せな」  再び中央の男が命令した。

「我等の鑑札は六紋銭と決められておる」  猪の吉が不敵に言い放った。

「仲間であろうと誰も通すなと命を受けておる、二度とは云わぬ顔を見せな」

(畜生め、面倒だがここで引導を渡すか) 猪の吉が菅笠を脱いだ。

「われが山犬の藤兵衛か」  「面倒な言い訳は飽きあきしたぜ」

 猪の吉が啖呵をきって身構えた。

「矢張り、伊庭の仲間か」 声と同時に中央の男が身を躍らせ、凄まじい斬撃

を送りつけてきた。素早く躯をひらい躱した、猪の吉の左肩を刃風が掠めた。

「命は貰ったぜ」  猪の吉の声と同時に、飛礫が後方に着地した男の延髄を

直撃した。  「げっー」  悲鳴をあげて河原に転がり落ちた。

 残りの二人が顔面を隠すように、大刀を正眼に構え身を低めて接近してきた。

「おいらが飛礫の猪の吉だ」  飛礫を握り猪の吉が威嚇した。

 ざざと草叢を掻き分ける音とともに、白刃が陽光に煌き「むっ」と悲鳴と苦痛の

呻き声と肉を絶つ音が響いた。

「誰じゃ」  残った六紋銭が警戒の声をあげた。

「そちの相手はわしがする」  河原には求馬が痩身を佇ませていた。

「われが、伊庭求馬か」  声を低めじりっと接近を始めた。

「きえっー」  怪鳥のような声をあげ、忍び刀が求馬の胴を水平に薙いだ。

躱しもせず、村正二尺四寸が跳ね上がった。白い光芒が交差し六紋銭の首筋

から、血潮が噴きあがり、どっと河原に斃れ込んだ。

 大刀を納めつつ求馬が乾いた声をかけた。

「猪の吉、お手柄じゃ。六紋銭が奴等の鑑札と判ったの」

「ですが旦那、これだけ警戒されては使うのは厄介ですよ」

 猪の吉がぼやきながら、小屋に足を踏み入れた。猿轡をされ全身を縛られた

音吉が、呻き声をあげ猪の吉を見あげている。

「だらしのねえ野郎だぜ」  ぼやきながら縄目を外した。

「助かった」  顔面蒼白となった音吉が身を震わせている。

「情けねえ船頭だ、それで川が渡れるのかえ」

 筋骨隆々とした音吉が、褌姿で小屋から外に出て転がった男等に毒づいた。

「へつ、ざまあねえや」  「死人には威勢がいいな」

 猪の吉の言葉に、「それは言いっこなしで」と卑屈な笑みを浮かべた。

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Last updated  Mar 12, 2008 11:07:19 AM
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