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長編時代小説コーナ

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Mar 14, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「旦那、よい物をあげましょうか」  お蘭が悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「うんー」  求馬の顔を見ながら、お蘭が柳行李から瓢を取り出した。

「何時の間に用意いたした」

「あたしも女ですよ、お婆さんに頼み持ってきましたのさ」

「済まぬな」  求馬が口をつけ美味しそうに咽喉をならした。

 目敏く猪の吉が寄ってきた、「あっしには?」

「猪さん、あんたのもあるよ」  「有り難い、恩にきるよ」

 早速、猪の吉も瓢に口をつけた。  「美味いねえー」

 心地よい風に吹かれ、三人は周囲の景観を愛でている。

「ところで旦那、六紋銭の動きが鈍く思われませんか?」  

 猪の吉が酒を飲み下し訊ねた。

「わしも不思議に感じておった、襲ってくる者の腕がお粗末すぎる」

「内藤新宿から、ここまで十数名を倒しましたが、手練者が少のうございやす」

 求馬とおなじく猪の吉も、その事で不審を感じていたようだ。

「まだ三分の一も進んでおらぬ、この先には笹子峠の難所もある。気を緩め

てはならぬ」  「判っておりやす」

「六紋銭の故郷は信州の上田でしたよね、あたしは勝負をかけるのは、信濃に

入ってからと思いますよ」  お蘭が考えながら話の輪に入ってきた。

「師匠にも、そんな思いがしやすか」

「はいな」  お蘭が猪の吉の問いにすまし顔で答えた。

 三人は休息を終え滔々と流れる相模川の、濁流を横目に街道を進んだ。

「あの村ですか」  お蘭が遥か彼方の山並に覆われた集落を指さした。

「あれは関野宿ですぜ、越えると甲斐に入りやす」

 猪の吉が手をかざし答えた。宿場に入り鄙びた茶店で草鞋を履き替え、

足拵えを厳重にして甲斐にむかった。街道がゆるやかな登り道に変わった。

「ここが乙女坂でやすよ」  猪の吉がお蘭に説明している。

「風流な名前ですが、それにしても甲斐は山ぶかい国ですね」

 お蘭が、周囲の様子を眺めながら杖を頼りに急坂を登っている。

「この頂上に諏訪番所がある、そこを過ぎると上野原宿じゃ。もう少し頑張れ」

 求馬が懐中から油紙の包みを取り出し、ゆったりとした歩調で頂上を目指し

た。すぐに厳重に柵を巡らした番所が現れた。

 三人は求馬を先頭にして番役人が詰める番所に向かった。ここでも大目付の

嘉納主水の書状が効いた。

「拙者が番役頭にござる、お女中連れとはお珍しい」

 好色な眼でお蘭の艶姿に見蕩れている。求馬が双眸を細め訊ねた。

「ご尊名をお聞かせ願いたい」  瞬間、番役頭の顔色が変わった。

 大目付御用の三人連れと感じたようだ。

「名乗るほどの者ではござらん、そうそうにお通り下され」  「左様か」

 求馬が軽く低頭し、「二人とも道中手形を仕舞い番所を通れ」と声をかけた。

「待たれえ」  番役頭の声に無言で求馬が踵(きびす)を廻した。

「申し遅れました。上野原宿と野田尻宿の中間に鶴川宿がござるが、先日の

大雨で崖崩れを起こしましてな、通行不能にござる。上野原宿の旅籠は宿泊客

であふれております、念のために申し添えておきます」

「ご親切痛みいります」  求馬が丁重に礼を述べた。

「旅籠のあてでもございますか?」  案外と親切な男である。

「幸い高島藩の書状がござれば、本陣か脇本陣と掛け合う所存にござる」

「左様か、ならば本陣宿のいろは屋と交渉なされ」

 三人は番役人に見送られ番所をあとにした。急坂と下りのきつい街道となって

きた。  「なかなか難儀な道中となりやしたが、師匠は大丈夫ですかね」

 猪の吉が心配そうに求馬に囁いている。

「仕方があるまい、頑張りを期待するだけじゃ」

 求馬がそっけなく答え、うっそりと歩を進めている。既に番所を出て一刻半

ほど経っている。街道には武家の姿が目立ってきた、甲府勤番の幕臣らしい。

 陽がかたむき街道に薄暮が訪れてきた。

「師匠、大丈夫ですかえ」  盛んに猪の吉がお蘭を気遣っている。

「あたしなら大丈夫ですよ」お蘭が遅れずと足を早めた。

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Last updated  Mar 14, 2008 12:05:32 PM
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