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Mar 13, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「船頭」  「へい」  求馬の痩身を見つめ音吉の顔に恐怖の色が浮かんだ。

 求馬の痩躯から漂う修羅の気配を敏感に嗅ぎとったようだ。

「我等を小原まで運べるか?」  「旦那、この濁流を見て下せえよ」

「運べるかと訊ねておる」  求馬が強い口調で聞いた。

「少し、様子をみなければ何とも言えねえ」

 その間に猪の吉が、お蘭を伴ってきた。

「こりゃ、おったまげた。天女さまのご入来かえ」

 音吉がお蘭の艶姿をみて好色そうな顔つきで呟いた。

「猪さん、矢張り六紋銭が忍んでいたんだね」 

 お蘭が不安そうに辺りを眺め廻した。

「おいらと旦那が始末しやした」 「これで全部かえ」 

「現れたら退治するまでですぜ」   猪の吉が平然と言い放った。

「お蘭、これからはもっと烈しい闘いとなろう、恐れるでない」

「はい」  お蘭が頼もしそうに求馬の痩躯をみつめた。

「旦那、小仏峠を避けやした事で収穫がありやしたね」

 猪の吉は求馬の胸のうちを理解していた、小仏峠で六紋銭の襲撃を受けたら

お蘭が足手まといとなったろう。それ故に相模川を渡ろうとしたのだ。

 ここで三人斃した事は嬉しい誤算である。

「音吉さん、そろそろ刻限だろ。おいら達を小原宿まで運んでくんな、その為に

出向いて来たんだぜ」

 猪の吉が二分金(二枚で一両)を一枚投げた、乾いた音が河原に響いた。

「判りやした、すぐに用意をしますぜ」  音吉が二分金に手を伸ばした。

「待ちなよ、そいつは船を出したら渡すが今はなんねえ」

 猪の吉が巧妙に取引している。  「それで一ヶ月は遊んで暮らせる」

 猪の吉の言葉で音吉が船を引きずり川面に浮かべた。

「わしが舳先に載る、お蘭は中央だ、艫(とも)は猪の吉に任せる」

「任せておくんなせえ、音吉さんやってもらおうか」

「大丈夫ですか?」  濁流の凄さとボロ舟の様子でお蘭の顔色があおい。

「揺れるが動いてはなんねえよ」  音吉が船を濁流に押し出した。

 濁流にのり小船が前後左右と揺れながら、矢のように船足を速めた。

 音吉が鋭く川面を眺め懸命に棹を操っている。

 両岸は急峻な崖がつづき、甲斐、相模の重畳とした山並が連なり、その渓谷

を流れる相模川を小船が濁流に翻弄され流れ下ってゆく。

 お蘭が顔色をなくし舷側を握って眼を瞑ってこらえている。

 流れがいくぶん緩やかになった。  「危ねえ場所は乗り切ったべえ」

「流石は玄人だ」  猪の吉が感心しながら、二分金を差し出した。

「小原宿まではどれくらいかね」

「四半刻ほどで着く筈だよ」  音吉がご機嫌で答えた。

 鬱蒼と樹木の繁った渓谷に沿った街道に、へばりつくような集落が見えてき

た。  「あれが小原宿だ脇本陣もあるよ、もうすぐだ」

 音吉の操る小船が小原宿の船着場に着いた。

「ご苦労」  真っ先に求馬が舳先から船着場に降り立った。

 安心したお蘭がのぼり、猪の吉がつづいた。

「音吉さん、これから引きかえすのかえ」

「うんにゃ、潮目の変わり目を待たねばなんねえ」

 音吉にも笑顔をみせる余裕が生じたようだ。こうした仕事を終えると船頭と

しての生き甲斐を感ずるようだ。

 小原宿は渓谷の切れ目に出来た小さな広場に、数十軒の家が軒を並べ集落

をなしていた、粗末な茅葺き屋根の旅籠に一回り大きな旅籠が目についた。

 あれが小原宿の脇本陣のようだ。  「我等は先に進むぞ」

「川下りで時を稼ぎやしたからね」  求馬の声に猪の吉が応じている。

 三人は黙々と街道を急いだ。小原、与瀬、吉野、関野の四宿が相模の宿駅と

して知られている。いずれも小さな集落で、急峻な崖と相模川に挟まれた渓谷

沿いに宿場があった。ここが相模と甲斐の境目である。

 甲斐に入り、最初の宿場町が上野原宿である。幕府はここに諏訪番所を置い

ていた。ここから鳥沢までは街道は険しい山道に変わる。

 渓谷に沿った街道は谷か深く、とうてい道を作ることが困難であった。

 その為に低い山々の段丘の上を街道として使っていたのだ。

 三人は与瀬宿をぬけ吉野宿を通過した茶店で休息をとった。

「旦那、この調子ならば上野原宿まで足が伸ばせますね」

 猪の吉もご機嫌で麦飯の握飯を頬張っている。お蘭は道行き衣を脱ぎ、

額の汗を拭って遠くに霞む富士山の威容を眺めている。

「旦那、甲斐から見る富士は違いますね」

「駿河からは表富士、甲斐からは裏富士を見ることになる」

 求馬がお蘭の傍らに腰を据え眼を細めた。

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Last updated  Mar 13, 2008 10:44:13 AM
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